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友川カズキ

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生きてるって言ってみろ。
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#楽曲

「情緒は脈拍よりなお確かだ」―友川カズキ『イカを買いに行く』について―

「情緒は脈拍よりなお確かだ」―友川カズキ『イカを買いに行く』について―

 友川カズキの音楽生活五十年を記念して『光るクレヨン』以来八年ぶりのニューアルバム『イカを買いに行く』が五月二十五日にリリースされた。全十二曲で構成された本アルバムには新曲は勿論、過去の作品も新録されて友川の現在形を窺い知れる作品集となっている。

  一 イカを買いに行く

 友川の日常をマジックリアリズム的手法全開で描いた楽曲。以前、配信ライブにて「買い物シリーズその2」と呼称していた。その第

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『復讐バーボン』、もう一杯。

『復讐バーボン』、もう一杯。

2014年にリリースされた友川カズキの『復讐バーボン』は自嘲的な彼としては珍しく「ここ20年で最高傑作」(音楽ナタリー『友川カズキ、新アルバムで初の試み「ここ20年で最高傑作」』と言わしめる程の出来だ。一ファンとしてはリリースするアルバムいずれも素晴らしいマスターピースであるのだが本作は確かに一聴すれば友川自身の本気が隅々までゆき届いた傑作中の傑作と言える。
友川は常に怒りとそして問いを我々に投げ

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「深く闇は横たわり頷くことだけが受けつがれた」友川カズキ最新アルバム『光るクレヨン』について

「深く闇は横たわり頷くことだけが受けつがれた」友川カズキ最新アルバム『光るクレヨン』について

友川カズキの最新アルバムは2016年に発売された『光るクレヨン』である。通算33枚目となる本作はホームページにもある通り正しく「最”深”作」だ。どの楽曲も聞けば聞くほど詩人・友川カズキの源泉に触れる事さへ可能である。
前作『復讐バーボン』において原子力発電所爆発から喚起された国家への怒りが現れていた。何の楽曲(『家出青年』をピークとして)破壊力抜群だ。そして今作はその怒りをさらに煮詰めた静かなる憤

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