《七十二候》水始涸‥みずはじめてかるる‥【特別編/松江水燈路】
『水始涸‥みずはじめてかるる」
10月3日から7日頃
時の過ぎるスピードが早すぎて
年の瀬が近づくにつれ加速しているのでは?
と毎年思うのですが‥
今年もあっという間に10月。
秋分の末候を迎えましたね。
七十二候では水始涸。
田んぼの水を抜き稲刈りを始める時期です。
先日新聞を読んでいると『お米の収穫に汗』という記事に目が止まりました。
米作りを通し、農業への理解を深め食生活の大切さを学ぶという稲刈りの体験イベントが
行われたようです。
この記事を読み、小学生の頃わたしも
学校の行事で米の収穫を手伝いに行ったことがあった事を思い出しました。
鎌で稲を刈り藁で束ね、木にかけた記憶が朧気ながら浮かんできて。
あぁ。もう一度近くで見たいな。触れたいな。
わたしは、海の近くの小さな町に住んでいるのですが、畑は見かけても大きな水田を見かけることはあまりありません。
そこで、隣の市まで車を走らせ
稲架(はさ)に綺麗に掛けられ束ねられた稲を
近くまで行き見させてもらうことに。
2週間程度、天日と風により乾燥させます。
この自然乾燥を稲架掛け(はさかけ)と言い
ます。
ちょうど撮影した日は、秋晴れの日差しが
降り注ぎ黄金色にキラキラと輝き
眩しいほど。
天日で干すことで
アミノ酸と糖の含量が高くなり
稲を下にぶらさげるように干すことで
稲藁に残っている養分がじわじわと稲に落ちていき、旨みと栄養分も増すそうです。
美味しいお米が白米となり
食卓に並ぶまで後少し‥。
ひとつひとつ大切そうに稲架掛けされた
その稲から生産者の方々の気持ちまで伝わってくるようで‥。
その近くで見つけた
仲良しほおずきも可愛くて‥。
幸せな気持ちに
包まれた朝となりました。
そしてその近くには
露草の姿も。
この時期、道端などに咲く露草を
目にする方も多いのではないでしょうか。
小さいながらも
朝露の中、光を浴びて放つ鮮やかな青は
まるで、ここにいるよ。と
教えてくれるかのように。
露草にはなんと185個も別名があるとか。
蛍草。藍花‥帽子花‥など。
万葉集の中では月草として
詠まれた和歌が九首あります。
今日はその中から二首。
【現代語訳】
朝咲いて夕方には消えてしまう露草のように
この身が消えてしまいそうな儚い恋を
しています。
露草(月草)は染まりやすい反面
色が落ちりやすい面もあり
そして、朝咲いて午後にはしぼんでしまう‥
そんなところから
人の心の移ろいやすさに例えられて詠われることが多かったようです。
この身が消えてしまいそうだと
感じてしまうほど不安やさみしさと
戦っていたのかもしれません。
【現代語訳】
いろいろ言う人もいるけれど
露草のような移ろう気持ちなど、どこにもなく
わたしはあなたを一途に想っています。
もし、上の和歌にこんな返信が来たならば
詠み人の心も少し穏やかになったかもしれませんね。
信じよう信じたい‥と
思えたのかもしれません。
どんなに周りの誰かが
なんと言おうとも‥。
でも、恋とはやはり儚いもの。
秋は人をセンチメンタルに‥。
そしてさみしさは
人をとても弱くします。
その特徴から
移り気だと思われてしまいがちな露草も
本当はそれは外側だけで
芯の強いお花かもしれない。
人知れずこんな道端で
どんなに踏まれながらも
たった一日で終わりゆく身と知りながら
蒼く艶やかに咲いているのだから。
朝露に揺らめく青い月草を眺め
遠い遠い万葉集の時代へと心を巡らし
ふとそんな事を浮かべながら。
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今日はここから
特別編になります。
先日わたしの住む鳥取県のお隣
水の都島根県で三年ぶりに行われた
松江水燈路に行ってきました。
国宝松江城内、そして風情ある街並みや武家屋敷など一帯をたくさんの行燈や光のアートが彩り、そこはもう幻想的な世界へ。
流す灯籠と思われる方も多いようですが
飾ってあるのは灯篭ではなく
行燈なので置いてあるのをひとつひとつ
ゆっくり見ながら歩いて楽しむお祭りです。
行橙に描いてある絵は
コンテストの参加者の方々や、地元のアーティストさんたちが描いたもの。
手作り行橙コンテストはプロアマ問わず
どなたでも参加できます。
今年で20回目の松江水燈路
今は鳥取に住んでいますが
島根県松江で産まれたので
想いもひとしお。
城下町に灯された明かり。
来年も‥これからもずっと
灯り続けますように。
秋の夜長に‥
素敵な世界へと導かれました。
皆さまにもその世界を少しでも
お伝えできたらと思い動画を作りました。
お時間ある時、こちらの方もご覧いただけたらと思います。
七十二候、水橙路に使用している写真
はすべて自分で撮影したものとなります。
これまで七十二候に関する記事は
写真ACさんから
お借りしていたりもしましたが
前々回から自分で撮影したものを
使用し制作しています。
今後は表記のない限り
自分で撮影した写真となります。
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