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愛し愛され輝いて生きるガイドブック

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#人生

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」最終話 空気を吸うように愛を吸う

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」最終話 空気を吸うように愛を吸う

空気を吸うように愛を吸う

今、私は肉体を手放し、ひと休みしているの。
これまで生きてきた人生を走馬灯のように振り返り、あなたにお話ししたの。
あなたにお話ししながら、私の魂は色が抜け落ちるように少しずつ薄く軽くなっていく。
魂は思いがたくさん詰まったままだと、重くて上に上がれない。
現世であった様々な思いを手放し軽く、軽やかになり、風船のようにすうっと、極楽浄土に行く準備をしているの。

こうや

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十九話 なんの後悔もない人生

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十九話 なんの後悔もない人生

なんの後悔もない人生

それからも色々ことがあったわ。
六十歳の時、歴史的な大火事が起こった。
四十七歳で亡くなった家光を見送り、家光の長男が四代目の将軍徳川家綱となった時のこと。後に後に江戸三大大火とも言われた明暦の大火だった。
この火事で私の住んでいた竹橋御殿も焼けてしまった。
火の勢いは凄まじかった。真っ赤な火が大きく手を広げ、江戸城や、江戸城の周りにあるたくさんの大名達の屋敷や江戸の町も、

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十六話 すべては光と影の表裏一体

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十六話 すべては光と影の表裏一体

すべては光と影の表裏一体

その後、私は東慶寺をよりよい寺にしたいと考えた。そこで目をつけたのが東慶寺の伽藍だった。東慶寺の伽藍は古びて、腐りかけていたの。伽藍とは、皆が集まり仏の道を説きながら修行する場所。
言わば、東慶寺の「顔」となるメインスペース。
そこが汚く古びていたら、東慶寺のイメージが悪い。
だからこそ加藤明成にも見下され、攻め入る隙を与えてしまったのね。私はこの伽藍を女性の救済の役に

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十五話 愛してくれてありがとう、愛させてくれてありがとう

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十五話 愛してくれてありがとう、愛させてくれてありがとう

愛してくれてありがとう、愛させてくれてありがとう

扉の開いた二十メートル先に先に、弟で現将軍の家光がいた。私はずらりと並ぶ家臣達を観客に見立て、ランウェイでウォーキングするモデルのように優雅に、そして凛として歩いた。家光の前まで進むと座って頭を下げ、いきなり口火を切った。
「家光殿、お尋ねしたいことがあります。
東慶寺は幕府公認の縁切寺で、間違いなかったですね?」

「確かに、東慶寺は幕府公認の

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十四話 神様は後からちゃんと、答えを用意している

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十四話 神様は後からちゃんと、答えを用意している

神様は後からちゃんと、答えを用意している

当時、幕府から縁切りが認められた駆け込み寺は、天秀尼のいる東慶寺と私が豊臣とのご縁を切った満徳寺だけだった。
この時代の離婚制度というのは、きわめて女性に不利な仕組みなの。離縁したくてもできない妻が、夫から逃れこの縁切寺に駆け込む。
縁切寺は妻から離婚請求を聞き妻を保護したのち、寺は夫に、離縁の示談を薦める。
それでうまくいけば離縁が成立するけど、夫がご

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十三話 自分の人生を輝かせる者

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十三話 自分の人生を輝かせる者

自分の人生を輝かせる者

それから何年も私は、自分のできることがわからずにいたの。
その間適当に生きる、とは言い方が悪いけれど三十八歳から四十六歳までの私は暇つぶしのように生きていた。
勝姫のことを心配することもなく、生活に何不自由もなく、傍から見たら「幸せ」と言える状態だったと思うわ。
だけどね「幸せ」とは誰が決めると思う?
周りではないのよ。自分自身よ。
いくら生活が満たされていても、自分自身

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十二話 この世に生まれ、生かされている意味は何?

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十二話 この世に生まれ、生かされている意味は何?

この世に生まれ、生かされている意味は何?

江戸に来て二年後、娘勝姫の結婚が決まった。
十一歳の勝姫はパパの養女という形を取り、池田光政様に嫁いだ。
片親だけど娘をちゃんとお嫁入りさせ、さみしさもあったけれど母親としての責務も果たし、肩の荷を下ろした安心感もあった。
勝姫の嫁入り先はなかなか難しかった。片親と言っても、あの子は二代目将軍の孫で現将軍の姪でもあるから、下手な所には嫁入りさせられない。

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十一話 今この時、やりたいことをやる

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十一話 今この時、やりたいことをやる

今この時、やりたいことをやる

江戸に帰ってきた。
十年ぶりの江戸は、人も町もわいわい活気があってビックリした。
のんびりした播磨や播磨弁に慣れていた勝姫は、人の多さや言葉のちがいに目を真ん丸に見開き、首をあっちこっちに向け興奮していたわ。
その様子がおかしくて抱きしめたいほど可愛くて、クスクス笑ってしまった。勝姫はそんな私におかまいなく、真っ赤な頬で外の景色から目を離さず言った。

「お母さま、

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「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十話 今の自分を超えたい!

「シャイニング・ワイルドフラワー~千だって~」第二十話 今の自分を超えたい!

今の自分を超えたい!

忠刻ダーリンを失った本多家は、跡取りを弟の政朝様が継ぐことに決まった。私は勝姫を連れ、政朝様にお祝いの挨拶に行った。
おめでとうございます、と頭を下げた私に政朝様は恐縮し、笑顔で言った。
「義姉上、いつまでもこの姫路城に留まり下さい」
政朝様も忠刻ダーリンに似て心優しい方なの。
政朝様のすぐ横に座っていた義父上は、最愛の妻熊ママを失いげっそりとやつれていた。そして勝姫を手招

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