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ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の10 #5
聞きたいことはいっぱいあるが、何から聞くか、何をどう聞けばいいか。柔和な笑顔ではあるものの、何となく発する圧というか、これを”貫禄”というのか、聞かれたことには脳の引き出しを引っ張り出せば返答できるが、自分からとなると、引き出しを押さえられているような感覚。
そして漸く出たのが、”おばあちゃんとはどういう関係?”の曖昧文。ざっくりし過ぎだろ、ヲイ!しかも、心の準備もできていないのに、いきなりそ
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~其の1
《現在27歳となった主人公:森北すばるが、前の職場を退職し、次の職場に移るまでに少し時間ができ、ふと、覚えている今のうちに自分に起こったことを記しておこうと思い立つ。
高校は中学とは違う自分で臨みたい、と合格した地域で一番の公立高校に気合を入れて入学。しかし、人に恵まれ拍子抜け。とは言え、学校でも学校以外でも解決すべき出来事は大なり小なり起こり、また、推しのために聖人であろうとする自分と、心に充
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の10
9月とは言えまだ暑く、というのは毎年言ってる感じで、毎日毎日どこかで気象の記録が更新されたというニュースを聞かされている気がする。
時間と共に熱されていく地面からの熱気も相俟って、頭の中では日本周辺の海から湯気が立ち、日本列島ごとサウナ状態となっているイメージが頭を過る。
朝から駅前を行き交う人々も、例に漏れず夏の熱気と湿気を全身で受けているが、それでもそれぞれの目的のためにサウナの中で行動
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の9
「ねえねえ、すばる、西嶋くんのこと好きなんだって~」
「きゃー、ホントに!?」
「だって言ってたもぉん」
誰が?別に好きな男子はいないって言ってないし。無理やり、”いないなら、クラスの男子だったら誰がマシ?”と聞かれ、”マシ”というならと名前をあげただけだったのに・・・
「ねえ、川西くんがさあ、クラスで一番すばるがいいって言ってたよ~。す
ばるはどうなのぉ!?」
「え、別に何もない!たまたまク
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の8
2年生になり、進路が違うので4人のクラスも離れてしまったが、幸い2人ずつ同じクラスとなったので、クラスの中でも適度に周囲を関わりを持ちつつ、部活の一貫のように4人でつるむことも変わらず。
今日は久々4人一緒に学校の門を出て、自分と琴乃は自転車を引きながら喋くりつつ目的地に向かうべくトロトロと歩く。
何を見ても、何を話しても笑いに変わる女子高生というこの時期。一々脚が止まる。
「わお」
「え、
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の7
凍てつく寒さが少しずつ緩んでいくのが分かるぐらいになってきた今日この頃、それでもやはり自転車を走らせると、剥き出しの皮膚に当たる風が突き刺さるように痛いことはまだまだ変わらない。
塾もなく、真っすぐ帰れる時はサッサと帰って、CUの曲を聞きながら、じわじわと芯から温まりたいと思っているのに、本日はお母さんからの命により、頼まれていた物を買いに寄らないといけない。
なんでもそこのスーパーにたまに
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の6
CUのライブツアーも大詰めで、あとオーラスを含む東京二日間のみ。
ツアーが始まってから、各地のレポをつぶさにあげてくれるものを読み、想像力を駆使してその光景を思い浮かべ、一人勝手に部屋の中でキャーキャーきゅんきゅん。
当然のことながらオッサンが邪魔をしてきたが、そんなことは苦にならず、それよりも何よりも、全てのライブを直接見ることができないことを口惜しく思いながら、一方でレポをあげてくれるフ
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の5
「あ、お父さん!」
「お~、遅刻しよってからに」
「は?よく言うよ。お父さんがいっつも遅刻するから、こっちもそれに合わ
せてワザと遅れて来たんじゃん」
「そうか?」
「そうだよ」
一旦、東北の職場から戻ったお父さんと、駅から直結のデパートの前で待ち合わせ。中央改札から少し行った一番近いデパートの入り口左の壁に、黒のダウンベストにトレーナー、デニム、スニーカーにニット帽を被り、斜め掛けボディバッ
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の4
◆◆◆◆◆『B.U.T-E LIVE TOUR 20○○ ∞ 会員チケット抽選結果のお知らせ』◆◆◆◆◆
「うわ~・・・きったぁ~・・・見るのコワいんだよな~~~~~~コ~ワ
~イ~、どうしよ~、毎回心臓に悪いんだよ~~~~~」
携帯を両手で握り締め、画面を見つめたまま届いたメールを開くことに躊躇。”結果”なワケだから早く見ても遅く見ても一緒であるにも関わらず、この瞬間はいつもこうだ。
勢
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の3
「メイクする時間減った分、ちょっと余裕なハズよねぇ。ご飯はゆっくり食
べたほうがいいのに」
そんなのわかっとるわっ!ああ、ホントに鬱陶しい。社会人になったら、いや、大学合格したら絶対クッキリ二重にするし。
お母さんはいちいち人の顔を見て突っ込む。激しく鬱陶しい。が、言っていることは的を射ているので、言い返す言葉がない。黙ってその時をやり過ごす。
というか、本当は自分だって目の周りにお絵描き
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~其の2
“ピンポーン”
部屋で塾に行く準備をしているとチャイムが鳴った。
今日は特に荷物が届くといったことは聞いていない。回覧板・・・は何時もドアノブに掛かっている。足音を立てないように部屋からキッチンに行き、インターホンのモニタースイッチを入れて顔を確認・・・誰?
基本的にお母さんが不在の時は知らない人の対応はしないように言われているので、応答出来る相手か否かを見極めるまでは音を立てない。
最近
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~其の1
あれは高校に入学後暫く経ち、とにかく学校生活に慣れることや人間関係をどう構築していけばいいのかといったことに必死で、唯一の息抜きが今で言う“推し活”だった頃だった。
朝は時間との戦い。何故にこうも朝という時間の流れは早く、短いんだろうと。
朝早く起きたとて、“早く起きた”という妙な余裕からか、いつも通りに動いているつもりでも、気づいたら時間は過ぎていて、ギリギリに起きたとなれば、意地でも厳守
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の10 #4
「すばる様、中へどうぞ」
思いがけずの浅倉さん!
半分ド緊張、半分”ネタ拾いじゃ”と思いながら、扉がドラマのようにゆ~っくり開き、ドライアイスで施された白い水の煙がもくもくと広がり、そして現れるラスボス!というような光景を想像していたので、そこに柔和な浅倉さんが表れ、漫画で言うところの”コケっ!”という状況。
お手伝いさんと思われる女性が浅倉さんに会釈をして去って行き、浅倉さんから再度”どう
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の10 #3
ん~・・・何かデカそうな家だな~・・・門の向こうが全く見えない。何か・・・帰りたくなってきた(汗)
正直なところ、大きい家に住んでいるであろうとは思っていたが、右を見ても左を見ても、反対側を見ても大きい家。この家だけが大きいのではなく、この辺り一帯が全てこんな感じ。TVでしか見たことがない。何だか場違い。
浅倉さんに導かれるも、緊張で後について行くのがやっとで、門から玄関扉までの様子など全く
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の10 #2
「すばるさん、甘い物はお好きですか?」
「え?は、はい」
「私、緊張してる時は甘い物を食べると少し落ち着くんです。如何ですか?
アレルギーなどはございませんか?」
「あ、アレルギーはございません・・・です」
あああああああああ~、”ございません”に”です”ってバカなの⁉”ございません”で止めるんだよ、バカ。使い慣れてないのがバレバレ~(泣)
信号で止まった時に、浅倉さんが黒い薄い箱を手渡して
ワザワイ転じて山芋ウナギ ~とある女子高生の奇妙な回想録~ 其の10 #1
9月とは言えまだ暑く、毎日毎日どこかで気象の記録が更新されたというニュースを聞かされている気がする。
時間と共に熱されていく地面からの熱気も相俟って、頭の中では日本周辺の海から湯気が立ち、日本列島ごとサウナ状態となっているイメージが頭を過る。
朝から駅前を行き交う人々も、例に漏れず夏の熱気と湿気を全身で受けているが、それでもそれぞれの目的のためにサウナの中で行動をしている。
駅から少し行っ