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空想日記

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あなたの知る私ではない『誰か』から届くメッセージ。日記のようで、どうやら公開して欲しいみたいだったのでここで。ちっぽけな世界のちっぽけな私のここから、私の元に届く誰かからの日記。…
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#詩

月のウサギ

月のウサギ

つきのうさぎはひとりきり
大きなつきにひとりきり

うさぎはいつも泣いていた
ひとりさみしく泣いていた

宇宙をまるごとぜんぶひっくりかえして
めんたま皿にしたっても見つからない
ぼくより不幸なやつは見つからない
ぼくよりひとりは見つからない

ぼくだけがいつもひとりきり
だれもちっともみてくれやしない
だれもちっともきづいてくれやしない
だれかに好きになってほしいのに
だれもいないから叶わない

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夜のカナリア

夜のカナリア

眠れませんから夜更かししましょう?

あたたかいミルクに落としたいのは胡桃兎の涙?それとも渇きの蝶の鱗粉?
どちらも香り高くて身体が温まりますもの、迷ってしまいますね。

ブルーダの歌姫のレコードをかけて、そっと身を寄せ踊りましょう。
手に手を取って、揺蕩うように。
気持ちのいい音楽と、夜の静寂の境目が、溶けてなくなるまで踊るのです。

あなたのくれた赤い花束、一本ずつ手折っていきます。
あさがく

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さかさまのあさ

さかさまのあさ

あさ をさかさまになって みてみる
せかいは わたしが さかさまになるだけで
いともかんたんに ひっくりかえる
あさ さかさま さあ いこうか

__________
あさとよるには さかいめがある
そのさかいめがまざるしゅんかんを
さかさまになってみつめてみる
あいいろのそらと くりいむいろのくも
まじって とけて きえる
にどとみえない さかさまのあさ

__________
いきをのむ めが

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レインボウイ・レインボー

レインボウイ・レインボー

ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。
あ、め。
雨が、降る。
頭の上めがけて小さな雨水たちが私の上を駆け巡る。

ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。

傘は、なくした。
もうずっと前に、

なくした。

母さんが買ってくれた、浅葱色した水玉の傘。
くるくる回して、パラパラと雨、を、弾いた、水玉の傘。

ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。
ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。

とある噂

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セプテンバーブルース

セプテンバーブルース

ループするリズム、時々崩れる。
その瞬間の心地良さ。
変わらない日々、時々訪れる目の覚めるような偶然。

昨日はとても面白かった、今日は乾涸びるほどに退屈で、明日はどこになにがあるのか。

いつもと違うコンビニで買ったアイスカフェラテ、意外と悪くない。意外と。思ってたよりもずっと。

セプテンバーブルース、センチメンタル魂の叫び。誰にも聞いてもらえなくとも、いや、誰にも聞いてもらえないから、誰かの

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貝殻のまほう

貝殻のまほう

貝殻に記憶を閉じ込める秘密の方法。
おばあちゃんが小さい頃に教えてくれた。

必要なもの。
お花、空、貝殻。

貝殻を空で作った染料でそめる。
空の染料はなるべく雲ひとつない晴れの空が好ましい。
上手な人は満点の星空でもいいけれど、初心者は青空がおすすめだ。

貝殻を空で染めたら好きな花をひとつ。
貝殻の上で花占いして。

すき、きらい、すき。

祈りをこめた花びらたちが貝殻の中に溶けていく。

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歩く

歩く

歩く、歩く、歩く。

あてもなく、目的もなく、ただただ前へ進むだけ。
何かがしたい訳でも、逃げ出したい訳でもなんでもないけれど、なんとなく、ただなんとなく、前に進んだ方が良い気がして、だから、理由もなく歩く。

上を向いたりする訳じゃないから、空の鳥にも気づかないし、夕焼けに架かる虹にだって気づけやしない。
下を向いて歩いているから、影を追う自分の足が見えるだけ。
左右に抜き差ししてるだけ。

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深海列車

深海列車

深海列車、ぶくぶく進む。
泡を吐いて、波を作って、底へ底へと進んでいく。

窓の外は真っ暗で、闇以外に何も見えないけれど時折、かすかに光る淡い影が、その行方を僅かばかりに教えてくれる。

ゆらゆらと揺られながら、水圧を避けて真っ直ぐ進む。次の駅はどこだっけか。
そういえばどこで降りたらいいんだっけ。

なんだか途方もない時間揺られている気がするけれど、時折回ってくる車掌が、私の手渡した切符をみてな

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ナイトブルーの夜に溶ける

ナイトブルーの夜に溶ける

セピアネオンを遠巻きに、メタルグレーの夕凪が歌う。
ぐるぐるとぐろ巻いたって、グダグダくだ巻いたってさ、なんにもならんのにね。

ピネアを東の空に浮かべて、あの人のこと思い出す。
悲しみは薄れることなんかなくて、いつだって鮮明に浮かび上がるから困りものだ。ぽっかりと空いた穴は、あの時から変わらずぽっかりしたまんま。
周りに物が増えたせいで隠れてただけで、気づかず足をおろすと奈落の底に堕ちかねない。

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ああ、なんか、いろいろと書き留めておかないと、溢れて消えていっちゃうな。
言葉とか、感情とか、記憶とか。

こぽこぽ湧き出る泉のように、大切なものがそこからどんどん、どんどん溢れてくる。
でもそれを掴んでいることは出来なくて、堰き止めておくことも出来なくて、ただただ泡のように消えてくのを、眺めては途方に暮れるばかりだ。

もうすっかり忘れちゃった諸々大切だったような何かを、どうにかこうにか形として

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潰れた果実

潰れた果実

潰れた果実は何処へ行く。
何処へも行けず、彷徨っている。

ふらりふらふら、うつろう瞳に、月の光は届きゃしない。
真っ赤に焼けた鉄の塊、押し潰された果実はひとり、果汁こぼしてたらたら歩く。
それでも自分を潰そうとする、鉄の塊がすきだから。その気持ちごと抱えて何処か、へたりへたへた歩いて消えた。

潰れた果実は何処へ行く、傷つく果実は何処へ消えたか。

傷口から溢れた果汁が、月の光に照らされて、てら

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眠れない朝

眠れない朝

朝焼けを溶かしたミルクを、ティースプーンでかき混ぜる。
くるりくるくる時計回りに3回半。

朝焼けのいろと、ミルクの白とがちょうどよく混ざり合って香りたつ。
スプーン一杯分の星屑、隠し味に追加して。

憂鬱味のブランデー、センチメンタルになりたいなら入れてみて。
寂寥味のハニーディップ、お好きならば好きなだけ。

くるくるまわる星の下、ゆらゆら揺れる海の中。
目を瞑って香りを楽しむ、昨日か明日か、

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エピローグ

エピローグ

夕焼け、踏切、どこかのサイレン。

世界一綺麗な、世界の終わり。

商店街に人はいない。お肉屋さんのコロッケの匂いも、誰かんちのカレーライスの匂いもしない。

少し焦げた匂いと、鼻につく錆びた鉄のような匂い。

沈みかけの夕陽は、未だ熱を強く放って、焦げ付いてしまいそう。
砂嵐みたいに飛び散った影法師、裸足にひりつく焼けたアスファルト。

世界一、寂しい帰り道。
終わりについて考えてた昨日が懐かし

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モノローグ

モノローグ

らたた、るんたった、るたた、らたた!

ぱたぱた裸足で踊りましょう。
踊りなんて上等なモンじゃないけど踊りましょう。
誰が何と言おうと踊りと言ったら踊りになるの。

らたた、るんたった、るたた、らたた!

泣きたくなるくらい寂しい夜でも
震えてしまうほどひとりの朝でも
おひさまさんさんのぼるから、つきはこんこんひかるから。

届け届けと踊るのです。
なるべくつとめて幸せに、なるべくつとめて大袈裟に

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