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宮田みや
2020年10月21日 02:52
つきのうさぎはひとりきり大きなつきにひとりきりうさぎはいつも泣いていたひとりさみしく泣いていた宇宙をまるごとぜんぶひっくりかえしてめんたま皿にしたっても見つからないぼくより不幸なやつは見つからないぼくよりひとりは見つからないぼくだけがいつもひとりきりだれもちっともみてくれやしないだれもちっともきづいてくれやしないだれかに好きになってほしいのにだれもいないから叶わない
2021年2月8日 05:30
眠れませんから夜更かししましょう?あたたかいミルクに落としたいのは胡桃兎の涙?それとも渇きの蝶の鱗粉?どちらも香り高くて身体が温まりますもの、迷ってしまいますね。ブルーダの歌姫のレコードをかけて、そっと身を寄せ踊りましょう。手に手を取って、揺蕩うように。気持ちのいい音楽と、夜の静寂の境目が、溶けてなくなるまで踊るのです。あなたのくれた赤い花束、一本ずつ手折っていきます。あさがく
2021年2月13日 07:28
あさ をさかさまになって みてみるせかいは わたしが さかさまになるだけでいともかんたんに ひっくりかえるあさ さかさま さあ いこうか__________あさとよるには さかいめがあるそのさかいめがまざるしゅんかんをさかさまになってみつめてみるあいいろのそらと くりいむいろのくもまじって とけて きえるにどとみえない さかさまのあさ__________いきをのむ めが
2021年2月23日 08:07
ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。あ、め。雨が、降る。頭の上めがけて小さな雨水たちが私の上を駆け巡る。ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。傘は、なくした。もうずっと前に、なくした。母さんが買ってくれた、浅葱色した水玉の傘。くるくる回して、パラパラと雨、を、弾いた、水玉の傘。ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。ぽつり、ぽつり、ぴとぴと、ぽっちゃん。とある噂
2021年6月5日 08:23
ループするリズム、時々崩れる。その瞬間の心地良さ。変わらない日々、時々訪れる目の覚めるような偶然。昨日はとても面白かった、今日は乾涸びるほどに退屈で、明日はどこになにがあるのか。いつもと違うコンビニで買ったアイスカフェラテ、意外と悪くない。意外と。思ってたよりもずっと。セプテンバーブルース、センチメンタル魂の叫び。誰にも聞いてもらえなくとも、いや、誰にも聞いてもらえないから、誰かの
2021年6月6日 15:22
貝殻に記憶を閉じ込める秘密の方法。おばあちゃんが小さい頃に教えてくれた。必要なもの。お花、空、貝殻。貝殻を空で作った染料でそめる。空の染料はなるべく雲ひとつない晴れの空が好ましい。上手な人は満点の星空でもいいけれど、初心者は青空がおすすめだ。貝殻を空で染めたら好きな花をひとつ。貝殻の上で花占いして。すき、きらい、すき。祈りをこめた花びらたちが貝殻の中に溶けていく。
2021年6月8日 21:55
歩く、歩く、歩く。あてもなく、目的もなく、ただただ前へ進むだけ。何かがしたい訳でも、逃げ出したい訳でもなんでもないけれど、なんとなく、ただなんとなく、前に進んだ方が良い気がして、だから、理由もなく歩く。上を向いたりする訳じゃないから、空の鳥にも気づかないし、夕焼けに架かる虹にだって気づけやしない。下を向いて歩いているから、影を追う自分の足が見えるだけ。左右に抜き差ししてるだけ。足
2021年7月4日 16:15
深海列車、ぶくぶく進む。泡を吐いて、波を作って、底へ底へと進んでいく。窓の外は真っ暗で、闇以外に何も見えないけれど時折、かすかに光る淡い影が、その行方を僅かばかりに教えてくれる。ゆらゆらと揺られながら、水圧を避けて真っ直ぐ進む。次の駅はどこだっけか。そういえばどこで降りたらいいんだっけ。なんだか途方もない時間揺られている気がするけれど、時折回ってくる車掌が、私の手渡した切符をみてな
2021年7月5日 20:28
セピアネオンを遠巻きに、メタルグレーの夕凪が歌う。ぐるぐるとぐろ巻いたって、グダグダくだ巻いたってさ、なんにもならんのにね。ピネアを東の空に浮かべて、あの人のこと思い出す。悲しみは薄れることなんかなくて、いつだって鮮明に浮かび上がるから困りものだ。ぽっかりと空いた穴は、あの時から変わらずぽっかりしたまんま。周りに物が増えたせいで隠れてただけで、気づかず足をおろすと奈落の底に堕ちかねない。
2021年7月11日 09:36
ああ、なんか、いろいろと書き留めておかないと、溢れて消えていっちゃうな。言葉とか、感情とか、記憶とか。こぽこぽ湧き出る泉のように、大切なものがそこからどんどん、どんどん溢れてくる。でもそれを掴んでいることは出来なくて、堰き止めておくことも出来なくて、ただただ泡のように消えてくのを、眺めては途方に暮れるばかりだ。もうすっかり忘れちゃった諸々大切だったような何かを、どうにかこうにか形として
2021年7月14日 16:40
潰れた果実は何処へ行く。何処へも行けず、彷徨っている。ふらりふらふら、うつろう瞳に、月の光は届きゃしない。真っ赤に焼けた鉄の塊、押し潰された果実はひとり、果汁こぼしてたらたら歩く。それでも自分を潰そうとする、鉄の塊がすきだから。その気持ちごと抱えて何処か、へたりへたへた歩いて消えた。潰れた果実は何処へ行く、傷つく果実は何処へ消えたか。傷口から溢れた果汁が、月の光に照らされて、てら
2021年7月15日 22:20
朝焼けを溶かしたミルクを、ティースプーンでかき混ぜる。くるりくるくる時計回りに3回半。朝焼けのいろと、ミルクの白とがちょうどよく混ざり合って香りたつ。スプーン一杯分の星屑、隠し味に追加して。憂鬱味のブランデー、センチメンタルになりたいなら入れてみて。寂寥味のハニーディップ、お好きならば好きなだけ。くるくるまわる星の下、ゆらゆら揺れる海の中。目を瞑って香りを楽しむ、昨日か明日か、
2021年7月20日 23:03
夕焼け、踏切、どこかのサイレン。世界一綺麗な、世界の終わり。商店街に人はいない。お肉屋さんのコロッケの匂いも、誰かんちのカレーライスの匂いもしない。少し焦げた匂いと、鼻につく錆びた鉄のような匂い。沈みかけの夕陽は、未だ熱を強く放って、焦げ付いてしまいそう。砂嵐みたいに飛び散った影法師、裸足にひりつく焼けたアスファルト。世界一、寂しい帰り道。終わりについて考えてた昨日が懐かし
2021年7月24日 01:47
らたた、るんたった、るたた、らたた!ぱたぱた裸足で踊りましょう。踊りなんて上等なモンじゃないけど踊りましょう。誰が何と言おうと踊りと言ったら踊りになるの。らたた、るんたった、るたた、らたた!泣きたくなるくらい寂しい夜でも震えてしまうほどひとりの朝でもおひさまさんさんのぼるから、つきはこんこんひかるから。届け届けと踊るのです。なるべくつとめて幸せに、なるべくつとめて大袈裟に