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インスタを舞台とするアートイベント『100人10』に作家としてエントリーして見えた3つのものごと

『100人10(ひゃくにんてん)』というアートイベントが開催されている。

  1. 誰でも応募することができる。

  2. Instagram上でのLIKE数、応募者同士の投票、審査員により上位100人が選出される。

  3. 選出された100人はミッドタウンに作品を展示して、一律10万円で販売する。

10万円という金額は、現代アートとしては決して高いものではない。
位置付けとしては若手の現代アーティストや、現代アートではない分野から活動の幅を広げようとするクリエイターに向けた色彩が強いかと思う。
3回目の開催となる今回、631もの作品がエントリーされている。
現在InstagramでLIKEによる投票を受け付けているところで、10月16日の締切に向けて佳境を迎えている。

こうやって記事を書いている私自身も、もともとデザインやエンジニアリングをバックグラウンドとしている。
エントリーした作品について語ると長くなるので、下記エントリー投稿の詳述をご覧いただきたい。そして「良いな」と思ったらLIKEで応援してもらえるととても嬉しい。

本記事の主旨は掲題の通りで、実際に当事者として参加して学ぶことがとても多かったので、この記事にまとめたい。

1. アートの手法やトレンドが見えてくる

前述の通り、応募者は他の応募者に手持ちの10票を投じる権利と義務を持っている。
作品は作家のインスタグラムアカウントと紐づけられた状態で公開されているので、その1つ1つに目を通すことになる。

作品のほとんどは立体空間の中で鑑賞されるべきものであるところ、1枚の静止画と説明動画をスマホの小さな画面で見たところで正直評価を下すことはとても難しい。
ところが、インスタの過去の投稿写真やリールを見ることで随分と状況を良くすることができる。

現代アーティストの他、グラフィックデザイナー、イラストレーター、刺青師、ガラス作家、書家、ファッションデザイナー、アートディレクターといった作家たちが、それぞれどういった技法をこれまでに試してきたのか。どのような作品を残してきたのか。一体何にこだわっているのか。
「発信の足跡」から作品をコンテキストに位置付けて眺めることができる。これで平面に奥行きが生まれる。
同時に技法やモチーフのトレンドもぼんやりと掴むことができる。

  • 金箔や銀箔、書道といった「和」の採用

  • 全体を構成する大きなモチーフと、空間を埋める細密な描写による鑑賞体験のデザイン

  • マスキングテープとスプレーを使った幾何学的な図案

  • 動物をモチーフとして、色やテクスチャで表現を展開 など

そういった技法やトレンドを踏まえた上で、では自分はどのように自分の作品を育てていこうかということを立ち止まって考える機会になる。

2. 素敵なアーティストと巡り合うことができる

「1」のプロセスの中で当然冷静に分析してばかりいるわけではなく、真剣に鑑賞するからこそ普段は見過ごしてしまいかねない観点から「この作家さんすごい…!」と巡り合うことができる。
「この作家さんすごい…!」をストーリーズで取り上げさせていただいて、そこからその作家さんとのコミュニケーションをDMでスムーズに続けることができたのはInstagramならではと思う。

ストーリーで取り上げさせていただいた作品

みなさん積極的に創作活動をなさっているので、展覧会等で実際にお会いする日も近いかと思う。
もう彼ら彼女らと巡り会えただけでも『100人10』に参加する意味が十分にあったと思える。肩入れしたくなるほどのアーティストさんと出会うことは、自分の認識能力の低さも手伝って、ギャラリーを回っていても意外と難しい。

3. 「Instagramの使い方」を学べる

「インスタの人気投票で決めるなんて軽薄な!」と反発したくなる方もいらっしゃると思うが、この立て付けには意図があるので溜飲を下げていただきたい。

『100人10』を運営する一般社団法人日本アートテック協会代表の大城さんは「今の時代に作家活動をする上でSNSは大いに役立つ。100人10を通してSNSマーケを実地訓練してほしい」という旨のメッセージをInstagramのストーリーで発信している。
そのように指摘しなければならないほど、SNSを効果的に使えていない作家さんはとても多い。素晴らしい作品を生んでいるのにフォロワーが3桁というケースもザラにある。

一方で、LIKEを集めている作家さんたちの立ち回りから学ぶところは多い。
いくつか目についた「打ち手」をピックアップする。

  • ストーリーで毎日呼びかける。

  • 作家同士で相互にストーリーで取り上げ合う。(YouTuberのコラボみたいなもの)

  • 他の参加者にLIKE・コメント・フォローして回る。(Like for Like)

  • 広告を回す。(直接『100人10』のエントリーポストに送客することはできないので、自分のポストを露出させて、フォロワー獲得+LIKE投票をコンペを機会に進める)

  • フォロワー全員にDMで呼びかける。(結果的にエンゲージが高まる可能性もある)

このコンペで「作品では負けていないのに」と悔しい思いをする作家さんは少なくないと思う。その悔しさをぜひ前向きに消化してもらいたい。

何より「1」でも取り上げた「フィードに残された過去の足跡」は短期的には取り繕いようがない。今日からいかにデザインしていくか、3年後に振り返ったときにどのような見え感にしたいのかを考えなければならない。
そういったことに気づくきっかけとしても、『100人10』はよく機能していると思う。

総括

こうやって振り返ると、この『100人10』が作家のために良くデザインされたイベントであることが見えてくる。主催の日本アートテック協会さんが利益を目的としていないことは収支をちょっと想像するだけでもすぐに分かる。

玉石混じった631人の作家さんの活動を横に並べてつぶさに見るという体験自体、普通に生活していて得ることはない。
先述の通り10月16日(日)までInstagramでのLIKE投票を受け付けているので、お時間が許せば投票者として関わってみることを強くおすすめする。

そして最後にもう一押し。
下記9枚組のグラフィックアートで僕も『100人10』にエントリーしている。コンセプトや思いも認めてあるのでぜひご覧いただいて、「良いな」と思ったらLIKEで応援してもらえるととても嬉しい。


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