最果タヒ

リリカルを生業にして候。ここは宝塚のことを書く場所です。趣味の場。新参者です。

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最近の記事

雪組「ボイルドドイルオンザトイルトレイル」感想

ネタバレあります。 雪組「ボイルドドイルオンザトイルトレイル」(作演出・生田大和さん)  シャーロックホームズの生みの親アーサーコナンドイルを主人公にした、作家としての成功と夫婦愛を描いた物語。 「書けるもの(評価されるもの)と書きたいものが違う」というのは多分、作家ならよくある話だと思います。純文学をやりたかったのにエンタメの才能がある人、エンタメをやりたかったのに短歌の才能がある人。そういう人は私が見てる範囲でもかなりたくさんいて(そして私もそうだよ!!最果タヒになりた

    • ミュージカル「アナスタシア」感想

      (注 ネタバレしてます)  あ、あ、アナスタシアを見たぞー!!!!! 何年越し!?夢が叶いました!!やった〜!本当にもうずっとスケジュールが合わず、行けそうで行けないの繰り返しを公演期間中やりつづけ、もはや無理矢理なんとかしまして先日ギリギリで滑り込みました。幸せです。幸せ。そう、幸せを手に入れに私は劇場に行くのよ!  ミュージカルをそもそも久しぶりに(私比)見たため全てが沁み、最初はそのことにまずぼろぼろと泣いていたのですが、あまりにもずっとずっと最高にいいのでどんどん

      • 雪組『双曲線上のカルテ』千秋楽感想/チェーザレさんとフェルナンド先生

        『双曲線上のカルテ』で停電が起き、モニカ(華純さん)がチェーザレさん(桜路さん)の病室にやってくる時、いつもチェーザレさんの目には涙が一粒溜まっていて、それが流れている日もあれば、体を起こす前にゆっくり流れることもあった。その前の場面で、チェーザレさんが看護師に触れてしまうことについて、モニカもフェルナンド(和希さん)もランベルト(縣さん)もどこか誤解をしていて、ただ「死にたくない」と縋りたいだけであることも伝わらない中で、妻に自分の命が残りわずかであることを悟らせないように

        • 雪組『双曲線上のカルテ』 桜路薫さんのこと。

          (※『双曲線上のカルテ』のチェーザレさん周りのエピソードのネタバレをします。物語の2幕以降の結末は書いてません。)  配役が出た時からすごく楽しみにしていました。私はいつもここに書いてるけど雪組の桜路薫さんがすごくすごく好きで、『双曲線上のカルテ』が上演されると知った時から、桜路さんのチェーザレさんが本当に見たかったのです。チェーザレさんは高齢の末期癌患者。医師からの病名の告知をされていません。説明された「胃潰瘍」という診断を信じ、そして日常を取り戻したい一心で、医師フェル

        雪組「ボイルドドイルオンザトイルトレイル」感想

          桜路薫さんのこと

          雪組 東京宝塚劇場公演 休演者のお知らせ https://kageki.hankyu.co.jp/sp/news/20230616_001.html  桜路薫さん、私にとってかけがえのない大切な舞台の人。タカラジェンヌ。宝塚という世界が好きだという気持ちを、丸ごといつまでも幸せな気持ちとして、そして新鮮な気持ちとして持ち続けられるのは、この人がいるからだと思っている。桜路さんは一つの作品を作ることや、自分が何かを表現することに対して、本当にいつもまっすぐで、一つの道を見据え

          桜路薫さんのこと

          好きな人が白燕尾を着るということ(雪組「ライラックの夢路」「ジュエル・ド・パリ!!」観劇日記)

           大好きな人が白燕尾を着て踊ることは、宝塚のファンになって一番幸福なことなのかもしれないなと思います。雪組のジュエルドパリがすごくいいショーで、でもそれはもしかしたら私のすごく好きな人が出てるからかもなぁ〜と思うんですけど。白燕尾って今まであんまりよく分かってなくて、もちろん素敵だなとは思うけど、それよりとにかく黒燕尾が好きだったんです。人によって魅せ方が全然違うけど、そこにその人の男役が一番よく現れていて、それを見ることができるのが幸せだった。黒燕尾は、目の前の人が見ている

          好きな人が白燕尾を着るということ(雪組「ライラックの夢路」「ジュエル・ド・パリ!!」観劇日記)

          宙組「カジノロワイヤル」観劇日記

           宙組カジノロワイヤル。  有名な作品を宝塚でやる時ほど「宝塚」という文脈で固有のキャラクターを演じることの面白さがあるというか。今回は007ですけれど、そのキャラクターが既に多くの期待を抱えた存在で、そういう存在って忠実に演じるだけでは足りなくて、それはものまねにしかならなくて、そのキャラクターが人を惹きつけたその瞬間の煌めきこそをなぞるべきで、見つめたその一瞬に弾ける花火のようでなければならず。そしてそれができるのが「スター」なんだろうなって思う。真風さんの退団公演として

          宙組「カジノロワイヤル」観劇日記

          雪組「BONNIE&CLYDE」感想3。ボニーとクライドの恋について。

          「ごめんね、やっぱりクライド&ボニーじゃ語呂が悪いの」 「ごめんね、やっぱり死ぬ話になっちゃった」とは決して言わないボニーと、それでも死ぬことをはっきりと書くボニー。ボニーにとって自分の最後の詩がクライドに響くかどうかはきっと大した問題ではなく、彼女はそう書きたくて、それが彼女の意思表明なのだろう。いつだってボニーは「私の思うこと」を語り、クライドはそれを受け止めることができる人だった。クライドがどんなに追い詰められても、クライドの言ってほしいことをボニーは言わない。言わな

          雪組「BONNIE&CLYDE」感想3。ボニーとクライドの恋について。

          最近思ってることと、雪組の好きな人の話。

           私は宝塚が好きで、それは男役と娘役というはっきりとした「枠」を持つことで、むしろ自在になる面がめちゃくちゃあるからだと思う。定型がはっきりとある表現が元々かなり好きで(短歌とか)、何かはっきりとした型があってそれらに縛られ不自由に見える中で行われる、なによりも自由な表現の世界を清々しいって思う。私は特に、人が見せる定型に対する誠実さが、すごく好きなんです。宝塚は全て女性であるのに、男役と娘役に分けることで、どういう存在が男役で、どういう存在が娘役かの定義づけが行われている。

          最近思ってることと、雪組の好きな人の話。

          雪組「BONNIE&CLYDE」感想

          「信じるものは救われる」という言葉があるけど、信仰心というものは鏡のようなものなんじゃないかって、この作品を見ていて思った。礼拝シーンに対する印象は多分日本の客と、アメリカの客で受け取り方がかなり違うんじゃないかなぁ。そしてクライドやバックと、他の礼拝に来た人々とでも全く違う。最初から信じるつもりがなければ、教えはうさんくさく聞こえるし、くだらなく見える。信じたいとすがるほどに、それらは偉大な頼もしいものに見える。ブランチが見ている「信仰」と、バックが見ている「信仰」は全く異

          雪組「BONNIE&CLYDE」感想

          星組「ディミトリ/ジャガービート」綺城さんの話

           ギオルギのことを考えると落ち込む、尊敬されていて神格化されているギオルギという人の姿は、ギオルギ自身がなりたかった「自分」ではないと思うし、彼は王として育てられたからこそ自分を捨て、「王」になることを選んでしまった。それは他人の理想や自分の理想や学んだ理想をかたどったものであって、彼そのものの姿ではない、ないけれどみなその作られた「王」をギオルギとして見ている。でも、自分のために生きることが許されなくて、それを確かにやりとげて、でも、本当にそんなことが平気な人だったんだろう

          星組「ディミトリ/ジャガービート」綺城さんの話

          雪組「蒼穹の昴」の思い出(玲玲、常蓮忠、岡圭之介)

           雪組のことがとても好きなのでよく見に行っていたのですが後半の感想を書けないままこんなにも日が経ってしまいました。舞台は何度も見るとその度に演じ方が変わっている、とかそういうことが見て取れておもしろいですね、それが真っ当な見方なのかはわからないけど、そこにむしろ醍醐味を感じることもある。セリフは言葉でコミュニケーションなので、ずっと同じではなくどこまで意図的かもわからなくて、繰り返し繰り返し同じ関わりをやることで、本能的に変わることもあるんどろうな。現実ではみることのできない

          雪組「蒼穹の昴」の思い出(玲玲、常蓮忠、岡圭之介)

          宙組「夢現の先に」感想

          「夢現の先に」千秋楽おめでとうございます。  目を見て「ありがとう」と言うことは大事!と教えられ、背中を押された僕(アベル)が、目を見て「ありがとう」と「言われる」までの物語。  この作品は「言わないこと」の選択が本当によくて、希望のあるセリフがたくさん語られるけど、でもどれも良く聞くと「希望です」という顔をしていない。言われたその人にとって救いなだけで、底抜けの明るい希望なんて誰も投げかけていないのではないかと思う。  父親の死に間に合わなかった過去を持ち、それを10年

          宙組「夢現の先に」感想

          雪組『蒼穹の昴』感想(久城さん桜路さん朝月さん一禾さんの話)

           蒼穹の昴、出ている人たちが素晴らしいな、これは本当に雪組の皆さんと専科さんたちの総力戦だな……という気持ちでいっぱいになった後で始まるフィナーレが最高で、本当にここに出ている人たちへの想いがマックスになってからのフィナーレなので、あとめちゃかっこよくて美しくて可愛いので雪組への愛が増幅されて爆発して私は……。みたいな感想をいつまでもしたためてしまいそう。雪組の人たちが好きだなぁ。ブログはいろんな人のこと細かに書くときりがなくなるので本当に本当にめっちゃ好きな人のことだけ書く

          雪組『蒼穹の昴』感想(久城さん桜路さん朝月さん一禾さんの話)

          宙組『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』 桜木みなとさんのスモーキーについて

          (宙組公演の他に、HiGH&LOW THE MOVIE 3のネタバレを含みます)  いつだったか、桜木さんのスモーキーが自分が吐いた血を見たとき、泣き出しそうな目を一瞬して、それから睨むような瞳で口元を拭っていた。原作のハイローで「妹」のララがスモーキーについて、「お兄ちゃんはいつ泣いていたの?」と心で問いかけるシーンがあり、「たぶん、このときだ」と私は宝塚版ハイローを見ていて初めて思った。ハイロー本編ではスモーキーは一度だって泣かない(多分……。違ってたらごめんなさい)。

          宙組『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』 桜木みなとさんのスモーキーについて

          宙組「HiGH&LOW」新人公演 感想

           宙組ハイロー新人公演。ハイロー本公演のnote書く前に新公の話をしてしまう……。(本公演の感想はできたらハイローをもう一回全編見直してから書きたくて……だってRUN THIS TOWN……)  とにかくハイロー新人公演の話をします。作品そのものもそうなんですけど、こんなに「未来」が見える感じがするの新鮮でした。作品がハイロー本編の前日譚であることも関係するのかなと思います。なんだかすごくロックバンドのデビューアルバムみたいだった!ナンバーガールのスクールガールバイバイみた

          宙組「HiGH&LOW」新人公演 感想