見出し画像

「動きながら考える」スキルについて

就職活動で行われる「SPI」や「玉手箱」なる適性検査を受けられたことのある方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。選考の一環で応募者の能力や人となりを把握するために、能力テストや性格検査を行うものです。

これは調べていて意外だったのですが、リクルートの調査では90%近くの企業の選考で導入されているらしく、またSPIの歴史自体も1974年からおよそ半世紀と、かなり歴史のあるもののようです。

もちろんWebでテストセンターで受けられるようになったのは概ね21世紀以降で、そこを機に大きく導入比率が上がったものとは想像されますが、とはいえ歴史のある試験なので、今の20代30代の社会人のみならず、40代50代の方でも多くの方が受けられているのかもしれません。

多くの人が受ける適性検査ですが、能力検査は基本的に「正解」があり、成績が上から下まで出てくるものなのですが、性格検査は、(性格なので当たり前の話ですが)一概に「正解」はないとされています。

性格検査の評価の基準は、企業ごとの、あるいは募集ポジションごとの「相性」の評価か、あるいは回答者が矛盾した回答をしていないか程度のものであり、ある回答が他の回答より確実に優れているという、模範解答は存在しないというわけです。

私自身、結構な回数の適性検査を受けてきました。その中で、性格検査で記憶に残っているものがあります。

あなたに一番当てはまるのはどの選択肢ですか。
A.考えてから行動するほうだ
B.行動してから考えるほうだ
C.考えながら行動するほうだ

こんな感じの質問です。

性格検査には正解は無いことは普通に考えればまぁそうだろうと予想がつくものですし、矛盾した回答をしたら良くないということも当時から経験的・感覚的に理解していたつもりなのですが、この質問だけはCが正しいんじゃないのかなぁ、と感じていた記憶があります。

というわけで本日は、「考えながら行動する」のが良い理由について掘り下げていきたいと思います。あくまで私の考えですので、世間一般に当てはまる話ではないかもしれません。確固たる信念をもってAやBの選択肢を選ばれた方も、そういう考えもあるよねと気楽に読んでいただけますと幸いです。

1.行動してから考えるほうだ、がマズい理由


これは一番わかりやすい例だと思うので先に書いてしまうのですが、この意識を就職活動に当てはめてみたら、「とりあえず応募して、書類が通ったら志望理由を考えてみるかなぁ」という態度に他ならないように思います。

・・・ここまで皮肉な態度で解釈しなくても良いとは思いますが、このような態度で面接にやってきた方は、よっぽど結果オーライで会社にハマっていない限り、選考を突破することは難しいように思います。

以前の記事で書いた内容も参考になるかもしれません。

異業種交流会で1日20名と名刺交換をして、それを月曜から金曜まで1週間続け、集まった名刺が100枚、その中のどれだけの人を週明けあなたは覚えているでしょうか。そして、その中のどれだけの人と建設的な関係を築くことができるでしょうか。
何とも非効率で、途方もない取り組みだと思われることでしょう。こんなことをしていたら疲弊しますし、それでいて焦りも生じるものです。

引用元:戦略的な人脈形成の進め方

上記は人脈形成目的で異業種交流会に足を運んでいた自分自身の反省を込めた記事なのですが、これなどはまさに、行動してから考えるという行動様式の典型例だと言えそうです。

場当たり的な行動が実を結ぶのは運よく結果オーライになった時だけです。

思考より行動を先に起こすといえば、愚直なテレアポやビル倒しのような営業などもイメージとしては近いかもしれません。それらを苦にすることなく行うことができるのはそれはそれで間違いなく、一つの優れた能力だと思いますが、とはいえそれができるのであれば尚更、より戦略的に事前に作戦を練った上で行う方が、より高いパフォーマンスと結果が伴うのではないでしょうか。

2.考えてから行動するほうだ、がマズい理由


考えてから行動するというのは、多くの人が日常生活で当たり前にこなしていることでしょうから、行動してから考えるというよりは回答者が多そうです。

外出するとき、家を出る前に電車の時間を調べておくのは当たり前でしょうし、洋服を買うにも支払の前に自分の家計を考えてから買うのが普通だと思います。スーパーマーケットでは好き勝手買うのではなく、冷蔵庫の中身を思い出して足りないものだけを買うという行動が重要です。

しかし少し冷静に考えてみると、このような生活場面をイメージする例は、どれもこれも既に何度も経験して知っていることばかりです。

ビジネスでは不確実性が高い場面や、未経験のことに挑戦する場面がたくさんあります。こうした場合においては、行動する前に考えてばかりいても物事が前に進まないことも多いです。

会社で売上等の数字を計画する場合においては、KPIといわれる数値に目標をブレイクダウンしていくことが一般的です。

KPIとKGIの図:こちらより引用

分かりやすい図があったので引用しました。EC事業、すなわちWebサイトでの物販ビジネスのKPIのイメージで、サイト訪問者数の一定の割合が商品購入者数に繋がり、それに平均購入金額を掛ければ予想売上高が算出されるという図式です。

ここで重要なのは、例えば「サイト訪問者数の何パーセントが商品購入者数になるのか」、「平均購入金額は幾らになるのか」といった部分で、ここの数字の見積もり次第で予想売上高は大きく変動します。だからこそ、いい加減な数値で見積もるわけにはいきません。

これが前年と同じ商品を、前年と同じ価格で、前年と同じ広告キャンペーンで売るといったようなものなら、昨年の実績数値を活用すればよい見積りになることでしょう。

しかしながら、別の商品を扱う場合、価格が変わる場合、前年とは景気その他の環境が変わる場合など、不確実性がどうしても存在するのがビジネスの世界です。自社データの活用や競合調査などを行い、可能な限り正確に検討はするものの、ああでもないこうでもないと言い続ける前に行動に移さなければならない場面がどこかで出てくるものです。

未経験のことに挑戦する場面でいえば、これも私の以前の記事からの引用で恐縮ですが、クレジットカードを顧客に販売する場面などが好例となるでしょう。

私が新卒で入社した銀行ではこのような目標が課されていました。
・支店での研修期間は、1年間で事務手続きの習得と並行しながら来店客に対して150枚クレジットカードの契約を獲得する

引用元:やる気を出すためには、目標を細分化すること

クレジットカード販売にはセールストークが必要です。先輩の様子を見習ったり、ロールプレイングをして学ぶことは非常に重要です。しかしいずれも、実際に顧客に提案してみる経験には勝りません

行動の前に学習し、考え抜くことは大事ですが、未経験のことを想像で考えるといっても限界があります。幾ら学習しても、実践がなければ畳水練になってしまうわけです。

3.考えながら行動するとは


ああだこうだと書いてはきましたが、どんな人間でも多かれ少なかれ、行動する前にも行動した後にも考えてはいるものだと思っています。

飲み会の前には当然店を決めるわけで、これは「行動する前に考える」例になります。しかし一方で、その場の雰囲気で店を決めて行く二次会はまさに、「行動してから考える」方の例になるでしょう。

このような感じで、「行動する前に考える」こともあれば、「行動してから考える」こともあるのが人間で、その結果がうまくいけばより効率的に再現することを目指すものですし、うまくいかなければ原因を分析して改善するのというのが、どんな人でもほぼ無意識にやっていることでしょう。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」といった言葉もありますが、ほとんどの人間は私も含め、歴史から実体験と同じレベルの学びを得ることは難しい、経験で学ぶ愚者なのだろうと思っています。

しかし一方で、「(天才は)一を聞いて十を知る」とも言いますが、じゃあ普通の人間は一を聞いたら一しか理解できないのかと言われればそれも違って、一を聞いて十を知ることは無理でも、だいたい三か四程度は学ぶことができるものだとも思っています。

今までの経験や知見から可能な限り考えを巡らせる。
それでも経験しなければわからないことは、行動でチャレンジして学ぶ。
その一つの行動から幾つかの学びを得て、次の考えに活かす。

こうした営みこそが、「考えながら行動する」ということなのであり、ビジネスっぽく言うとPDCAとかOODAなどの概念に繋がってくるのだろうなと考えています。

こうした理由で、私は冒頭の性格検査の設問には、「考えながら行動するほうだ」と答えるのが良さそうだと思っている次第です。


本日は以上です。
コメントやSNSシェア、フォロー、「スキ」機能で応援いただけますと励みになりますので、是非お願いします。

Twitterも是非フォローお願いします!→@sai_to_3

それではまた次回。

2022.2.19 さいとうさん


よろしければサポートお願いします!より良い記事を執筆するために有効活用させていただきます。