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その他の国 治外法権

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なんのジャンルなのか分からないものたち
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#散文

伊勢崎町ブルースなんて歌いたいものですね

あんた誰に口きいてんの?
あたいを誰だと思ってんの!?

そうよ、あんたがバカにするあの町の出よ
ど底辺よ!
だからなんのよ!

こんな小さなころから借金取りとも戦った
クリスマスプレゼントはスポロガムのおまけ
小学校に上がった時の誕生日プレゼントは
トウモロコシが三分の一個

あんた知らないでしょう!
涙と一緒にたべるトウモロコシの甘さなんてさ

だからあたいは強いのよ
負けない!

あたいがあ

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お仕舞い

お仕舞い

なにかの作法のように
丁寧に静かに服を着せられる

ショーツが太腿の間を滑り

ブラのホックが止まり
肩紐を合わせ

ブラウスのボタンが
ひとつ、またひとつ留められる

スカートがスルリと腰まで上がり
ヒダのひとつひとつまで整えられる

さっきまでの嬌声と水音が嘘のように
衣ずれの音だけが耳に響く

一枚、一枚と

着せられる間に

ひとつ、ひとつと

私は幼子に戻されるような思いがした

その鮮

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こんな夢をみた

こんな夢を見た。

気が付くと僕は片田舎の本屋の看板だった。

老人は曲がった腰で重々しげに毎日シャッターを上げては閉め、店先のワゴンを出してはしまい。変わらぬ日々を送っていた。時に子供が絵本をねだり、少年は少し早い性の目覚めを後ろめたそうに覗き、OLが旅の予定をみつけあて、主婦は今日の夕飯を探し当て、サラリーマンは小さなロマンを抱きしめながらそこで過ごしていた。しかし、誰もが知っていたであろうそ

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孤独の岬で手を振る人よ

孤独の岬で手を振る人よ

元来人と言うのは

「孤独」を友として生きているのではないかと思う

とある投稿を読んでいて
私の中に呼びかける何かがいた

同じ時間に同じ場所にいても
同じ母と同じ父を持っていても

その人がどのように感じているか
今腹が空いているのかいないのか
どんな悲しみを持っているのか

こんな職業をしていてなんだけれども

そう言ったことは
たとえ言葉を尽くしても
当人以外には
届かない分け合えない

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悪魔と天使

悪魔と天使

N「自分の中に悪魔と天使がいて、そいつらがささやきかけてくる、、、
というような事ってのは誰にでも起こる事かと思います。チャネリングとかね、そんな難しい話じゃなくて。ダイエット中だけどこれ食べたい、、、」

悪魔「食べちゃえよぉ~おいしぜぇ~」
天使「ダメよ、ちゃんと目標立てたもの、知ってる、あなたはここで食べちゃうような子じゃないわ」

N「とかなんとかいうやつね、これはそんな、だれにでもある、

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sairuiu

sairuiu

ガラスの向こうに見えたのは

母だった

みた事もないひと昔前のクラシカルワンピースに身を包み
明るい色の傘を差した

それは母だった

胸騒ぎのようなものを覚えてかけつけようとした
私の足を雨が阻む

いつもより細く儚く見えた母の腕が
乙女のように小さく手を振った向こうには

彼がいた

それはまぎれもない

彼だった

スーパーの袋に家族四人の食材をパンパンにして運んでいる
逞しいいつもの母の

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三拍待て

三拍待て

劇団を離れて9年目に入る

今までとはまた違う視点で色々見られるようになってきたのであの頃の自分に当てた手紙みたいに色々書いてみようと思う

私がいたお芝居の稽古の場では、どのテンポでどう話してどう動くかと言うのは指定がない限り役者が考えて決めるものだった

でも稀に演出から細かに動きやテンポまで指定されて

俺の言うとおりに動け!このセリフのあと三拍待ってから次に動け!

とか言われる事もあって

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美代子の猫

ジジという猫を飼っていた

ジジはクロネコじゃないし

私の名前はキキじゃない

私は魔女でもないし

少女でもない

ほうきで空を飛ばないし

パン屋に居候もしやしない

それでも猫の名前はジジ

喋らない猫だけど

名前はジジ

段ボールにそう書いてあったのだから仕方ない

こちらキキじゃない美代子は

ただ毎日息を吸って吐いている

今日は誰かと話をしたろうか

水を飲もうとして

乾いた唇

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池の鯉より

池の鯉より

大池「あぁ、良い天気だなぁ。あ、ちょうどいいところにベンチがある。座ろう。」

小池「あぁ、いい天気だなぁ。あ、ちょうどいいところのベンチにちょうどいい感じの男性が座っている。座ろう。」

小池、大池の横にぴったりと座る

大池・小池「…。」

大池「こんにちは。」

小池「こんにちは。」

大池「つかぬ事をお伺いしますが。」

小池「お伺いになる。えぇ、結構ですよ。」

大池「どうしてこれだけベ

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気負えども、気負えども

気負えども、気負えども

他人に尽くしすぎて疲れて

やおら自分の為に生きようと気構える

懸命に生きれば生きるほど

結局巡り巡って他人の為になってしまう

自分の為にばかり生きてきたと

やおら他人に尽くそうと気構える

懸命に生きれば生きるほど

結局巡り巡って自分の為になってしまう

世界なんて

そんな風にいい加減で

そんな風にちょうど良くて

だから適当に生きてても

結果同じなんじゃないかと思うの

肩の力

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