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お仕舞い

なにかの作法のように
丁寧に静かに服を着せられる

ショーツが太腿の間を滑り

ブラのホックが止まり
肩紐を合わせ

ブラウスのボタンが
ひとつ、またひとつ留められる

スカートがスルリと腰まで上がり
ヒダのひとつひとつまで整えられる

さっきまでの嬌声と水音が嘘のように
衣ずれの音だけが耳に響く

一枚、一枚と

着せられる間に

ひとつ、ひとつと

私は幼子に戻されるような思いがした

その鮮やかな仕草に惚れ惚れと浸っていると

やがて、大きくて優しい掌は私の頭をするりと撫であげ

優雅に私の髪をといて結い上げリボンをかけた

それは、あまりに自然なことのように思えた

私の髪を結い上げたのと同じ様に繊細に私の手首を組紐で結い上げ

リボンをかけるように私の目を覆った

覆ってくれた

もう私は何もみなくていい
彼が与えるもの以外は

もう私は何もしなくていい
彼の望むこと以外は

仕上げに彼は一番大切な贈り物をくれた

シンデレラの靴を履かせる王子様のように

私の右足にガラスの飾りがついた足かせをつけてくれた

カチリ

もう私はどこにも行かなくていい
彼のこの部屋以外には

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