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sairuiu
ガラスの向こうに見えたのは
母だった
みた事もないひと昔前のクラシカルワンピースに身を包み
明るい色の傘を差した
それは母だった
胸騒ぎのようなものを覚えてかけつけようとした
私の足を雨が阻む
いつもより細く儚く見えた母の腕が
乙女のように小さく手を振った向こうには
彼がいた
それはまぎれもない
彼だった
スーパーの袋に家族四人の食材をパンパンにして運んでいる
逞しいいつもの母の腕は
なまめかしく彼に絡みつき
しなだれかかる
私の足を阻む雨が彩度を落とし
昔の映画みたいに視界をモノトーンにしていく
誰かの大切な物を一つ奪おうとしていた私から
大切な物が二ついっぺんに消えた
雨の音だけが私を阻み
雨の音だけが私を守っていた
時間よ止まれ
雨よ止まないで
絶望のボートが涙の川に漕ぎ出した
行きつく先は瀟洒な崩壊の白い家
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