手記千号

物書き。哲学・心理学・法学に興味があります。学びを摂取、発信していきたいです。とりわけ哲学の存在論から目を離せません。「存在している」とは一大事ではないでしょうか。

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      手記千号が進化論についてまとめた記事たちです。議論の骨格をわかりやすくまとめることを意識しています。

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    ゾウの賢さが分かるほど人間は賢いのか?【読書】

    人間は人間の賢さについてさえよく分かっていない。人間とは異なる生活をしている動物たちの賢さについては、なおさら分かっていない。分かったつもりで、ひどい勘違いをしたりする。 人間が動物の賢さを誤解してきた歴史か詳しく紹介されているのがこの本 別記事内では著者が人間原理を誤解している点を批判したが、学びは多かった。 序盤にでてきて印象的な話を一つとりあげよう。 ゾウは鼻でモノを拾っている。小さいモノから大きいモノまで。そこで、ゾウが道具を使う能力があるかを確かめるために、

      • 人間原理とマルチバースでこの宇宙の不自然さを説明する【哲学】

        この宇宙は不思議で満ちている。素人だからそう感じるだけ? いやいや、宇宙物理学の専門家からみても、この宇宙は不自然にみえるらしい。むしろ専門家の場合は、ただ漠然と不思議がる素人と違って、宇宙の根本の部分に対してはっきりとした不自然さをみてとっている。 現代宇宙論では、この宇宙の不自然さを「人間原理」と「マルチバース」によって説明することがある。 何がどう不自然なのか。人間原理とマルチバースはその不自然さをどう説明するのか。本記事では、それらの解説を行う。 人間原理とは何

        • 論理一辺倒の危うさ【雑考】

          論理一辺倒の人がいる。異様にみえるほど論理の一貫性を追求するのだ。 その人が論理に傾倒する理由は論理以外の何かにある。というのも論理の体系からは「論理的に思考しよう」という提案は出てこないからだ。論理は形式だけに関わっている。 論理にこだわるのはなぜだろう? 執拗なまでの論点整理が問題解決に繋がることがある。だから、その人は公共心に溢れているのかもしれない。 あるいは、偏見や常識からの解放、すなわち自由を求めているのかも。または単純にパズルを解くような楽しさを追求して

          • 無と存在の意味を考え中【哲学】

            本記事では、「無」と「存在」の意味に関して現時点で考えていることを書き残しておくことにしました。探求の方法論についての話なので無味乾燥にみえるかもしれません。「なぜ世界が存在するのか?」に関する実質的議論には(無謀にも)こちらの記事で取り組んでいます。 なぜ世界はあるのか【哲学】 https://note.com/s1000s/n/ne5e4bbb0e0a4 さて、本記事の内容ですが、なんだか当たり前のことを長々書いている気もします。この方向性だと常識や科学と両立した上で

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            なぜ世界はあるのか【哲学】

            note開設当初から私のプロフィール欄には「哲学の存在論から目を離せません」などと書いてあります。にもかかわらず、今までその話題に関わる記事を書きませんでした。 思索と読書は続けていたのです。しかし、学ぶほどに「学ばねばならない論点」が逐次追加され続けて収拾がつかなくなっていったのでした。とはいえ、ここ最近になり執筆欲がでてきたので、現時点での見解を強引にでもまとめておくことにします。 今回のテーマは「なぜ世界はあるのか?」 もう少し具体的には、二つの問いを検討します。

            はだかの王さまはバカだったか—バカという言葉と透明な服―

            ――王様は裸だ! と叫んだ子どもはどんな子だっただろう。 子どもについては描写がない。どんな奴でも構わないのだ。 では王様はどんな人だろう。 こっちは詳しい描写がある。どうやら悪い人間ではないらしい。 服のために税金を浪費しているのは難点といえるが、「戦いが嫌い」な性格をしているのは好意的に評価しておきたい。 この王様がまず頼るのは、「賢く正直者で通っている人のよい大臣」や「根がまっすぐな役人」たちだ。この国にはそういう人がしかるべき地位にいて、王様はこうした人を

            心理学の理論・論文・目標について少考

            Noteにおいては、心理学の再現性危機に関する記事を何本が書いてきたのですが、幸運なことにある記事に対して研究者の方からコメントと記事へのリンクをいただきました。 以下では、上記記事の内容を踏まえつつ、最近考えていたことなども書いていきたいと思います。 重要だと思う論点を二つとりあげます。 論点1 理論(家)と論文(石) 記事中にある、「家と石」の喩えはなかなか分かりやすいものでした。 「理論」を「家」、理論の素材である「論文」を「石」としたとき、心理学の再現性危機

            再現性危機の記事がバズっていることについて所感

            以下の記事ですが、私が想像していた1000倍以上の反響をいただいています。全くの想定外です。面白かったとか、何かしら役に立ったという感想を嬉しく思っています。何かしらお役に立てたならば幸いです。 心理学・行動経済学等の著名な研究論文が次々に追試失敗【心理学】 https://note.com/s1000s/n/na0dbd2e8632d ただし、(こんなことを書く方が失礼な気もしてしまいますが)私は知的なことに興味があるだけの学問素人です。心理学に関してもまたズブの素人な

            『利己的な遺伝子』とはどういうことか【進化論】

            皆さまはリチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』をご存じでしょうか。あと数年も経てば出版50周年を迎える現代の古典です。 この本は、「人間は利己的な遺伝子の操り人形である」という内容 ……ではありません。 むしろ私の見る限り、この本の主要なメッセージの中には次のものが含まれます。  ● 遺伝子はすごい。  ● でも生き物は遺伝子ではない。  ● もちろん遺伝子の操り人形でもない。  ● 気のいい奴は生き残る。  ● 文化はすごい。すごい文化をもつ人間って特殊だ。 生

            あなたが辞めても代わりはいるもの

            あなたの言うことは真実でしょう。私の代わりはいくらでもいる。 でもね。上司さん。ごめんなさい。 ――あなたの代わりだっていくらでもいるんですよ。 これもまた当然の真実です。 そんなことはない? あなたがいないと会社が潰れる?  そうですか。 でも申し訳ない。 ――この会社の代わりはいくらでもあるんです。 この会社が潰れれば、占有していたスペースと人材は放出されます。新たな参入者を含めて新たな盛り上がりがはじまるだけの話なんですよ。ウチよりよい企業に金や人が集中して、生産性

            進化論はトートロジーである、という誤解を解く【進化論】

            進化論は、トートロジーであるとして批判されることがあります。 また、進化論の一部である自然選択説の中のさらに一要素である「最適者生存(=適者生存)」がトートロジーであると指摘されることもあります。 しかしながら、前者の批判は間違っています。後者の指摘は正しいかもしれないものの進化論にとって何ら痛手にはなりません。 さまざまな誤解が生じやすい論点です。ここで詳しく解説します。 1 トートロジーって何? まず押さえておきたいのは、トートロジーとは、命題に関わる概念だという

            進化論のハードコア 自然選択説【進化論】

            ダーウィン流進化論については「これらの要素を失ったならばもはや進化論とは呼べない」というハードコアが二つ存在します。それは生命の樹説(共通先祖説)と、自然選択説(自然淘汰説)です。 本記事では後者の自然選択説について骨格部分をしっかり解説します。自然選択はどのようにして見事な進化を生み出すのでしょうか。 1 自然選択説とは?自然選択説というのは「進化の主要なメカニズムは自然選択である」という仮説です。 ① 自然選択とは では自然選択とはどのようなものでしょう。三つの前

            ラマルク流の進化論【進化論】

            ダーウィンは「すべての生命は単一の種から分かれて進化してきた」とする生命の樹説(共通先祖説)を主張しました。この説はさまざまな証拠によって裏付けられ、現在では通説となっています。 ダーウィンよりさらに一世代前の進化論者であるラマルクは、異なる見方をしていました。誤りと判明している仮説ですが面白かったので紹介します。 ■ ラマルクによる進化論 ジャン=バティスト・ラマルクはフランス自然誌博物館の教授も務めた植物学者・無脊椎動物学者です。 現代的な生物学(Biologie)

            進化論のハードコア 生命の樹【進化論】

            現代進化論の基盤になっているのはダーウィン流進化論です(以下単に進化論)。 では進化論は進化に関して何をどう論じているのか。以下二つの説の組み合わせとして理解することができます。 一つは「生命の樹(tree of life)」説(または共通先祖仮説) 一つは「自然選択(natural selection)」説(または自然然淘汰仮説) この記事では生命の樹仮説について扱います。 ■ 生命の樹(tree of life)説  生命の樹説とは、生命の起源に関して「すべての

            起きてて偉い!【睡眠研究】

            睡眠と覚醒に関しておもしろい話題に接したので記録しておきます。こんな発想があって、しかも研究が進展しているとは。 1 睡眠こそがスタンダード 生物はなぜ眠るのか? とは、たまに聞く疑問です。しかしダニエル・デネットによれば、生物が眠り状態になるのは当たり前です。理由は簡単。眠っている方がエネルギーを消費せずに済むから。 デネット曰く説明されるべきは、 ――生物はなぜ起きているのか? この発想の転換には、わたくし「おおっ!」と感心してしまいました。 コストを伴う行

            遺伝的革新と文化的革新【進化論】

            進化とは「遺伝による性質の変化」を指します。 「遺伝」という要素が重要です。 遺伝によらない変化は進化とは言いません。こんな単純なことから事実がみえてきます。世を見渡してみると、遺伝とは関係のない変化がたくさん生じているということです。 「進化」をキーワードにした論考があふれる現在だからこそ、文化による変化は生物学的な進化とは異なるという基本は押さえておくべきでしょう。でないと進化・文化・進化と文化の関係、どれについても誤解しかねません。 ■ 文化による変化は進化では