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ゾウの賢さが分かるほど人間は賢いのか?【読書】


人間は人間の賢さについてさえよく分かっていない。人間とは異なる生活をしている動物たちの賢さについては、なおさら分かっていない。分かったつもりで、ひどい勘違いをしたりする。

人間が動物の賢さを誤解してきた歴史か詳しく紹介されているのがこの本


別記事内では著者が人間原理を誤解している点を批判したが、学びは多かった。

序盤にでてきて印象的な話を一つとりあげよう。

ゾウは鼻でモノを拾っている。小さいモノから大きいモノまで。そこで、ゾウが道具を使う能力があるかを確かめるために、次のようなテストが行われた。

・直接は届かない高い位置にエサを吊るしておく。
・近くに棒を置いておく。
・鼻で棒を掴み、エサを叩き落とせば、エサが手に入る。

ゾウに道具を使う知能があるならば、鼻で棒を使いエサを手に入れることができるはずだ。

そう、賢いチンパンジーみたいに。


賢いチンパンジー

……だが、ゾウは棒を用いてエサをとることはなかった。そこで研究者たちは、ゾウには道具を用いる知能はないと考えた。

鼻で棒を掴むことはなかった


……しかし、実際のところ、ゾウに道具を使う知能はあった。

単にこのテストのやり方がゾウにとって理不尽だったのだ。

ゾウは視力が悪く、嗅覚が良い。モノの性質やありかは匂いで判断する。もしも鼻で棒を拾い上げてしまえば、匂いが嗅げず、エサのありかがわからなくなる。

そもそもゾウにとって、棒はエサを叩き落とす用具として認識されようがないのだろう。あまりに向いていないのだから。

そこで、別の研究者は棒以外の道具もおいておくことにした。

・直接は届かない高い位置にエサを吊るしておく。
・近くに棒と頑丈な箱を置いておく。

ゾウは棒には目もくれなかった。代わりに頑丈な箱をエサの真下まで蹴っていき、それを踏み台にすることでエサを手にした。


踏み台を用いてエサを手にするゾウ


ゾウはちゃんと道具を使えるのだ。ゾウにふさわしい道具なら。

ゾウの道具理解というより、人間のゾウ理解が足りなかったのだ。

何なら道具として使えるのか? その道具はどう使うものなのか? これらは動物ごとに異なる。

今回取り上げたのは道具を用いる知能の話だった。けれども、賢さの尺度はさまざまある。賢さを公平に評価するのは本当に難しい。


このゾウの話は以下の記事でもとりあげられている。


ゾウ、かわいい……






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