見出し画像

まいにち易経_0612【韜晦】衆に莅み、晦を用いてしかも明なり。[36䷣地火明夷:象伝]

象曰。明入地中明夷。君子以莅衆。用晦而明。

象に曰く、明地中に入るは明夷なり。君子以て衆にのぞむに、晦きを用てしてしかも明らかなり。


火地晋では、明がまだ地中に入らない時、君子は明るく道を進む。しかし今や、その明が地中に隠れたので、これは明夷の時である。この時、君子が道を歩もうとするならば、世間に対しては暗昧を装い、慎み深く愚を守る一方で、内心では日々明徳を新たに研鑽することが求められる。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「明夷」は明るさや才能を表に出さず、内に秘めることを指しています。リーダーシップにおいて、この光と影のバランスを取ることが重要です。

例えば、歴史上の偉大なリーダーたちは、常に自分の知恵や才能を誇示するわけではありませんでした。むしろ、必要な時にだけその力を発揮し、普段は謙虚で慎み深い態度を保っていました。これが「韜晦とうかい」、つまり自分の才能や地位を隠し、周囲の目をくらますことの重要性です。

「韜晦」とは、自分の能力や知識を隠すことで、他人の前で馬鹿を装うことを意味します。これは一見、消極的な態度のように思えるかもしれませんが、実は非常に積極的な戦略です。リーダーがあまりに賢明で細かい点にまで口を出すと、部下は自分の能力を発揮できなくなります。だからこそ、時には「知らないふり」をすることが大切なのです。

歴史の中で、この「韜晦」の智慧を実践した一例として、三国志の諸葛亮(孔明)が挙げられます。彼は非常に聡明な軍師でしたが、必要な時には自分の知識を隠し、部下たちに自由に行動させました。これにより、部下たちは自信を持って自らの判断で動くことができ、最終的に大きな成果を上げることができたのです。

「明夷」の時期に求められるのは、表面では愚かさを装いつつも、内心では日々明徳を新たに研鑽することです。これは、リーダーが外見上は控えめであっても、内面的には常に自己研鑽を怠らないことを意味します。リーダーとして成長するためには、日々の学びと自己反省が不可欠です。

例えば、現代のビジネスシーンにおいても、表向きの謙虚さと内なる修養は非常に重要です。Appleの創業者スティーブ・ジョブズは、一見すると厳しいリーダーとして知られていますが、その内面では常に新しい知識を求め、自己研鑽を続けていました。これが、彼が革新的な製品を生み出し続ける原動力となったのです。

「韜晦」の教えは、寛容さと信頼の重要性も教えてくれます。リーダーがあまりに明察聡明で細かいことにやかましくすると、部下たちは自由に動けなくなり、結果的に組織全体の成長を妨げることになります。だからこそ、時には馬鹿を装い、部下たちの判断を信頼することが大切です。

皆さんがリーダーとして成長する過程で、常に自分を前面に出すのではなく、周囲の人々の成長を促すために「韜晦」の智慧を活用してほしいと思います。そうすることで、皆さん自身も、そして周囲の人々も共に成長し、より良い未来を築いていけるでしょう。


参考出典

「晦を用いて」とは、自分の才能や地位を隠し、人の目をくらますこと。これを「韜晦とうかい」という。寛大に、知って知らないふりをすることである。
リーダーがあまりに明察聡明で細目をやかましくいえば、部下は自分の能力を発揮できなくなる。「韜晦」は、時によって人を伸ばすための明らかな知恵となる。
要するに、人々に相対するのに、時には馬鹿を装えという教えである。

易経一日一言/竹村亞希子

#まいにち易経
#易経 #易学 #易占 #周易 #易 #本田濟 #易経一日一言 #竹村亞希子 #最近の学び #学び #私の学び直し #大人の学び #学び直し #四書五経 #中国古典 #安岡正篤 #人文学 #加藤大岳
#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門


この記事が参加している募集

#最近の学び

181,387件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?