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まいにち易経_0512【物心が集まる】その聚まるところを観て、天地萬物の情を観るべし。[45䷬澤地萃:彖伝]

彖曰。萃。聚也。順以説。剛中而應。故聚也。王假有廟。致孝享也。利見大人亨。聚以正也。用大牲吉。利有攸往。順天命也。觀其所聚。而天地萬物之情可見矣。
彖に曰く、萃は、聚(しゅう)なり。順にして以て説ぶ。剛中にして応あり。故に聚(あつ)まるなり。王(おう)有廟(ゆうびょう)に仮(いた)るは、孝の享(まつり)を致すなり。大人を見るに利あり亨るは、聚むるに正を以てすればなり。大牲(たいせい)を用うるに吉、往くところあるに利あるは、天命に順したがうなり。その聚まるところを観て、天地萬物の情見るべし。

沢地萃(たくちすい)
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担う
ポストZ世代の若者たちに向かって語りかけるシーン

皆さん、今日はリーダーシップについてお話ししたいと思います。
このお話は、古い知恵から来ているものですが、皆さんの役に立つのではないかと思うのです。
皆さんも知っているでしょう?自然の中には陰と陽、つまり相反するふたつのエネルギーがあることを。陽は活動的で外に向かうエネルギー、陰は静的で内に向かうエネルギーです。この二つが上手くバランスを取ることで、この世界のあらゆるものが生まれてくるのです。

例を挙げてみましょう。みなさんの住む町を思い浮かべてください。その町には、きっと公園やお店、学校などがあるでしょう。でも、それらがあるのは、太陽の陽射しと、雨という陰のエネルギーがあるからなのです。陽の力で草木が育ち、陰の力で水分を得る。そうして自然が育まれることで、人間が住める環境が生まれるのです。

一方、陽だけだと草木は枯れ、町は荒れ果てます。陰だけでも、水で冠水して住めなくなってしまいます。陽と陰が適度に共存していることが重要なのです。人間社会も同じことが言えます。リーダーの下に多くの人が集まってくるのは、そのリーダーに陽と陰のバランスがあるからなのです。優れたリーダーには、強い意志と行動力がありますが、同時に思慮深さも備わっているのです。

たとえばこんな例えがあります。陽の力は車の走る力のようなものです。思い切り加速して、目的地に向かう原動力になります。しかし、ただ無秩序に進むだけでは危険です。そこで陰の力、つまりハンドルを確実に握り、道路の状況を見極め、安全に運転するための知恵が必要になります。リーダーも同じように、ビジョンを掲げて大胆に前進するだけでなく、状況に応じて適切に舵取りをする柔軟さも持ち合わせていなければなりません。

そしてリーダーの元に多くの人々が集まるのは、そうした陽と陰の調和があるからこそなのです。易経にも"萃"という言葉があり、これは"集まる"ということです。陽と陰のエネルギーが集まって万物が生まれるように、優れたリーダーのもとにも多くの人が惹きつけられ、集まってくるのです。

しかし、ただ人々が集まるだけでは何も始まりません。大切なのは、リーダーがどのように人々を導いていくかです。例えを挙げましょう。みなさんの地域でお祭りが行われる時、豪華な屋台が立ち並び、賑やかな雰囲気が醸し出されますよね。それは大がかりな準備があったからです。屋台の出店者はたくさんの食材を仕入れ、練習を重ねてきたはずです。そうした大々的な準備があったからこそ、人々は惹きつけられ、喜びを感じられるのです。

同じように、リーダーは人々を惹きつけ、導き、高揚させるための準備をしっかりとしなければいけません。易経にもその通りのことが書かれていて、"大牲を用うるに吉"とあります。"大牲"とは、大がかりな準備を意味します。 リーダーは、たとえ小さな集まりでも、心を込めて対応することが重要なのです。

つまり、リーダーシップとは、形ばかりのものではなく、精神性を伴うものなのです。易経には"天地の間のあらゆるものは、陰陽のエネルギーが集まってできている"とあります。つまり、この世のすべてのものの根源が、陰陽のバランスにあるということです。

優れたリーダーとは、まさにこの根源的な原理を体現した存在なのです。人々を魅了し、導き、高揚させることができるのです。陽の力で大胆に前進し、陰の力で的確に舵を切る。そうすることで、多くの人々から慕われ、大きな志を達成できるに違いありません。

皆さんにもリーダーになる機会が訪れるかもしれません。その時は、この話を思い出していただきたいと思います。陽と陰のバランスを保ち、人々を正しく導いていけば、素晴らしいリーダーになれるはずです。そしてきっと、皆さんの周りに多くの仲間が集まり、大きな夢を実現できるでしょう。


参考出典

その聚まるところを観て、天地萬物の情を観るべし。
天地万物は、陰陽の気が聚まり、成り立っている。雨と陽射しが豊かに注ぐ肥沃な大地には動植物が集まり、推進力のある優秀なリーダーの元には、喜んで従う人々が集まる。物や人心の集約する時と場所、内容を見て、「これだけのものが集まるのはなぜか」とよく洞察すれば、その物事の真の情態を知り得ることができると易経は教える。

易経一日一言/竹村亞希子

『萃は聚なり』萃と聚と古くは同じ子音。上下の卦徳からいっても、全体の卦形からいっても聚まるの意味がある。
『王有廟に仮る』は、王者が孝心の供物を先祖に贈り届ける(=致)ことである。
『大人を見るに利あり亨る』なぜ亨るかといえば正道を以て人を聚め物を聚めるからである。
『大牲を用うるに吉、往くところあるに利あり』というのは、万物豊かに聚まり力の満ちたときに、厚い礼を用い、大いに為すあることは当然の理、天命に従ったやりかたである。極言すれば天地の間のあらゆる物は、陰陽の気が聚まってできているので、その聚まりかたを観察すれば、天地万物の秘密は、手にとるようにわかるであろう。

易(朝日選書)/本田濟

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