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まいにち易経_0529【いのちのちからと調和】庶物に首出して、万国ことごとく寧し。[01䷀乾為天:彖伝]

彖曰、大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乘六龍、以御天。乾道變化、各正性命、保合大和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。
彖に曰く、大いなるかな乾元けんげん、万物りて始む。すなわち天をぶ。雲行き雨施し、品物ひんぶつ形をく。大いに終始を明らかにすれば、六位りくい時に成る。時に六龍りくりゅうに乗り、もって天をぎょす。乾道けんどう変化して、おのおの性命せいめいを正しくし、大和たいわ保合ほごうするは、すなわち利貞なり。しゅとして庶物しょぶつでて、万国ばんこくことごとやすし。


現代語訳
なんと素晴らしいことだろう。乾(けん)の偉大な成就の時だ。万物(すべてのもの)が生まれ始め、成長を始める。乾の力がすべてのものを支配している。雲が湧き出て恵みの雨を降らし、それぞれが形を作り、流れ始める。これは物事の始まりと終わりを示す「龍の六変化」だ。
君子(立派な人)の才能がまだ見えない潜龍(せんりゅう)が、志を立て、師匠に出会い、努力に努力を重ねて、恵みの雨を降らす飛龍(ひりゅう)として大空に飛び立つ。
乾(天)の道は陰陽(いんよう)を調和させ、役割を果たし、天地と宇宙が生成発展する。常に正しく、適した状態を保つ。龍が時を得て、世界が調和するのだ。

乾為天(けんいてん)
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

生命力と成長の力

まず、乾為天が教えてくれるのは、生きて成長する力の偉大さです。この力は、私たちがどんな困難に直面してもそれを乗り越え、成長するための根源的なエネルギーです。例えば、企業が新しい市場に進出するとき、その過程で直面する課題や競争相手との戦いは避けられません。しかし、その中で成長し続ける企業こそが真のリーダーとなります。この力は、天から与えられた生命力として私たち一人ひとりに宿っています。

次に、天道について考えてみましょう。天道とは、万物の始まりと宇宙を司る大いなるエネルギーのことです。このエネルギーが巡ることで、雲が動き、雨が降り、万物が生育し、それぞれの個性を発揮します。これはまるで、企業の経営者が組織の中で様々な部門や個人をうまく調整し、全体が一つの方向に向かって進むように導くのと似ています。

元亨利貞と経営サイクル

元亨利貞(げんこうりてい)という四つの概念は、春夏秋冬のように、企業の成長サイクルを示しています。「元」は始まりを、「亨」は成長を、「利」は成果を、「貞」は持続を表します。例えば、新製品の開発を考えてみてください。まずは「元」の段階でアイデアを生み出し、「亨」の段階でそのアイデアを育て、市場に投入します。「利」の段階で利益を得た後、「貞」の段階でその成功を持続させるための戦略を練る必要があります。このように、元亨利貞のサイクルを理解することで、企業経営の全体像を把握しやすくなります。

六つの龍とリーダーシップ

また、乾為天には六つの龍が登場します。これは、リーダーシップの各段階を象徴しています。潜龍(隠れている龍)から始まり、亢龍(天高く飛ぶ龍)に至るまで、それぞれの段階で適切な行動を取ることが求められます。これは、企業のリーダーとして、どのタイミングでどのような決断を下すべきかを示しています。特に、亢龍の段階に達したときには、自分の力を過信せず、周囲と調和を保ちながら進むことが重要です。

いのちのちからと調和

最後に、「いのちのちから」と調和についてお話しします。これは、企業の中で個々の社員が持つ潜在的な力を引き出し、全体としての調和を保つことを意味します。リーダーとして、部下の能力を最大限に発揮させる環境を整え、チーム全体が一つの目標に向かって進むように導くことが求められます。例えば、シリコンバレーの企業では、社員の自主性を尊重しつつ、全体としての目標を共有することで驚異的な成果を上げています。

ここで一つ、興味深い豆知識をお伝えしましょう。江戸時代の大名、松平定信は「乾為天」をよく引用し、その精神を自らの政治に取り入れていました。彼は、国の繁栄にはまず農業の発展が重要だと考え、農業政策を徹底しました。このように、時代や場所を超えて「乾為天」の教えは多くのリーダーに影響を与えています。

また、現代の経営でも「乾為天」の教えは生きています。例えば、トヨタ自動車の「カイゼン(改善)」は、小さな改善を積み重ねることで大きな成果を生むという理念ですが、これも「乾為天」の「いのちのちから」に通じるものがあります。小さな成長を大切にすることで、企業全体の大きな成長につながるのです。

今日お話しした「乾為天」は、単なる古代の教えではなく、現代の企業経営においても大いに役立つ知恵が詰まっています。生命力を信じ、成長を続け、天道に従い、リーダーシップを発揮し、調和を保つことが、成功への道です。これらの教えを心に刻み、日々の経営に活かしていただければ幸いです。


参考出典

生きて、成長していく力は、人間のどんな能力にも特出して優れたものである。この力によって、個々の人問、動植物は活かし活かされ、営み、安寧に成長できる。その力は天(乾)の働きによってもたらされるもので、地上の生きとし生けるものの根源になっている。我々一人ひとりにも、生命力として与えられ宿っている力である。

易経一日一言/竹村亞希子

天道は万物の始まりと宇宙を司る大いなるエネルギー。天の生気が雲を巡らせ恵みの雨を降らし万物を生育しそれぞれの個性を発揮させる。この天の生意は遍く流通し拡散する(生意の発生展開)。
天道の始めから終わりまで(元亨利貞/春夏秋冬)を明らかにすれば、卦の六つの位(潜龍→亢龍)は、それぞれの然るべき時にしたがって完成する。時として六頭の龍(六陽爻)にひかせた車に乗って、天の軌道を自在に走らせる。刻々と変化する天道は万物を生育する。生まれながらに持つ天から授けられた『いのちのちから』は(天から受けた⇒性・天が与えた⇒命)各々の本質に従って造られているこの大調和を持続し(保)これに和する(合)これこそが利貞(生意の完成)である。
特出して優れた(首出)『いのちのちから』によって、営み、活かし活かされ、育み育まれことごとく安寧な世になるのである。

易(朝日選書)/本田濟

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