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まいにち易経_0603【いのちあるものの多様性】雲行き雨施し、品物形を流く。[01䷀乾為天:彖伝]

彖曰、大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乘六龍、以御天。乾道變化、各正性命、保合大和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。
彖に曰く、大いなるかな乾元けんげん、万物りて始む。すなわち天をぶ。雲行き雨施し、品物ひんぶつ形をく。大いに終始を明らかにすれば、六位りくい時に成る。時に六龍りくりゅうに乗り、もって天をぎょす。乾道けんどう変化して、おのおの性命せいめいを正しくし、大和たいわ保合ほごうするは、すなわち利貞なり。しゅとして庶物しょぶつでて、万国ばんこくことごとやすし。


「品物」という言葉を紐解くと、「万物」と同じ意味を持ちながらも、特に生きとし生けるものの個々を指す概念が浮かび上がる。つまり、人間ならばそれぞれの個人を指すのだ。天には雲が巡り、恵みの雨を降らし、地上を潤してあらゆるものを育てる。この天の働きによって、品物は「形を流く」—すなわち、個々のものがその特性を生かして形作られる。

この「形を流く」という表現は、品物が持つ個々の性質や特性が自然と発揮される様子を表している。この働きは遍く広がり、あらゆる存在に及ぶものである。たとえば、人間という品物も、天の働きによってそれぞれが独自の才能や個性を発揮し、人生を形作っていく。まるで雨が大地に降り注ぎ、多様な植物がそれぞれの特性をもって成長するように、天の恩恵は広がり、品物に命を吹き込むのだ。

品物の多様性と個々の持ち味を生かす天の働きは、宇宙の調和を象徴する。すべての品物がそれぞれの特性を発揮し、互いに補完し合いながら存在する。この広大な自然の営みは、品物の成り立ちや生き方を深く理解するための鍵となるだろう。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『乾為天』の彖伝は「天道は万物の始まりと宇宙を司る大いなるエネルギー」と説いています。天の生気が雲を巡らせ、恵みの雨を降らし、万物を育てる。この自然の営みは、私たちの経営にも通じます。企業の成長も、同様に初期のエネルギーとビジョンから始まります。これがなければ、どんなに優れた戦略も実を結びません。

彖伝は続けて、「天の生意は遍く流通し拡散する」と述べています。企業においても、創造的なエネルギーは組織全体に行き渡り、各部門が連携して機能することが重要です。トップダウンの指示だけではなく、現場の声を吸い上げ、全体のエネルギーを高めていく。この循環が、健全な企業の成長を支えます。

天道の「元亨利貞/春夏秋冬」に当たる部分は、企業の成長サイクルと考えられます。春は新しいアイデアが芽吹く時期、夏はその成長が加速する時期、秋は収穫の時期、冬は次のサイクルに備える時期です。これを理解し、各ステージで適切な戦略を立てることが求められます。

彖伝には「六頭の龍(六陽爻)にひかせた車に乗って、天の軌道を自在に走らせる」とあります。リーダーは、この龍を操る車の御者であり、変化する市場や環境の中で企業を正しい方向に導く役割を果たします。特に、変化が激しい現代においては、柔軟性と先見性が求められます。

「生まれながらに持つ天から授けられた『いのちのちから』は各々の本質に従って造られている」との記述は、企業のミッションステートメントに通じます。企業が持つ独自の使命やビジョンは、天から授かったものであり、それを活かし続けることが企業の成長を支えます。

最後に、「特出して優れた『いのちのちから』によって、営み、活かし活かされ、育み育まれことごとく安寧な世になるのである」とあります。優れたリーダーシップによって、組織内の各メンバーがその才能を発揮し、互いに支え合うことで、健全で調和の取れた企業文化が育まれます。

易経の『乾為天』は、経営の核心をついた教えを持っています。天のエネルギーを企業の創造的エネルギーに例え、季節のサイクルを企業の成長サイクルに当てはめることで、自然の摂理と経営の原理が重なることがわかります。これらの教えを心に刻み、リーダーとしての役割を果たし、組織全体を調和と成長へと導いていきましょう。

経営の道は常に変化し続けるものです。しかし、その中で確固たるビジョンと柔軟な対応力を持ち続けることが、成功への鍵となります。皆さんも、この易経の教えを心に刻み、企業をさらなる高みへと導いてください。


参考出典

「品物」とは「万物」と同じであるが、生きとし生けるもの、その一つひとつのものをいう。人間ならば個々人を指す。
天に雲が巡り、恵みの雨を降らし、地上を潤し、あらゆるものを育てる。
その天の働きによって、品物が「形を流く」、すなわち個々のものがそれらしく形成される。
これは個々の性質、持ち味、特性を生かし、力を発揮させるということ。この天の働きは遍く流布するものである。

易経一日一言/竹村亞希子



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