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まいにち易経_0522【患を思う】患を思いて予めこれを防ぐ。[63䷾水火既済:象伝]

象曰。水在火上既濟。君子以思患而豫防之。
象に曰く、水、火(ひ)の上に在るは既済(きせい)なり。君子以て患(かん)を思いて予めこれを防ぐ。

水火既済(すいかきせい)
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

『水火既済』の卦は、成功や達成の時期を象徴しています。具体的には、物事が完全に成し遂げられた状態、つまり「既に済んだ」状態を示しています。皆さんもご存じのように、成功は喜ばしいものです。しかし、この卦は単に成功を祝うだけでなく、成功の後に続く可能性のある困難についても警告しています。

この卦には「水が火の上にある」という象が描かれています。これは、水と火が調和している状態を意味し、物事が完成したことを示しています。しかし、ここで注意すべきことがあります。それは、完成の次には必ず変化が訪れるということです。

例えば、満月は美しいけれど、やがて欠けていきますよね。会社でも、新製品が大ヒットすれば売上が急上昇しますが、いつかは下降線をたどるものです。自分の人生でも同じです。若い頃は精力的に活躍できますが、いずれは衰えが訪れます。

易経の教えでは、成功を達成した時こそ、未来の困難を予測し、前もって対策を講じることが求められます。これを「患いを思い、予め防ぐ」と言います。成功に酔いしれず、次のステップに備えることが賢明なリーダーの姿勢です。

例えば、会社が大きなプロジェクトを成功させたとしましょう。この成功に満足して何も対策を講じなければ、次に訪れる変化に対応できず、急速に失速する可能性があります。だからこそ、成功の直後こそが次の挑戦に備える絶好のタイミングなのです。

また、この卦は水と火が調和している状態を示しています。水と火は、一見対立する要素ですが、実は共存して調和を生み出すことができます。これはリーダーシップにおいても同じことが言えます。異なる意見や価値観を持つ人々をまとめ上げ、チームとして一丸となって進むことが重要です。

例えば、企業の経営において、マーケティング部門と製品開発部門はしばしば対立することがあります。しかし、これらの部門がうまく協力し合えば、素晴らしい成果を生み出すことができます。リーダーは、このような調和を促す役割を担うべきです。

私自身の経験を少しお話ししましょう。あるプロジェクトで大成功を収めた時、私たちのチームは大いに喜びました。しかし、その喜びも束の間、次の挑戦がすぐに迫ってきました。そこで、成功に甘んじることなく、次のステップに向けて綿密な計画を立てることにしました。結果として、その後のプロジェクトでも成功を収めることができました。

この経験から学んだことは、成功の瞬間こそが次の準備を始める絶好の機会であるということです。成功は一時的なものであり、その後に続く変化に対応するためには、常に先を見据えた行動が求められます。

ここで面白い話をひとつ。中国の故事に、「塞翁が馬(さいおうがうま)」という有名な話がありますね。馬が逃げたと思ったら、よその馬が加わって返ってきたり、馬を追って行った息子が財産を得たりと、良いことと悪いことが次々と起こります。つまり、物事の善し悪しは一時の判断ではわからず、長い目で見る必要があるということです。

同様に、ピークの時は短絡的に判断せず、先を見据えた対応が肝心なのです。ピークから次の発展につなげる、そんな備えをしっかりしておくことが重要だと言えるでしょう。

『水火既済』の教えは、成功の後に続く変化を予測し、予め対策を講じることの重要性を説いています。成功は喜ばしいものですが、それに酔いしれることなく、次に訪れる挑戦に備える姿勢が求められます。また、異なる要素が調和することによって、さらなる成功が生まれることも示しています。

皆さんも、これからリーダーとして様々な挑戦に直面することでしょう。その時には、この『水火既済』の教えを思い出し、成功の後に続く変化に備えてください。そして、異なる意見や価値観を尊重し、チーム全体の調和を図ることを心がけてください。これからの皆さんの成功を心から願っています。

(了)


参考出典

水火既済の卦は、事をすでに成した、完成や達成の時を説く。
完成は物事の極点である。満月が欠けるように、完成は必ず欠け、乱れる方向へと向かう。これから力が衰えていくことを認識せず、さらなる成長を遂げようとすれば、気がついた時には急激に失速する。
「患」は悩み・憂い・病気などの患難。ピークを過ぎてもなお持続・保持しようとすれば、前もっての細かいメンテナンス、対策が必要になる。

易経一日一言/竹村亞希子

この卦は水☵と火☲とから成る。水と火は飲食に必須のもの、これがあって調理ということが完成する。そこで既に済ると名付ける。卦の形は水が火の上にかかっている。この水は予じめ容れ物に入れてあるのでなければならない。さもなくば水が煮える前に火の消える思いがある。
君子はこの卦に象どって、事の既に済ったときに、患害の起こることを慮ってこれを予防する。

易(朝日選書)/本田濟

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