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まいにち易経_0526【罪を憎んで人を憎まず】田して三狐を獲、黄矢を得たり。貞しければ吉なり。[40䷧雷水解:九二]

九二。田獲三狐。得黄矢。貞吉。 象曰。九二貞吉。得中道也。
九二は、田(かり)して三狐(さんこ)を獲、黄矢(こうし)を得(う)。貞しければ吉なり。象に曰く、九二の貞吉(ていきつ)なるは、中道(ちゅうどう)を得うればなり。


「田(かり)」は日常で必要な物を作り出す場所。会社では利益を生み出す現場にあたる。田を荒らす悪い狐三匹を捕らえたが、うまく射止めたために矢が手元に戻ってきた。「黄矢(こうし)」とは「黄色の矢」。これは悪人を狩るのに中庸の精神で行ったという意味である。狐は問題の根元である悪人を指すが、これを捕らえて問題を解決するには、「罪を憎んで人を憎まず」の精神で行うことだと教えている。

雷水解(らいすいかい)
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

この卦は、「田」すなわち作物を育て、富を生み出す場所で、三匹の狐を捕らえる様子を描いています。狐とは、組織の中にひそむ小人や悪人のたぐいのことですね。彼らは常に組織を蝕もうとします。
しかし、そうした者を追い払うには、怒りや憎しみに囚われてはいけません。「罪を憎んで人を憎まず」の心構えが大切なのです。冷静さを保ち、中庸の道を外れずにいることが肝心なのです。
例えば、歴史に名を残すリーダーたちを見れば分かります。ガンジーは非暴力の精神で英国の植民地支配から独立を導きました。また、マンデラ氏は人種差別に苦しめられながらも最後まで憎しみに駆られず、寛容な心で和解を呼びかけました。このように、極端に走らず、中道を守ることが成功の鍵なのです。

中庸の精神

「黄矢」とは「黄色の矢」を意味します。これは、悪人を狩るのに中庸の精神で行ったことを象徴しています。中庸とは、偏りなく、常にバランスを保つことです。リーダーとして、極端に走らず、冷静かつ公正に判断することが求められます。たとえば、チーム内での紛争が生じた場合、感情に流されず、全ての意見を公平に聞くことが重要です。中庸の精神を持つことで、真の解決策を見つけることができます。
狐は古代中国では、人を惑わす存在とされていました。これは、現代のビジネスにおける不誠実な競争相手や内部分裂を引き起こす要因と考えることができます。リーダーとしての皆さんには、このような困難に直面したとき、どのように対処するかが問われます。

リーダーシップの実践

雷水解ニ爻の教えを現代のリーダーシップに応用するには、次のようなポイントが挙げられます。

  1. 問題の根本原因を見極める:表面的な問題にとらわれず、根本的な原因を探ることが重要です。問題の真の原因を見つけることで、効果的な解決策を見つけることができます。

  2. 冷静かつ公正に対処する:感情に流されず、中庸の精神で判断することが必要です。全ての関係者の意見を聞き、公平に対応することで、持続可能な解決策を見つけることができます。

  3. チームの信頼を築く:リーダーとしての信頼は、チームの成功に直結します。信頼を築くためには、誠実さと一貫性が求められます。


新人向けのセミナーが終わったあと、昼食をはさんで、
組織幹部・経営陣を集めて特別講義が行われた……

本日は易経の古典『雷水解』からの教訓を、企業経営の視点からお話しさせていただきます。

さて、『雷水解』には「田して三狐を獲る」と記されています。これは組織の健全性を維持するための警句であり、経営者として肝に銘じるべき教えでもあります。

三狐とは、組織の中に潜む忌々しき小人、すなわち媚び諂う臣下たちのことを指します。彼らは狐のごとく陰険な性質を持ち、上司を惑わし、甘言を垂れて取り入ろうとします。こうした小人が組織内に蔓延れば、上層部の明徳は欺かれ、やがて組織は内憂外患に見舞われるでしょう。

組織が危機に陥る最大の原因は、こうした佞人(ねいじん)が重用されることにあります。讒言や媚びに惑わされ、小人を重んじれば、国家といえども必ず大きな災いに見舞われます。従って、難局を解く第一歩は、こうした小人を排除し、組織を浄化することにあります。

とはいえ、小人を識別し退けるのは容易ではありません。『解』の教えでは、九二(きゅうじ)に象徴される賢明な大臣の存在が強調されています。九二は中正の徳を備え、忠直不抜の精神を持つ者です。彼は剛健でありながら柔順でもあり、単なる強硬さではなく、陰陽の調和を保つことができるのです。

このような忠実な大臣がいれば、君主も信頼を寄せ、小人を遠ざける機会が生まれるでしょう。しかし、その前提として大臣自身の貞正さが求められます。九二は六三(りくさん)の小人の中にありながらも、忠直を貫き、決して佞諜に惑わされることがありません。この振る舞いが君主から信頼を勝ち得、ついには小人を排除し、国を正すことができる所以なのです。

要するに、組織の健全性を維持するには、経営トップと賢明な補佐役の緊密な連携が欠かせません。トップは賢人を重んじ、その忠告を謹んで聞き入れなければなりません。同時に、補佐役は媚びへつらうことなく、強く正しい言行を貫かねばなりません。この二者の協調なくしては、邪なる小人を払拭し、組織を正すことは叶いません。

経営は陰陽の調和を求めるもので、単に剛胆さや強硬さを振りかざすだけでは上手くいきません。時に強く、時に柔らかく、中道を行くことが何より大切なのです。九二がそうであったように、正しさを貫きつつ柔軟に対応できる資質が、真の経営者に求められるものなのです。

話が少し散漫になりましたが、要は組織の健全性を守るための三つの戒めです。

  • 一つ目は、小人を見逃さず、組織から排除することです。

  • 二つ目は、忠実な補佐役を重んじ、その声に耳を傾けることです。

  • 三つ目は、強さと柔らかさのバランスを失わず、状況に応じて対応することです。

この三つさえ心得ておけば、危険な災いは必ず避けられるはずです。決して小人に惑わされることなく、中正の道を貫いていってください。時に厳しく、時に優しく、しかし常に正しい判断を下し続けることが、真の経営者の在り方なのです。


参考出典

「田(かり)」は日常で必要な物を作り出す場所。会社では利益を生み出す現場にあたる。田を荒らす悪い狐三匹を捕らえたが、うまく射止めたために矢が手元に戻ってきた。「黄矢(こうし)」とは「黄色の矢」。
これは悪人を狩るのに中庸の精神で行ったという意味である。狐は問題の根元である悪人を指すが、これを捕らえて問題を解決するには、「罪を憎んで人を憎まず」の精神で行うことだと教えている。

易経一日一言/竹村亞希子

『田』は田猟(でんりょう)のことで、狩猟。内卦と二三四爻の坎(☵)離(☲)を弓矢とする。離は網と見て猟の象がある。坎を穴とし隠伏とし奸智とし、これを狐とする。また、この六二は、三陰の坤の中央に一陽の正直を貫いたものなので、これを三狐とし、黄矢としたのである。
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黄矢は黄金の鏃をつけた矢。朱子は、この爻辞の象徴の意味がわからない、狩を占った場合の吉をいうのであろうといい、或る人の説を紹介する。
狐は邪(よこ)しまで人を惑わす動物。小人の象徴。
三匹の狐というのは、この卦に四つの陰爻があるが、六五の君を除く三陰爻を指す。(九二は剛毅(陽爻)で中道(内卦の中)をふみ、六五の君に信用されている(六五と九二は応)。邪しまで君を惑わそうとする小人どもを退治することができる。田して三狐を獲とはそのことを指す。
黄矢を得、狐を射て逃がしたら黄金の矢を失うけれど、狐を射留めれば、矢も手に入る。
黄は地の色、地は五行(木火土金水)で中央に当たる。矢は真っ直ぐなもの。黄矢を得とは、小人を追い払うことで、中庸で真っ直ぐな道を行ないうること。占ってこの爻を得た場合、悪人を退治して、正義を行なうことができよう。貞しい道を固守すれば吉。

易(朝日選書)/本田濟

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