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【夢日記】殺人の容疑から逃れるために高飛び目的で転校したのだが時すでに遅しだった

こんな夢を見た。

僕は転校生として見知らぬ土地のとある高校にやって来た。それにもかかわらず旧来の知り合いが3人居た。その知り合いはI.M(今も仲が良い地元の友達①)O.T(今も仲が良い地元の友達②)とI.R(幼保〜小中高とずっと一緒で“腐れ縁”みたいな仲だった友達)。特に、I.Mとは連絡を頻繁に取り合っていた。3人の中で一番仲が良かったようだ。

転校前。I.Mに二人の近況を聞いた。O.Tはマイペースな気質であまり他の人とつるむタイプではなく、I.M自身、どこで何をやっているか把握していないが、話す時は話すし、特段、仲が悪いとか、距離を感じるとか、そういうのでは、ないらしい。歯切れ自体は良くなかったが、事実、そんな風に見えた。ソコに嘘はなさそうだった。そしてまた、僕が抱いていた彼の印象も、I.Mとそう変わらなかった。だから、スンナリと受け入れられた。「まぁアイツはそういうヤツだよな」と思えたのだ。

I.Rはなんとクラスの生徒役員を務めているらしい。僕に言わせれば「えっ!?」と聞き返したくなる。なぜなら彼はそんなタイプではなかったから。一言でいえば引っ込み思案。顔だけ見ればイケイケのシティボーイでもおかしくないのに、中身は、ソレとは真逆だった。だから仲良くなれた面も多分にある。それが、学校の中枢を担うような役職に就くだとか、組織の中でみんなを引っ張るリーダーシップを発揮したりだとか、そういうタイプでは無かったのだ。このギャップは、少なくとも僕にとっては「良いギャップ」だったのだが、そうなってしまうと、いよいよ絡みづらくなるな、と、僕は半ば、危惧していた。

転校初日。普通に学校に入り、普通に席を座る流れ。周りの生徒は、歓迎ムードではないが、まあ普通な感じだ。特に違和感はない。僕ははなからチヤホヤされるような期待も抱いていなかったので、極めてドライに、且つ、極めて平常心で、指定された席に着いた。

僕はまずI.Rのことを見た。教室の前のドアから一番近いところに座っている。入室した瞬間、存在に気付くことが出来たのもあっただろう。「人間、しばらく会ってないと変わるもんだなぁ」と、感慨深げに眺めてみたが、相変わらず、どこかオドオドしているように見えるのは、変わらなかった。ソレが、以前仲良くしていた、過去の記憶に引っ張られて、そんな風に見えたのかは、良く分からない。それでも、なんと無く、ではあるけれど、クラスのリーダー的存在の立ち居振る舞いをしているようにも思えた。例えば「このクラスは誰がまとめてると思いますか?」と質問されたら「うーん、まぁこの子じゃない?」と、I.Rのことを指差す、そんなオーラは感じられた。ソレが、I.Mから近況を聞いたからなのか、何の前情報もないまま全体の生徒を見ても同じことを感じられたのかは、分からないけれど。

そうこうしていると、1時間目の授業が始まった。先生はMEGUMI(有名人のMEGUMIそのまんま)。理科の教師だった。「起立・礼・着席」の、“いつもの儀式”を執り行ったと思いきや、やり直しを食らった。「普段と比べて覇気がないじゃないか」と怒られたのだ。いつものようにちゃんとやりなさいと言われても、その「いつも」が僕には分からない。自分の感覚では「まあ普通にこんなもんだと思うけどな」と感じたのだが。やり直したことで、無駄に大きな声を出してる人、ヤケになって叫んでる人も若干名居たが、事なきを得た。果たして何を期待してやり直させたのか・・・?

謎の挨拶やり直し事件はあったものの、授業自体はすんなりと終わった。2時間目の授業は国語。先生はF(中学時代の国語教師)。1時間目のMEGUMIにいきなり怒鳴りつけられた時は面食らったものだが、Fは、特に何もないまま、授業が始まり、授業が終わって行った。

ちなみに「起立・礼・着席」の儀式は、MEGUMIにやり直された時ぐらいの声量で行われていた。その光景を見て、僕は心の中で「やっぱり人を見てんだよな」と呟いたのは良く覚えている。自分もおんなじ子どもであるはずなのだが「子どもは大人である教師の行動を意識的であれ無意識的であれ注意深く観察しているものだ」と、どこか達観したような心持ちになっていたのも、良く覚えている。

3時間目の授業はHR(ホームルーム)。どうやら初日の今日は午前中で下校する3時間授業らしい。授業前、明らかにクラスの雰囲気がソワソワするのが分かったので「突然どうしたんだ?」とI.Mに尋ねたら、そう言っていた。なるほどなと合点が行った。

授業が始まった。チャイムがなるやいなや「ガラッ!」と、勢いよくドアが開いて「ビクッ!」となったのを覚えている。そのままの流れで視線を向けると、ガタイの良い男教師(誰だったかは分からない)が、教壇に立っていた。1時間目と2時間目は女の先生だったこともあり、最初見た時、どこか気圧(けお)されるような気持ちにもなったが、威圧的な感じはなかったし、先生と生徒の信頼関係も築かれているのが、周囲の空気感からも窺い知ることが出来た。直感的に「この人、良い教師なんだろうな」と思えた。「良さげなクラスに転校出来て良かったな」とも思えた。なぜなら生徒は先生を選べないから。逆も然りで、先生が生徒を選ぶことも出来ないのだけれど。

授業はスムーズに始まり、スムーズに終わった。僕は「先生が変われば生徒はこんなに変わるものなのか」と感心させられるぐらい、規律正しく、キビキビと授業内容が進行して行くさまを、ぼうっと眺めていた。自分の直感は正しかったようだ。ちょっとガヤガヤして来たと思ったら「よし、一回集中しなおそうか」と、一声掛けるだけで、クラスの雰囲気はビシッとなる。

指導が一発で通るのは、良好な人間関係が構築されているか、明らかに怖そうな教師が“恐怖”という名の指導で押さえつけているか、この二つに絞られる。この場合、迷わず前者だと言い切れる。なぜなら、前述したように、クラスの雰囲気が良いからだ。僕は改めて「良い先生なんだなぁ」と思えた。正直、斜に構えて、時には、どこか見下すようなテイで教師の立ち居振る舞いを観察するきらいのある僕にとっても、尊敬の念を抱くに値する先生だなと、ホームルームを円滑に進める姿を見て、感じ入ることが出来たぐらいだ。

授業が終わって、下校する流れになった。クラスメイト達は慣れた手つきで帰り支度を済ませているが、僕は、まだ慣れていないのもあり、見よう見まね、といった感じで、そそくさと、準備を済ませた。一人だけ支度が遅れて置いてけぼりを食らいたくなかったのもあり、内心では結構慌てていた。無論、目に見える外見の部分においては、なるべく焦っている感じを出さないように努めていたのだけれど。

そうしていると、3時間目にHRを行なったガタイの良い男教師・・・だと長ったらしくなるので、便宜上、ここからは「担任の先生」と呼ぶことにしよう。

突然、担任の先生から「おい、ちょっと」と呼び止められた。僕が近付くと、深刻そうな表情を浮かべながら「これ、心当たり、あるのか?」と言いながら、一枚のプリントを手渡して来た。僕はその紙に目を落とした。すると、こんなことが書かれていたのだ。

「連続殺人事件に○○(僕の名前)は絶対加担してるよな」
「アイツは明らかに怪しい。そう言えば前にこんなことが」

・・・。

一枚のプリントがビッシリ埋まるぐらいに「アイツは殺人犯だ」という攻撃的な文章が記載されていた。僕は全く身に覚えがなかったのだが、あまりにも断定的な口調で書き記された文章の数々に圧倒されてしまい、ツバを飲み込むことも忘れ、ヨダレが一滴、プリントに落ちたことではじめて、我にかえることが出来た。それぐらい狼狽していた。

「い、いや、身に覚えないです、こんなの」

自分で言うのもなんだが、言葉とは裏腹に「身に覚えしかない。まさかネットでこんなに騒ぎ立てられているとは。高飛びしても意味がないということか」などと、白状しているようなものだった。そんな声色だった。そんなどもり方だった。もしも逆の立場だったら、何にも疑うことなく「あぁ、やっぱり“クロ”なのか」と思ったことだろう。

しかし、本当に身に覚えが無かったのだ。全くが事態が飲み込めなかったとしても、いや、全く事態が飲み込めないからこそ、と言った方が正しいのかもしれないが、自分の名前がビッシリと書かれていて、尚且つ、どの内容も、誹謗中傷であった場合、狼狽しない人間は居ないんじゃないか。そう釈明したい気持ちにも駆り立てられたが、そんなことをすると、ますます怪しまれるだけだろう、と思い直し、狼狽したまま、僕は、突っ立っていた。

担任の先生は「そうか・・・」「なら、別にいいんだ」と、穏やかに呟いた後、プリントをクシャッと丸めて、ゴミ箱に放り込んだ。そして、声を掛けられた以前と以後とで、ほとんど変わりない様子で「じゃあ、また明日、元気で来いよ」と言ってくれた。僕は器の大きさを改めて感じながらも、そんな気持ちを告げることはなく「さようなら」と、そっけなく言って、教室を後にした。

学校から自宅までの帰り道にはバスを使っていた。乗車待ちの列に並ぶと同じ制服を着た生徒がかなり居た。その中には同じクラスメイトと思われる顔も数人居た。とはいえ、前述した3人以外の生徒とは、特に接触することもなかったので、雑談に興じることもなかった。僕は、辺りを一通り見渡した後、耳栓を耳の穴に入れた。周囲の音が耳障りだと感じたからだ。

別になにも、前述したようなことが気に掛かって「僕のことを犯罪者呼ばわりしているのではないか・・・」などと疑心暗鬼になって、耳を塞ぎたい衝動に駆られて、耳栓をしたわけではない。ただただ耳障りだなと感じたから、僕は耳栓をしたのだ、と、自分自身でも思っているのだけれども、もしかすると、心のどこかでは、そんな焦燥感に似た感情に支配されている面もあるのだろうか、などと、懐疑の念を抱きながらも、僕は、耳栓をして、外界の音を遮断したのだった。

すると、いくぶん、心が楽になったような気がした。「やっぱり気にしてる部分もあるんだろうな」と、焦燥感に駆られる自分を受け入れながらも、でもやはり、全く身に覚えが無いことなのだから、わざわざ憂慮する必要もないだろう、と、思い直しつつ、僕は、バスに乗り込んだ。

車内での時間は何事もなく過ぎて行った。「次は○○駅〜」というアナウンスが鳴って「お、ココで降りるのか」と思った僕は「降ります」と書かれたボタンを押した。

その時だった。

“アウト”

耳元でそう囁かれた気がして、僕は、慄然とした。

いや、厳密に言えば、違う。なぜなら僕は耳栓をしていたから。耳元で囁かれた、というよりも、現実には有り得ないのだけれど、耳の中から囁かれた、そんな聞こえ方をしたのだ。言うなれば、僕にしか聞こえないように、僕にしか聞き取れないような声色で、と形容した方が、正しいのかもしれない。

僕は良からぬことが起きる予感に苛まれながら辺りを見回した。しかし、車内の感じは何にも変わっていなかった。僕の異変を察知したような乗客も居なければ、不審げに僕を見つめてくる人も居なかった。それこそ「お前は人殺しだ!」と言うような目つきで睨んでくるような人は、どこにも居なかった。ただただ、一人、慌てふためいているだけだった。そんな状況を俯瞰した僕は、「何を一人で取り乱しているのか・・・」と、スッと落ち着くことが出来た。いや、「落ち着く」とは言っても「変に」という枕詞を置いた方が正しいのかもしれないが。まぁとりあえず、深呼吸をして、平静を取り戻すことは出来た。

やがて、降車ボタンを押した停留所にバスが停まったので、僕は、これまた、そそくさ、といった感じで、車内から降りていった。この際にも「突然、ガッと腕を掴まれたりしないだろうか・・・」など、周囲の人を訝しげに見ながら、ではあったのだが、やはり何も変わりなく、ただ単に、バスから降りるヤツが居るな、という風に、体を避けて、人がひとり通れるだけのスペースを設けてくれて、僕は、バスから降りることが出来たのだった。

外の空気を吸うことで、車内に居るよりも、落ち着きを感じられた心持ちになれた、のではあるけれど、それと同時に、僕と同じ停留所で降りた、同じ制服を着ている人、つまり、同じ学校に通っていると思われる数人の存在が、余計に気に掛かった、のもまた、事実だった。

僕は、先ほど、バスから降りる際に「いきなり腕を掴んで来ないだろうか・・・」などと、周囲の動きに目を光らせていた時よりも、更に強く、恐怖の念に駆られていた。「もしかしたらいきなりナイフで刺してくるかもしれない・・・」などと、変に身構えてしまうのだった。しかし、やっぱり何にも変わりなく、ただ普通に、各々、帰る方向へと歩いていった。あっという間に僕は一人になっていた。誰も僕に干渉することはなかったのだ。

ここではじめて、ようやく、と言った方が正しいだろうか、疑心暗鬼の状態が続いて、居ても立っても居られない、という精神状況になっている自分を、少しずつ、客観視することが出来始めた。そう。周りは何にもおかしくない。自分だけがおかしくなっているのだ。そう。担任の先生に、一枚のプリントを見させられた時から、僕は、おかしくなっている。「○○かもしれない」の「○○」が、超極端、といっても差し支えないレベルで、自分に災難が降りかかるんじゃないか、と、ヤケに、心配し続けているのだ。

こんなことをやっていては、いくら命があっても足りない。そう自らに言い聞かせようとした。

「気にするな。確かにこの世は『通り魔事件』みたいな物騒なコトも起きたりする。だが、その時はその時だろう。そんな心配をずうっとしていると、外に出ることすらままならなくなる。全く身に覚えがない誹謗中傷であるならば、全く気にしなければいいだけじゃないか。簡単な話だろう?」

そんなことを自らに問い掛けてみたのだが、やはり、気になるものは気になるらしい。確かに、なんだか言葉遊びのようではあるのだけども「気にするな」と思えば思うほど「気になる」ものだ。それが人間というものだ。そんな観念を暗に悟った僕は、誰に言うでもなく、ポツリと呟いたのだった。

「常に死と隣り合わせの状況に身を置いて生きるぐらいならば、いっそのこと、自らの手で、命を絶った方が、幸せなんじゃないのか・・・?」

そうは言ってみるものの、到底、自らを死に至らしめる行動を取る勇気も無く、かといって、現在進行形で、夥しい量の誹謗中傷の書き込みが行われているであろうネットの声を、華麗にスルーする胆力も無く、僕は、茫然自失といったテイで、トボトボと、家路についたのだった。

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