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英語を勉強したら目は青くなるか:私たちの英語学習のゴール再考

「英語を勉強したら目は青くなるか?」

大学の教授に言われてハッとしました。

私は中学生や高校生の時、英語を勉強すれば
いつかアメリカ人のようになれると信じていました。

バック・トゥ・ザ・フューチャーに出てくる
マーティーのようになれると思っていました。

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しかし、そのゴールを強く持ち続けるほど、
がっかりする機会が多かったのを覚えています。

アメリカ留学のためにTOEFLの点数が必要で、
時給800円で稼いだ15万円以上のアルバイト代が
TOEFLに消えて行きました。

初めてシカゴのオヘア空港のマクドナルドで、
「ダブルチーズバーガー」

と最高にカッコよく言ったつもりでしたが、
店員に少々にらんだ感じで
「HUH?」
と大きな声で何度も聞かれました。

アメリカでバスケをやろうと友人を誘った時も、
PlayとPrayの発音の区別ができなくて、
英語しか話せないアメリカ人にニヤニヤされて、
「ボールに祈るのか」と指摘されました。

自分の英作文はアメリカ人の先生に理解されず、
真っ赤っかに訂正されました。

道端を走っていたら、
「Hey!! カンフー!」と大きな声で呼ばれ、
アフリカ系アメリカ人の人にニヤニヤされました。

数を数えればきりがありません。

そういう経験をする度に、考える事はいつも同じでした。

私はいったい何に向かって英語を勉強し、どうなる事が目標なのだろうか。

そして、私たちはネイティブと言われるアメリカ人のようになれるだろうか、なりたいのだろうか、そして、なる必要があるのか。

英語の学習者、使用者、教育者として関わってきて、
英語で論文を書いたり、英語で妻と会話をして、
海外生活も合計で9年ほどになります。

今のところ、私の目の色は変わっていません。

英語には色んな思いがあります。
英語を見たくもない瞬間を何度も経験しました。

新しい日常で、英語を再開した人もいると思うので、
そんな人たちが諦めずに英語を続けられるように、
勝手に私が考えていることを書いてみます。

気がついたら文字数が3500字を超えましたが、何かお役に立てば幸いです。

1. 私たちが到達可能な姿とは

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英語学習をしていく上で、私たちの到達可能な姿について考えてみました。

英語話者の分類については、以下ではないでしょうか。

①日本語が話せない、英語はネイティブ

②日本語は会話程度くらい、英語はネイティブ

③日本語はネイティブ、英語は日本的な特徴はあるが表現したい事は言える

④日本語はネイティブ、英語も専門的な分野についても表現できる

①は今からなろうと思っても不可能かと思います。

②はこれからどこか英語を使わなければいけない場所に住んで、日本語を忘れるくらい長い期間生活する予定があれば可能かもしれません。おそらく、このnoteを読めている人は②は難しいと思います。

よって残されるのは③と④です。
この二つは繋がっていると思います。

2003年から「英語が使える日本人」の育成と言われ、
日本の高校生に向けた目標と言われてきました。

私たちが可能なのは「日本語ができる英語話者」で、
バイリンガルのような気がします。

日本語や日本の文化を完全に忘れて英語話者になることは、想定されていないと思います。

アメリカ人のようになる事を目指したい人は、
そのまま続けられかもしれません。

そうでない人は、日本のことや自分のことを、
日本語的な色のある英語であったとしても、
自信を持って他の国の人たちに伝えようとする
姿勢、
これこそが必要になのかもしれません。

私の場合は、いろんな悔しい経験の後に、

「アメリカ人になれないし、なる必要はない。」

「日本人として英語を話して何が悪い。」

と思った日から、コミュニケーションの失敗を恐れず、
堂々と英語を使うようになった気がします。

ゴールを「intelligibility (通じる)」に置く
ということです。

いろんな国からアメリカに来ていた留学生たちが、
彼らの英語も決して完璧ではないけれども、
一生懸命自分の事を伝えようとしている姿を見て
学ぶことができました。

2. 猫舌のグローバル化

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アメリカの日本食レストランで食事をした時のことです。

味噌汁がとてつもなく熱かったので、
自分は「猫舌」だと、ヨーロッパからの留学生に
英語で説明してみました。

それ以来熱い物を食べると、

"You have a cat’s tongue!"

とみんなが連発するようになりました。

そもそも "cat's tongue" は英語表現としてはないと思うので、ネイティブが話すかどうかで判断すると、これを間違いだと判断するかもしれません。

しかし、これを共有することで、
日本の文化を伝えることができました。

さらに、マンガ文化について私が話し始めると、
ここぞとばかりに、興奮した外国人が話し始め、
「One Pieceを知っているか?最高だ!」
など、私の想像を遥かに超えた興奮度だったのを
今でも覚えています。

3. 英語をネイティブの所有物と考えない

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最近の研究ではバイリンガルやマルチリンガルのあり方について、様々な主張がされています。

英語学習者の英語を、英語しか話せないアメリカ人やイギリス人の英語能力と比較する必要はないし、文化的要素も踏まえてそのような英語を身につける事を目指すのは現実的ではない (Kirkpatrick, 2011)
バイリンガルやマルチリンガルは一つ以上の言語、文化を体験するため、視野が広く、言語や文化における寛容性があり、一つしか言語を話せない人よりも利点が多い (Baker, 2010)

長い間、英語はネイティブの持ち物だと考えられ、
最先端の英米文化を取り入れる手段として
見られてきたかもしれません。

しかし、今は英語という言語は、ネイティブの数よりもノンネイティブの数の方が圧倒的に多いという歴史上他にはない言語になっています。
(e.g. Honna et al. (2012))

英語はアメリカのことを学ぶための言語ではない、
ということでしょう。

最近は、ネイティブ側がノンネイティブと会話をするために各国の特徴を勉強しなければいけないとも聞きます。

私はEnglish is Ours! (英語は私たちのもの)と名付けて、マガジンを作っています。

もともと教師時代に書いていたWeeklyの英語通信も含め、いろいろと書いています。

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最後に

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

英語の必要性は増えているかと思います。

コロナ渦で海外に行けないからこそ、インターネットでの情報収集やビデオ会議、ビジネスチャンスを含め身につけていきたいスキルかもしれません。

最後に英語学習に悩む方へ、私が勝手に思っていることを、共有させていただきます。

✔ ネイティブに劣等感を感じない
✔ ゴールを「通じる、伝える」に置く
✔ 海外の人に伝えようという積極的な姿勢を持つ
✔ TOEIC/TOEFLはあくまで定規
✔ 完璧はない
✔ 間違えて当たり前
✔ 情報収集やインプット、プロセスを楽しむ
✔ オープンなマインドで単語量は増やし続ける

✔ どんどん書いて、どんどん話す

ネイティブと自分を比較せず、現実的なゴールを置けば、学習プロセスでがっかりすることが減るのではないでしょうか。

三日坊主でもいい
三日坊主も、二回目を始めれば
続けていることになるから

何かの励みになれば幸いです。

今日も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

下のボタンを押していただくと、私の好きな言葉が出てきます。

【参考文献】
Baker, C. (2004). Foundations of Bilingualism and Bilingual Education. Clevedon: Multilingual Matters.

Honna, N., Takeshita, Y., & D’ Angelo, J. (2012). Understanding English across cultures. Tokyo: Kinseido Press.

Kirkpatrick, A. (2011). English as an Asian lingua franca and the multilingual model of ELT. Language Teaching,44(2), 212-224.

Takagishi, R. (2012). Non-native English teachers’ views towards pedagogic goals and models of pronunciation. Asian Englishes, 15(2). 108-135.

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