マガジンのカバー画像

〈短編小説〉あれからの話だけど

18
SHE IS SUMMER『あれからの話だけど』からインスパイヤを受けた小説です。SISの卒制参加作品。2021年2月公開の本編と、2021年12月公開のスピンオフ”Bonus … もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

あれからの話だけど / SISの卒制・短編小説

「これ以上物語を増やせば誰にも追い越せなくなるよ」  いま思えばあれは彼なりの告白の言葉…

Y
3年前
3

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第1話

 夜、眠る時に小さな明かりを一つ灯すのは子どもの頃からの癖で、それをやめたのはその明かり…

Y
2年前
3

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第2話

 二週間に一度来る金澤さんは不定休で紙素材の雑貨を売る仕事をしていて、時々彼氏の愚痴を話…

Y
2年前
3

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第3話

 佐倉真琴は最初こそ僕のことを「花村さん」と呼んでいたが、呼び慣れない名前がくすぐったく…

Y
2年前
2

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第4話

 村上優美は僕が働く本屋から二駅ほど離れたところにあるカフェの店長であり僕の交際相手だっ…

Y
2年前
2

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第5話

 本屋のレジに立っていると二週間ぶりに金澤さんが来た。本を持たずにずんずんと僕に向かって…

Y
2年前
1

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第6話

 優美と夕食を一緒に食べようという話になり、なにが食べたいか定まらないままファミレスになだれ込んでいた。ファミレスならなんでもあるよね、と安易に入った店はかなり混んでいて、でも既に入り口を通ってしまった手前、もう後戻りはできなかった。  呼び出しボタンを押しても店員は中々注文を取りに来なかった。頼むつもりのないデザートのメニューを眺めているとようやく店員が席にやって来たが、新人なのか注文がスムーズに通らない。ざわつく店内で声が聞き取りづらいのか、二、三度メニューを繰り返すと

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第7話

「まこちゃん、今日空いてる? ドライブ行こうよ」  佐倉真琴のことをいつの間にか僕はまこ…

Y
2年前
1

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第8話

 優美とは連絡が取れないでいたが、ほとんど毎日のように本屋へ来るまこちゃんと本屋で話をし…

Y
2年前
3

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第9話

 佐倉真琴はまたいつものように本屋に来た。彼女はここへ僕に会いに来る。そう分かっていたか…

Y
2年前
1

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第10話

 夕方、本屋に戻って佐倉真琴と別れると店長に言って早めに仕事を上げてもらった。優美に会う…

Y
2年前
1

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第11話

 就職活動をひとつもしないまま雇ってくれた本屋の仕事を急に辞めるのも申し訳なかったので本…

Y
2年前
1

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第12話

 今度海に行こう、と優美に誘われるままに頷いて、カフェの休みに合わせて海へ行くことになっ…

Y
2年前
1

〈短編小説〉あれからの話だけど Bonus track 第13話

 田舎の春の海は人の気配がほとんどなかった。レンタカーを借り、僕の運転で優美の地元まで来た。車を浜辺近くの駐車場に車を止める。 「本当になにもないでしょ」  夏になれば海水浴場として人が集まりそうな気はしたが、近くにコンビニもなく飲み物の自動販売機が二台あるばかりで、その自動販売機も売り切れが目立ち、横に置いてあるゴミ箱は空の缶やペットボトルで溢れ返っていた。あまり入りたいと思えないトイレらしき建物が妙にカラフルなのと、体を洗うための水しか出ないシャワーがかろうじて夏の海