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「ソロの細道」47都道府県エッセイ

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2021年年末にかけての50日間チャレンジ。全国を旅した思い出をエッセイに。47都道府県の紀行文を連載します。
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#50日間連続チャレンジ

「天下一の桜と伊那ローメン」”ソロの細道”Vol.20「長野」~47都道府県一人旅エッセイ~

「天下一の桜と伊那ローメン」”ソロの細道”Vol.20「長野」~47都道府県一人旅エッセイ~

日本人にとって”桜”は最も愛されている花ではないだろうか。

毎年日本全国で花見が楽しまれていて、多くの人で賑わっている。

そして全国の「名所」と呼ばれる場所には、各地から見物客が押し寄せ、桜を見に来ているのだか、人込みを見に来ているのかわからない、という声も聞こえたほど。

特にコロナ前まではインバウンド客も多く、大変な混雑になっていたという。

そんな桜は「春の到来」とセットで語られることが

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「栄枯盛衰、武田の栄光」”ソロの細道”Vol.19「山梨」~47都道府県一人旅エッセイ~

「栄枯盛衰、武田の栄光」”ソロの細道”Vol.19「山梨」~47都道府県一人旅エッセイ~

思い返せば、山梨は何かと縁のある場所だった。

大学のゼミの合宿では山中湖や河口湖でやることが多かったし、大学時代の彼女が山梨出身だったこともあって、彼女の実家に泊まらせてもらいつつ、八ヶ岳や清里、昇仙峡や勝沼などにも連れて行ってもらった。

新宿から高速バスに乗れば結構近い、ということを知ったことも大きかったかもしれない。

そんなこともあって私にとっては身近な存在だった山梨だが、一人旅で訪れた

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「能登の雪道ドライブ」”ソロの細道”Vol.17「石川」~47都道府県一人旅エッセイ~

「能登の雪道ドライブ」”ソロの細道”Vol.17「石川」~47都道府県一人旅エッセイ~

沖縄で生まれ育った私であるが、実は意外と北陸には思い入れがある。

というのも、小学校の時に家族で沖縄以外に出掛けた唯一の旅行で訪れたのが、当時福井に住んでいた叔父家族に会いに行った旅行であり、その時に福井と石川で見た大雪というのが、私が物心をついて初めて触れた雪だった。

駅まで迎えに来てくれた叔父の車に乗り、窓から眺める一面の雪景色がとても幻想的に見えたのを、30年経った今でも朧気ではあるが覚

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「秘湯と足湯とブルーシール」”ソロの細道”Vol.16「富山」~47都道府県一人旅エッセイ~

「秘湯と足湯とブルーシール」”ソロの細道”Vol.16「富山」~47都道府県一人旅エッセイ~

私にとって富山県は、47都道府県のうちで最後まで残った未踏の地だった。

そんな富山を初めて訪れ、47都道府県制覇を成し遂げたのはちょうど3年前の年末年始。

新潟から日本海側を西に進み、遂に富山へと到達したのだった。

その時は富山市を散策して「世界で一番きれいなスターバックス」などを見たり、富山ブラックを食べたり、氷見に移動して氷見グルメや藤子不二雄A先生の生家を堪能したり、最後は高岡に移動し

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「酒とグルメとお寺と神社」”ソロの細道”Vol.15「新潟」~47都道府県一人旅エッセイ~

「酒とグルメとお寺と神社」”ソロの細道”Vol.15「新潟」~47都道府県一人旅エッセイ~

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。

あまりにも有名すぎるこの書き出しで始まる小説と言えば、川端康成の「雪国」。学生の頃に誰もが一度でも目にしたのではないだろうか。

私が大学の文学部で専攻していたのは近現代日本文学であり、そういった意味ではこの「雪国」という小説は、メジャーすぎる研究対象とも言えたかもしれない。

残念ながら私自身が選ぶことは

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「浦賀・横須賀・大磯と明治の日本」”ソロの細道”Vol.14「神奈川」~47都道府県一人旅エッセイ~

「浦賀・横須賀・大磯と明治の日本」”ソロの細道”Vol.14「神奈川」~47都道府県一人旅エッセイ~

泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四はいで夜も寝られず

江戸時代末期に神奈川の浦賀に黒船が来航したときに、幕府の混乱ぶりを表す”狂歌”として詠まれていたこの歌を、教科書で見て覚えている人も居るだろうか。

実はこの歌、2000年あたりから教科書から削除されていたので、今の若い学生たちは見覚えが無いかもしれない。

なぜ消されていたかというと、この狂歌が示されていた史料が明治時代のものしかなく、「後

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「楽し都、恋の都、夢のパラダイス」”ソロの細道”Vol.13「東京」~47都道府県一人旅エッセイ~

「楽し都、恋の都、夢のパラダイス」”ソロの細道”Vol.13「東京」~47都道府県一人旅エッセイ~

沖縄人の私が初めて東京の地を訪れたのは、おそらく小学校の高学年の頃だっただろうか。

母親が東京の学会に出席するということで、ちょうど夏休みか何かだった私も付いて行って、母親が仕事の間に自由行動をさせてもらっていた。

今考えると、まだだいぶおおらかな時代とは言え、良く一人での行動を許してもらったものだが、「かわいい子には旅をさせよ」を地で行っていたのかもしれない。(かわいいかどうかは置いておいて

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「Bousou Friend」”ソロの細道”Vol.12「千葉」~47都道府県一人旅エッセイ~

「Bousou Friend」”ソロの細道”Vol.12「千葉」~47都道府県一人旅エッセイ~

2000年に沖縄から出てきた私が最初に住んだ場所が、千葉県の柏市だった。

当時は正直柏という街がどういう場所なのか全く分からず、「千葉の渋谷」というその時に言われていた謎のフレーズだけが独り歩きし、「チーマーだらけの街だったら嫌だなあ」くらいの感想を抱いたものだった。

実際に住んでみると、確かに繁華街ではチーマーのような存在はちらほら見かけたものの、そこまで治安が悪いという印象も無く、また柏駅

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「”あの花”で見た街の名前を僕はまだ知らない。」”ソロの細道”Vol.11「埼玉」~47都道府県一人旅エッセイ~

「”あの花”で見た街の名前を僕はまだ知らない。」”ソロの細道”Vol.11「埼玉」~47都道府県一人旅エッセイ~

「聖地巡礼」。

アニメや漫画などの舞台を巡る、映画の「ロケ地巡り」のことを指す言葉は、今や一般的な言葉になっている。

アニメ聖地巡礼発祥の地として長野県の田切駅に石碑がある。この石碑によると、1991年にゆうきまさみ「究極超人あ~る」のファンが、この田切駅を訪れたのが最初ということらしい。

そんな聖地巡礼だが、個人的にはそこまで夢中になることはこれまでなくて、もちろん旅の計画の中で近くに立ち

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「グンマー帝国はグルメ王国」”ソロの細道”Vol.10「群馬」~47都道府県一人旅エッセイ~

「グンマー帝国はグルメ王国」”ソロの細道”Vol.10「群馬」~47都道府県一人旅エッセイ~

群馬がネット上で「グンマー帝国」だったり「未開の地グンマー」などと言われるようになったのは果たしていつからだっただろうか。

記憶を紐解けば、2ちゃんねるのスレッドに投稿された文章からだった気がする。

警察官から職質を受けたという日本人離れした風貌を持つ人が、出身を聞かれて「群馬」と答えたところ「ミャンマー」と聞き間違えられた話というところから「グンマー」と呼ぶようになった。

そこからネット上

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「餃子とビールは地球を救う」”ソロの細道”Vol.9「栃木」~47都道府県一人旅エッセイ~

「餃子とビールは地球を救う」”ソロの細道”Vol.9「栃木」~47都道府県一人旅エッセイ~

料理とお酒のカップリング(いわゆるマリアージュ)のランキングがあったとすれば、間違いなく上位に来るであろう組み合わせの一つが、「餃子とビール」だと断言できるだろう。

それくらい餃子とビールの組み合わせというのは、餃子好きやビール好き、そして呑兵衛にはたまらない。

私も餃子熱は高い方で、池袋のナンジャタウンには中にある餃子スタジアムに行くためだけに入場料を払ってまで何度も足を運んでるし、全国各地

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「バスケの街と車窓の眺め」”ソロの細道”Vol.4「秋田」~47都道府県一人旅エッセイ~

「バスケの街と車窓の眺め」”ソロの細道”Vol.4「秋田」~47都道府県一人旅エッセイ~

むかしな、秋田のくにに、八郎って山男が住んでいたっけもの。

小学校の国語の教科書に載っていた、「八郎潟」の由来を描いた「八郎」という話は、今でも記憶に残っていて、地図で八郎潟を見るたびにそのことを思い出す。

全編にわたって秋田弁で書かれたその話は、沖縄方言を日常的に使っていた私にとって不思議なリズムに思え、何度も音読をして読み返した。

そこから秋田といえば八郎潟、という印象となり、そこから「

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「震災遺構と語り部がつなぐもの」”ソロの細道”Vol.3「岩手」~47都道府県一人旅エッセイ~

「震災遺構と語り部がつなぐもの」”ソロの細道”Vol.3「岩手」~47都道府県一人旅エッセイ~

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ ・・・

子供の頃に読んだ宮沢賢治の一節が、私の「岩手」へのイメージだった。

そして大学の文学部での卒業論文で井上ひさし「吉里吉里人」をテーマに選び、分厚い辞書のような厚さの単行本を数か月持ち歩いて何度も何度も読み返しているうちに、「吉里吉里国=岩手」というイメージも追加された。

初めて岩手を訪れたのは二十歳を前にした大

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「八戸にて酒で繋がる絆」”ソロの細道”Vol.2「青森」~47都道府県一人旅エッセイ~

「八戸にて酒で繋がる絆」”ソロの細道”Vol.2「青森」~47都道府県一人旅エッセイ~

18歳の頃に大学への進学で沖縄から上京してきた私は、ほとんど知識もないままに千葉県柏市に住むことになった。当時は「千葉の渋谷」とテレビで持てはやされ、街には”チーマー”と呼ばれる若者たちが溢れていた。

私はそんな文化が苦手で、柏から最も行きやすい都内のスポットである上野でよく遊ぶようになっていた。
基本的に柏から都内に出るには、当時はJR常磐線しか無いわけで、上野か日暮里で乗り換えないと何処にも

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