さつま瑠璃|Ruri Satsuma
詩・小説(SS)などの創作物をリリースしています。
さつま瑠璃こと“おさつ”がノージャンルで自由にエッセイを書くマガジンです。 題材に縛られず、今書きたいものを! ある意味、さつまの生の声がいちばんわかるマガジンかもしれません。
歳時記をもとに季語を拾い上げ、日本の四季や伝統について「をかし」と思いながらエッセイを書くマガジンです。 古き良き風習や祭り、自然美について語ります。
「ミュージアムに行くのは好きですか?」——美術ライターのさつまが各地の美術館を行脚し、エッセイを交えながら各館の魅力をご紹介するマガジン。美術館のある街、素敵なミュージアムグッズ、お腹も満足するミュージアムカフェの情報も盛り沢山。 ▼読みたい美術館の記事を探せる【索引】はこちらから https://note.com/rurimbon/n/n6f9a463314bf
演劇を中心に、ミュージカル・オペラ・バレエなど舞台芸術について幅広く。 舞台芸術のファンであり、作り手でもあるさつまならではの視点で語ります。 お仕事で携わった公演のお知らせや後書きもこちらで。
好きなアートをオンラインで探し、選び、購入する楽しさ。 特に近年は、働き方や娯楽の多様化にともない「おうち時間」を充実させたいと感じる人が増えました。 そうした流れの中で、暮らしをよりよくするためのアイデアとしてアート需要が高まっています。 人びとのニーズに応えるかのように、アートのECサイトもかなりの数になってきました。 ここでは、国内でアートに特化したECサイトをいくつかご紹介します。 (最終更新:2022.10.5) 1. WASABI -ART SHOP ON
2023年5月21日(日)の「文学フリマ東京36」に初出店しました! 文学フリマ出店の背景と意気込み文学フリマ東京36の「さつまがゆく」お品書き文フリ東京36では、新刊のエッセイZINE『おおさか夢見番地』を発売しました。 開催前に配信した公式LINE(ぜひ登録してね)では「1冊も売れなかったらどうしよう」なんて弱音を吐いていたのですが、ありがたいことに初版完売! 重版が決定いたしました!! 他にはフォトエッセイ形式のポストカード4種とチャリティー商品を販売いしました。
「おめでとうございます! あなたは特別なオファーに選ばれました。今日からどこでも住めますよ!」 午前10時のデスク。書きかけた原稿のWordを開いたMacBookの前、現れたそいつはいきなりこう言った。妖精とは彼——いや、彼女かもしれない——のことを言うのだろうか。ジブリ映画に出てきそうなビジュアルの“妖精”はくりっとした目を輝かせながらこっちを見ている。 どこでも住めるって。どこでも? というか今日から? さすがに急すぎない? 「えー、ないんですか? 住んでみたいとこ
毎年3月になると決まって母からLINEが来る。 「今年もお雛様、出したわよ」 我が家の【雛飾】は祖母の代からあるアンティークだ。小ぶりながらも立派な御殿とぼんぼりがしっかり付いている。所々壊れてしまい色褪せてきているけれど、いつだか母が「このお雛様もそろそろ処分しようか」と言ったとき私が「いつか私が貰い受けるから絶対に捨てないで」と言った記憶がある。古風で美しい【雛人形】。 そして【雛祭】が終われば「お雛様ちゃんとしまっておいたわよ」とまたLINEが来る。【桃の節句】を
「ごめんなさい。もう無理です。私もう頑張れません」 みっともないと分かっていても溢れる涙を堪えきれない。 社長は黙ってそれを眺めていた。 「2月末で退職させてください」 私は大切な人たちを裏切った。 今でもこの十字架を棄て去る気持ちにはなれない。 *** 26歳、初めての転職。 IT企業で営業職を務めて3年。20代後半になった私は「このままでいいのだろうか」とさめざめ泣いた。それもそのはず、進退に悩むほどの大問題があったからだ。 新卒で入った会社は穏やかで居心地が
モダンの庭園を歩きにゆく。 JR目黒駅の東口を出て、目黒通りをまっすぐ歩く。道路沿いに展覧会の旗がはためく。賑わう駅回りを通り過ぎれば、東京都・白金台の瀟洒な街並み。横断歩道を渡ればすぐ、柵越しに自慢の庭園が見えてくる。 東京都庭園美術館の緑豊かな正門をくぐり抜けて、ミュージアムへの道を辿る。夏場は入り口に「毛虫注意」なんて書かれていてヒヤヒヤしたっけ。 1933(昭和8)年に宮家の一つ、朝香宮の自邸として建てられたアール・デコの美しい建物は、50年後に美術館となった。
【鬼は外】、【福は内】。 2月3日、【立春】の前日。 節に分かれると書いて【節分】。もともとは四季それぞれの分かれ目を意味する言葉だったらしい。現在は冬と春の境のこと。春を迎えるにあたり、一年を健康に過ごすために邪気を追い払おうと【豆撒】をする。 東京でひとり節分を迎える私は、地元で過ごした我が家の節分を思い出してみる。 私と3つ下の弟がまだ小さい頃、夕食を済ませて居間でワイワイ遊んでいるとき、気が付くと父の姿が見えなくなっている。 それから急にインターホンが鳴り、ド
目白通りから脇道に逸れれば、そこは閑静そのもの。 細川家ゆかりの地、東京都・目白台。 永青文庫を含む敷地一帯は、幕末期に肥後熊本の藩主だった細川家の下屋敷だったそう。 昭和初期に建てられた家政所(事務所)が今では美術館となり、細川家ゆかりの歴史資料や美術品を保管している。 細川忠興の佩刀「歌仙兼定」もここにある。 設立者の細川護立は美術に親しみ、書画や東洋美術などを積極的に蒐集してコレクションを築き上げた。 静かな門をくぐれば、頭上には枝を伸ばす桜と楓の樹。秋には柿が
岡山県・倉敷の美観地区にある、日本で初めての西洋美術館に行ってみたい。できたら、女子旅で。 色々な嬉しい偶然から、私はその憧れを叶える。友達と2人で東京駅から新幹線に乗り、名古屋も大阪も通り過ぎて、遥々と岡山駅へ。在来線で少し先へ、JR倉敷駅から歩けばすぐ。倉敷川の両岸の古き良き街並み、かつての景観を守っている。 レトロモダンな風景に心躍る。いいな。袴とブーツを履いて、はいからさんの格好で並んで歩いてみたい。 創設者は倉敷の実業家・大原孫三郎。彼はアーティスト支援に精力
カレンダーを見たら「小寒」とあった。昨日のことだ。 ここから節分までさらに寒さが厳しくなるらしい。【寒の入り】。 今日が何の日か、私は忘れていない。午前の仕事を切り上げて、近所のスーパーに向かって「【春の七草】セット」を買う。 積み重なった山から1パック手に取ってカゴに入れるだけでいい、便利な世の中。だって、想像してほしい。昔の人はきっと極寒の野原を見渡して、雪の下から微かに春の兆しを伝える七草を探し、家族の分を摘んで帰ったのだから。 湯を沸かし、青菜を刻んで塩でさっと
年越しの季節がやってきた。 紅白歌合戦を見終えて、「蛍の光」を聴いて、「ゆく年くる年」を見て。 ゴーン、とテレビ越しのどこかの神社で除夜の鐘が鳴ったら、みんなで口々に新年を祝いあって——これを【御慶】と言うらしい——、それぞれの部屋へ帰る。 それが我が家のお正月。 【初日の出】を見る人は、早起き。 日が昇るまで寝ていたい人は、スヤスヤ夢の中。 【元旦】の食卓は、関東風の鶏ガラの【お雑煮】。餅つきをした近所の人がおすそ分けしてくれた、新鮮なお餅をこんがり焼いて中に入れる
今日は、何を書こう。 明日は。明後日は。1週間後には。 *** 高校生の頃からずっと、紙の手帳を使い続けている。 学校の時間割、部活の予定、アルバイトのお給料日。 時々、日記のように思ったことをメモ書きにする。気になったカフェやファッションブランドの名前を書き残してみる。 後ろのポケットに、旅先の思い出の小さなリーフレットを挟み込む。 そうやって、私の手帳はリアルタイムの営みをそっくり映し取っていた。 手帳を持たない派の知人に「アナログ派なんだね〜」と言われても、悪い
「ゼンジン未到はね、 僕たちにとって大切なタイミングでやるライブなんです」 MCを振られたギターの若井滉斗——“ひろぱ”は微笑みながら、それでいて真面目に言葉を紡いだ。 ゼンジン未到。 2013年に結成、2015年にメジャーデビューしたMrs. GREEN APPLEが、まだ全国流通盤も出ていない頃から大切にしてきた自主企画。 ゼンジン未到とコンフリクト〜前奏編〜に始まり、パラダイムシフト〜音楽編〜/プログレス〜実戦編〜/ロワジール/プロテスト〜回帰編〜と続いている。
銀杏並木の坂を登る。 東京都・広尾。恵比寿駅の西口を出て、山種美術館に向かう道すがら。街路樹に晩秋を見た。秋風、いやすでに木枯らしだろうか。凛とした寒さが心地よい。 初めてこの美術館に来た日はよく覚えている。 いつかの8月、それもとんでもない猛暑日。「駅から10分? たいして遠くないし、バスに乗らなくてもいいかな」と気軽に出かけた私は、坂道を歩きながらダラダラと汗を流した。エントランスに着いた頃には顔面も赤く、展示室へ入る前にロビーのソファで涼んだっけ。 けれども、そん
かかとの低い靴で丸の内の界隈をてくてく歩く。 *** その昔、丸の内OLだった。 ——といっても大企業勤めではない。皇居近くにある、小企業が沢山出入りするシェアオフィスの一角で働いていた。 スタートアップのような華々しさもない。「IT事業をやるなら」と田舎者のノリで雰囲気から丸の内を選んでしまった、残念な零細企業に勤めていた。 ほやほやの新卒だった私がそうした裏事情に気づくはずもなく、面接で通されたラウンジからの眺めに心奪われるのは一瞬だった。エレガントな街、丸の内。そ
「地球のみなさん、たまには月に遊びにきてくださいね! それまでどうぞお元気で。また、どこかでお会いしましょう! またね! 元気でね!」 *** 劇団コホミン『月の王国』の幕が降りた。 キャスト総勢18名は、現役大学生と地域の障がい者と小学生たち。 演劇経験者はほぼゼロ。 今日も同じ地球のどこかで「おはよう」して「おやすみ」している私たちが、“劇団コホミン”の一員となって作り上げた舞台。 いつもとちょっと違う演劇の話をしよう。 *** 「演劇をやってみたいんです」