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餃子と四半世紀と、すこし。
餃子がすきだ。
野菜たっぷりの、我が家の餃子が。
夕飯の前、「餃子作るよー」と母の声がすると小さな私と弟はすぐに台所へ向かった。指先を水に浸し、薄皮の弧をすーっとなぞる。餡の配分は腕の見せどころ。はみ出ないように、それでいて少なすぎないように、そして余らずぴったり使い切れるように。手作り餃子の思い出は、今でも鮮明に浮かんでくる。
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鶏ひき肉に刻んだ白菜とにらをたっぷり加えるから、肉汁感よりも野菜のシャキシャキした食感と甘みが口に広がる。フライパンにぎっしり詰めて焼いた餃子を大きな丸皿に盛り付けて食卓に出せば、あっという間に空になる。
小皿には一寸のお醤油にお酢を多めに加えて、ラー油を数滴。それが私の、原点でありスタンダード。
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餃子がすきだ。
帰省の定番、相模原の萬金ギョウザが。
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神奈川県の中ほどに住む祖父母に会いに行くときは、「ギョウザの萬金」がお約束。家族揃って20年近く食べている味だ。
ここの餃子は皮が分厚い。もっちりとして噛みごたえがあり、焼きたてが一番美味しい。俵のような丸い形も特徴的だ。
イートインで、やわらかい水餃子や大きなお椀のわかめスープ、バンバンジーサラダと一緒に平らげて、お腹いっぱいになる喜び。家では外食の餃子といえば萬金で、餃子が美味しいのはもちろん、「萬金行こうよ」と心弾ませる家族の顔を見るのがすきなのかもしれない。
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餃子がすきだ。
女友達と、お酒を飲みながら食べる餃子が。
ついに、“餃子とビール”を知ってしまった。ハイボールもいい。レモンサワーもいい。社会人になり上京してから、私は晩酌を好むようになった。何で今までこれを知らなかったんだ、最早これしかあり得ない、そう思っていたら餃子とワインを取り合わせる店を見つけてしまった。「立吉餃子」の餃子は肉の旨みがジューシーで、意外にも赤ワインや白ワインにぴったり合う。仕事終わりにカウンターで女ふたり並んで食べた日が——ああ、懐かしい。
他にも東京では色々な餃子屋を訪れた。ビジネス街にある餃子屋は、きっと退勤後のサラリーマンが一杯やりに来ることもあるのだろう。餃子は提供が早い。コスパもいい。お洒落なお店ではないけれど、こんな場所でも一緒に酌み交わしながらニンニクたっぷりの餃子をつついてくれる、気の置けない仲の女友達に私は恵まれている。
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餃子がすきだ。
何だかんだで、家庭の味の餃子が。
ふるさと納税を何にしようか、できるだけ保管場所を取らなくて、手軽におかずにできるものがいいな。その欲求にぴったり叶った、冷凍の宇都宮餃子を選んだ。
薄皮で野菜多め。どこかで食べたことのある味だ。シンプルで、やさしくて、いわゆる“お店の味”とはすこし違う。けれども、それがいい。
小皿には一寸のお醤油にお酢を多めに加えて、ラー油を数滴。スタンダードは変わらない。でも最近、酢胡椒が美味しいと聞いたから試してみる。さっぱりした味で悪くない。
とりあえず、と6個焼いた餃子はあっという間になくなって、何だかまだまだ物足りない。おかわりしよう、とフライパンにもう一度油をひいた。四半世紀くらい前の私は餡を包むだけで、焼くのは母の仕事だったのが、今では私もこうしてコンロの前に立っている。
餃子、その味を知ってからもうそんなに経つのか。
油がパチパチと音をたて、表面がこんがり焼けてくる。冷蔵庫にはまだビールが1缶あったはずだ。
美味しい餃子が食べられる幸せに、乾杯。
熱した油脂の香りとともに、晩酌の夜はゆるやかに過ぎていく。
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おやつを恵んでいただけると、心から喜びます。