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伝統的な景観に西洋のエッセンス。大原美術館

岡山県・倉敷の美観地区にある、日本で初めての西洋美術館に行ってみたい。できたら、女子旅で。

色々な嬉しい偶然から、私はその憧れを叶える。友達と2人で東京駅から新幹線に乗り、名古屋も大阪も通り過ぎて、遥々と岡山駅へ。在来線で少し先へ、JR倉敷駅から歩けばすぐ。倉敷川の両岸の古き良き街並み、かつての景観を守っている。

レトロモダンな風景に心躍る。いいな。袴とブーツを履いて、はいからさんの格好で並んで歩いてみたい。

倉敷美観地区の街並み
水辺には白鳥や錦鯉が泳いでいる。

創設者は倉敷の実業家・大原孫三郎。彼はアーティスト支援に精力的だったそうだ。洋画家の児島虎次郎を経済的に支えて渡欧させたのも、彼の作品を評価していたから。

虎次郎との交流は運命的なものとなる。彼がヨーロッパで収集して日本に持ち帰った西洋の優れた美術品、これらのさらなる蒐集と公開を孫三郎に提言したのだとか。

それに応じた孫三郎は、さらに2度も虎次郎を渡欧させ、自らもクロード・モネやアンリ・マティスから直接作品を購入
こうして築き上げられたコレクションと、虎次郎の作品を展示する場として、1930年に日本初となる西洋美術中心の私立美術館ができた。

大原美術館の入り口

ギリシャ神殿のような風格ある建物、それでいて気取らず居心地が良い。
外の券売所でチケットを買い、展示室へと向かってみた。


展示室

大原美術館の展示室は、見応えたっぷり。

モネ、ルノワール、ピサロ、シニャック、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、フェルメール、ピカソ、ポロック、ユトリロ、ルソー、モディリアーニ……名だたる巨匠たちの作品がこれでもかというほど並ぶ。

大原美術館が誇る名品の1つ、エル・グレコ《受胎告知》が目を惹く。と思いきや、ジョルジュ・デ・キリコのシュルレアリスム作品が目に留まり、ふと見れば古代美術の彫刻がある。年代の幅広さに圧倒される。

さらには岸田劉生や黒田清輝など、近代日本の洋画家までカバーしているのがすごい。児島虎次郎も素晴らしい画家で、《朝顔》をはじめ花と女性を描いた3枚の大作は本当に見ものだった。


ミュージアムショップ

色鮮やかな西洋美術がモチーフになっていると、ポストカード数枚でも華がある。

厳選してお迎えしたポストカードたち

大原美術館のミュージアムショップでお土産を物色する。特にモネの《睡蓮》グッズはラインナップが豊富で目移りしてしまう。

ミュージアムショップの看板

オンラインショップがあるから、県外からでも買い物を楽しめるのが嬉しいところ。

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本館の他には分館や工芸・東洋館があり、美術館の敷地だけでも見どころは満載。倉敷市が所有する庭園「新渓園」には休憩用のベンチがあり、倉敷市立美術館も近い。

他は周辺をとりあえずぶらぶらするだけでも、観光がてら楽しめる。備前焼やマスキングテープのお店、桃を使ったパフェのお店。——ジョシの心をくすぐる可愛いお店たち。

作品名にちなんで「エル・グレコ」に行ってみようかと思いつつ、焙煎珈琲専門の「倉敷珈琲館」にふらっと立ち寄る。

マスキングテープは倉敷発祥なのだとか。
レトロ喫茶として人気の「エル・グレコ」

夏季限定の「マンデリンアイス」に心惹かれて注文する。普段はホットコーヒーしか飲まない私だけれど、さすがにこの暑さ。
甘みがありつつすっきりとして濃い、好みど真ん中の雫が喉を潤す。

「倉敷珈琲館」のマンデリンアイス(右)
ミルクとシロップで調合したコーヒーとのこと。
お店の入り口

少し歩けば、「倉敷アイビースクエア」の方面にも行ける。モネの睡蓮の池があると聞いたけれど、酷暑の水辺は苔だらけ。また来よう。

岡山の特産品であるデニムのお店

年間パスポート

厳密には年パスではなく、大原美術館の場合は「後援会」と言って、個人会員か個人プレミアム会員になることで特典を受けられる。

来館者としてサービスを受けるだけでなく、所蔵作品の保存・修復や館内設備の維持・更新を支援できるから、美術館を応援したい人にはぴったりだ。

おわりに

夕方5時、あちこちの店が閉まり始める頃に倉敷駅へと向かう。今夜は岡山駅近くに宿を取った。「晩ご飯、何にしようか?」岡山料理が食べられる居酒屋なんてどうかな。

ゆったりとした川沿いの風景に、思いのほか癒された。3フロアを丸々使ったボリューミーな西洋美術の世界を旅した1日、2人歩く夏の思い出。充実感に口角が上がる。

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大原美術館
〒710-8575 岡山県倉敷市中央1丁目1−15
TEL:086-422-0005
公式ホームページ

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