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文学

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詩と随筆、文学のマガジン。
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記事一覧

涼夏、散りぬるを

風に佇む、黄風鈴 神前、妖《あやかし》 レミファソラシ と、さんざめく。 *** 晩夏のとある日、小江戸・川越を訪れました。 こちらの写真は「縁むすび風鈴 写真奉納」にも参加しております。 おまけ ごちそうさまでした。 《使用機種:FUJIFILM-X-A5》

夏、東京で生きる

女ふたりで、酒を飲んだ。 渋谷宮益坂、午後10時。蒸し暑い空気が街を包む。 緩やかな坂道には街路樹と明々と照る街頭、立ち並ぶ大衆居酒屋やコンビニ、薬局、量販店。公道でタクシーと一般車両がひしめき合って上り下りしている。 手頃なダイニングで久々の再会とともに乾杯と夕食を済ませた私たちは、もうお開き。横浜から会いにきてくれた彼女は帰宅に少し時間がかかるし、なにせ私たちは会社員。あいにく華金で予定が合わず、水曜日に予約をしたから明日も出勤しなければいけない。それでも二人で一瓶開

『Swan』

スワン みえています なにかの しあわせで とくべつに みえているかのように Swan 《スワン》 視えています 何かの  倖せで 特別に 視えているかのように。 - Fin. - photo / edit : さつま瑠璃 model : 福島有里 self liner notes

賢治忌によせて - 「雨ニ負ケテモ」

1933年9月21日。 宮沢賢治が亡くなった。 賢治忌、は秋の季語になった。 秋雨が降る。 やがて、冬に向かう。 *** 雨が降るのは、いやだなと思う。 風に吹かれるなら、気持ちいいくらいがいい。 雪が降ると交通機関が止まるから億劫になる。 夏は暑くてすぐバテる。 丈夫でいたいなと思うけど、気づけば風邪を引いている。 物欲がありすぎる。 いつも静かに笑っていられる寛容さがほしいけれど、 よく小さなことでガミガミ怒っている。 玄米よりも白いご飯のほうが何だかんだ言って

オタクが旅する、イーハトーヴの道中記 DAY3

賢治生誕120周年に敢行した聖地巡礼・オタク旅も、いよいよ終盤。 1日目、2日目に続く最終日は盛岡へ。 ***3日目*** 盛岡のホテル森の風鶯宿で朝食をとり、バスで盛岡駅近くまで移動する(とても素敵な旅館でしたが、いかんせん駅から遠い)。 賢治清水で喉を潤してから、賢治アベニューと呼ばれ親しまれる材木町へ降り立った。 通りのあちこちに、作品がモチーフとなった像や飾りがある。 賢治先生の像は、帽子に銀河鉄道と思しき列車が走っていてかわいい。 マヂエル館の苹果(りんご)

オタクが旅する、イーハトーヴの道中記 DAY2

宮沢賢治を追いかけて、東京からはるばる岩手県の花巻・盛岡へ。 前回の記事はこちら 2日目の朝。 大沢温泉 湯治屋の食堂で朝食をいただく。米が美味しかった。 バスと電車を使って花巻駅まで移動する。 「月夜のでんしんばしら」を知っている人なら思わずニヤリとする標識。 向かった先は、「羅須地人協会」賢治先生の家。 この次はいよいよお待ちかね。 SL銀河に乗り、イーハトーヴを駆け巡る。この旅いちばんの目玉。 (どうしてもこのSL銀河に乗りたいがために、みどりの窓口に朝X時か

オタクが旅する、イーハトーヴの道中記 DAY1

どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。 ——宮沢賢治『注文の多い料理店』 2016年、8月の終わり。 私は、岩手県の花巻・盛岡を旅した。 東京からはるばる新幹線に乗って2泊3日。爽やかで心地よい夏の東北。 宮沢賢治は1896年8月27日に生まれたと言われているため、今年はちょうど生誕120周年のアニバーサリーイヤーにあたる。ピンポイントでこの年を狙った私は、さらに生誕記念日にドンピシャの8月26日〜28日という日程で旅行を計画した。 だって私は賢治マニア

太宰治のアニバーサリーイヤーに、どんな花束を手向けようか

陰鬱にして暗澹。 梅雨前線が未だ去らぬ曇天。 黒い背表紙の文庫本を手に取る。 また、この季節がやってきた。 6月19日 桜桃忌【おうとうき】 6月19日は文豪・太宰治の誕生日であり、彼の遺体が見つかった日だ。 命日だと思ってる人もいるみたいだけど、正確には亡くなっているのが見つかった日らしい。晩年、自殺未遂を繰り返した太宰はついに玉川上水に身を投げてほんとうに死んでしまった。38才。早すぎる離別。 晩年の名作として知られるのは『斜陽』『人間失格』。 生まれてすみません