現代版・徒然草【17】(第123段・人生論)

今日は、人生論を語っている段を紹介しよう。

13の文から成るが、そんなに難しい言葉が使われていないので、読みやすいと思う。

「僻事」というのは、「間違ったこと」という意味である。では、原文を一気に通読してみよう。

無益のことをなして時を移すを、愚かなる人とも、僻事(ひがこと)する人とも言ふべし。国のため、君のために、止むことを得ずして為すべき事多し。その余りの暇(いとま)、幾(いくばく)ならず。思ふべし、人の身に止むことを得ずして営む所、第一に食ふ物、第二に着る物、第三に居る所なり。人間の大事、この三つには過ぎず。饑ゑず、寒からず、風雨に侵されずして、閑かに過すを楽しびとす。たゞし、人皆病あり。病に冒されぬれば、その愁忍び難し。医療を忘るべからず。薬を加へて、四つの事、求め得ざるを貧しとす。この四つ、欠けざるを富めりとす。この四つの外を求め営むを奢りとす。四つの事倹約ならば、誰の人か足らずとせん。

以上である。以下、現代風に言い直してみよう。

(1)何の役にも立たないことをやって時を過ごすのは、愚かなことだし、間違ったことである。
(2)国のため、天皇のために、やむを得ずしなければならないことは多い。
(3)それらの為すべきこと(=仕事)をして残った時間は、そんなにない。
(4)思うに、生きるためにやむを得ず行うことは、第一に食う物、第二に着る物、第三に住む所である。
(5)人間にとって大切なことは、この3つ以外にはない。
(6)飢えず(=食)、寒くないように(=衣)、風雨に当たらないように(=住)、平穏に過ごすのが、人生の楽しみなのだ。
(7)ただし、人は皆、病にかかる。
(8)病に冒されると、そのつらさは堪えがたい。
(9)医療を忘れるな。
(10)上記の衣食住に、薬を加えた4つのことが十分に満たされない人は、貧しい人である。
(11)逆に、この4つが欠けていなければ、十分に満たされている。
(12)この4つ以外のことを求める人は、奢り高ぶっている。
(13)4つのことに関して最低限のことができていれば、誰が物足りないと言うだろうか。(いや、言わないだろう。)

物価高に直面している今だからこそ、身に染みる人生論である。

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