居川三十

本が好きです。文学・歴史・民俗学の本をよく読みます。小説はミステリー、ホラーなどが好き…

居川三十

本が好きです。文学・歴史・民俗学の本をよく読みます。小説はミステリー、ホラーなどが好き。 最近は「本から学んだことをどう活かすか」「自分の人生や生活に結びつけるか」に興味関心があります。和歌山県出身、現在は東京都在住。

最近の記事

北海道の義経伝説について

最近、北海道の口承文芸(伝説、昔話など)についての本を読んでいます。 「北海道=アイヌのお話」のイメージが強かったのですが、本州から北海道にやってきた人々から伝わった話も意外と残っていることに驚きました。 特に印象深いのが義経伝説。 源義経が奥州から逃れ、モンゴルに渡ってチンギス・ハンとなった説は有名ですが、「義経が北海道に渡った」という噂話も、江戸時代初期にはすでにあったらしいです。 (まず北海道に渡った話があり、それが飛躍して義経=チンギス・ハンの話になった、という説も

    • 【本を薦める記事】小松和彦『神隠しと日本人』

      「神隠し」は、現代人にも馴染みのある言葉です。 不可解な行方不明事件が起こると「まるで神隠しにあったみたいだ」と言われたりしますよね。 しかし、本当に神様が人を隠してしまったと考える人は、現代では流石に少数派だと思います。 ところがかつて人々の間では、神隠しは神様によって引き起こされるもの、つまり神霊が人を異界へ連れて行くと信じられてきました。 次の話は、長野県下伊那郡上村(現在の飯田市)で、昭和48年頃に採集されたものです。  上村と木沢部落との境に、中根っちゅう部落が

      • 【本を紹介する記事】北森鴻『凶笑面』

        圧倒的な取材力と構成力で、いくつもの名作ミステリーを生み出した作家・北森鴻。 その代表作である『蓮丈那智フィールドワークファイル』シリーズは、 女性民俗学者・蓮丈那智と、助手の内藤三國が民俗調査に赴いた先で事件に巻き込まれる民俗学ミステリー。 全5巻発行され、そのほとんどが複数の短編からなる連作短編集です。 民俗学要素がふんだんに盛り込まれ、かつミステリー要素もしっかり楽しめる名作です。 超然として冷静沈着な那智と、お人好しで気が弱い三國。二人を中心に個性的なキャラクターが数

        • 【メモ】熊野神社の雨乞い

          愛知県常滑市 熊野神社の雨乞い儀礼。 様々な儀礼を行っても雨が降らない場合の最後の手段として、 神社に伝わる古神面を箱に入れ、海上でこの箱を開けるという儀礼が行われた。 海上でこの神面を開けて見せることで、竜神を怒らせ雨が降る、と伝えられていたらしい。 儀式が行われていたのは大正の頃までだそう。 (知多社会科研究会編『知多のまつり』1977年 より) ・神様を怒らせて雨を降らせる手法として、汚れたもの(汚物、牛や馬の首、骨など)を水に入れるというのはあるが、お面を見せて怒

        北海道の義経伝説について

          【読書メモ】D・カーネギー『人を動かす』

          どんな人でも、あらゆる場面で、何かをお願いしたり、交渉したり、誰かに苦言を呈したりする機会があると思います。 うまく行くときは良いですが、お願いを断られたり、相手から怒られたり、気分を害させたりしてしまうことも、多いのではないでしょうか。 私も対人関係で失敗することが多く、相手から怒られて傷ついたり、反発したり、「もっとうまくできたよな」と後から悩み、 結局は「自分が悪いよな。なぜうまくできないんだろう」とモヤモヤしてしまうことがよくあります。 今回、この『人を動かす』を読

          【読書メモ】D・カーネギー『人を動かす』

          行ってよかった読書会📚(読書会感想)

          先日、生まれて初めて読書会に参加しました! 元々読書が好きで、簡単な感想をnoteやTwitterにも書いていましたが、 「人前で語る経験もしてみたいなぁ」と思っていたところに、 池袋にある天狼院書店さんが読書会を定期的に開催していることを知り、 「これだ!」と迷わず参加しました。 まだ一回しか経験がないですが、初めて読書会に参加してみた感想(良かったところ、こんな人にお勧めしたい)を簡単にまとめてみました👇 読書会の良かったところ! 1.自分の考えが整理される 第三者

          行ってよかった読書会📚(読書会感想)

          【本を薦める記事】東雅夫編『文豪怪談傑作選 芥川龍之介集』

          アンソロジスト・東雅夫が、明治~大正時代の文豪の作品の中から、怪談話や不思議な話をチョイスした『文豪怪談傑作選』の一つ。 芥川龍之介と言えば、「羅生門」や「鼻」、「杜子春」なんかが有名どころですが、本書を読めば「こんなにアヤシイ話も書いていたなんて!」と新鮮な発見があること請け合い。 怪談アンソロジーの名手によって編まれた、数々の『アヤシイ話』が楽しめる一冊です。以下、収録作品の中から、個人的に面白かったものを簡単に紹介します。 1.黒衣聖母「どうです、これは。」と言いなが

          【本を薦める記事】東雅夫編『文豪怪談傑作選 芥川龍之介集』

          【読書メモ】安達裕哉『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか』

          タイトルのとおり、 仕事で必要なコミュニケーション能力を会得する方法(考え方、姿勢など)を解説した本。 非常に分かりやすく具体的だったが、読めば読むほど「コミュニケーションって大変なんだなあ」と改めて感じてしまった。 本書でかなり詳しくポイントを説明してくれているが、最終的に実践するのは読者自身。読んだだけでできるようになることは決してない。 以下、自分的にポイントと感じたところをメモ。 仕事でコミュニケーション能力が求められる理由仕事を完成させるためには組織内外の色んな人

          【読書メモ】安達裕哉『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか』

          【本を薦める記事】夏目漱石『漱石人生論集』

          本書は題名のとおり、夏目漱石が人生や人間というものについて書いた文章を集めているものだ。 編者の出久根達郎が言うように「漱石の作品のすべてが人生を論じている」が、本書では小説以外の文章、具体的には雑誌や新聞への寄稿文、講演や談話の記録、手紙やメモなどを対象にしている。 その中から個人的に「良いな」と思った部分について見ていきたい。 漱石は日本を代表する文豪だけれど、大学卒業後は学校の英語教師などをしていた。専業作家になるのは41歳の時だ。 そして、大学時代や教師生活の間は

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          なぜ妖怪は”おらぶ”のか

          日本昔ばなしの「おらびぐら」前回まで、和歌山に伝わる“ヤマオジ”という妖怪を取り上げ、高知の妖怪と比較しながらその特徴やルーツを整理してきた。 ヤマオジと高知のヤマジイという妖怪の特徴として、 「大声で吠える」「人間に吠え比べをしかけてくる」というものがある。 吠え比べとは大声の比べ合いで、ヤマオジにもヤマジイにも、「吠え比べを挑まれた猟師が鉄砲を使って撃退させる」話が伝わっている。 この「吠え比べ」について考えていたとき、私の記憶の片隅に、幼い頃に見た『まんが日本昔ばなし

          なぜ妖怪は”おらぶ”のか

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”④ヤマオジはどこから来たのか

          今回で最終回になります。 *続きものです。初めての方はぜひ①からお読みください★ ヤマオジとは何なのか?前回まで、和歌山のヤマオジと高知のヤマジイ、そして笑い女の特徴を確認してきた。 それぞれを外見と行動に分けて整理すると下の表のようになる。 ヤマオジとヤマジイを比較すると、「大声を出す」「吠え比べをする」という共通点があり、どちらも魔よけの弾を鉄砲で撃って退散させる話が伝わっている。外見があまり似ていない点は気にしておくべきだけれど、やはり両者には何かしら関係があると

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”④ヤマオジはどこから来たのか

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”③笑う妖怪たち

          *続きものです。初めての方はぜひ①からお読みください★ 前回は、和歌山のヤマオジが持つ「大声で吠える」特徴について、高知県のヤマジイという妖怪との共通点を確認した。 しかし、ヤマオジのもう一つの特徴である「笑う」については、ヤマジイの伝承の中には見つからなかった。 実は高知には、「笑う」特徴を持つ妖怪が別にいることが分かった。今回は、そんな笑う妖怪にスポットを当てていきたい。 ○笑う妖怪 まずは、前回も参考にした『近世土佐妖怪資料』から見てみよう。 それによると、土佐には

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”③笑う妖怪たち

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”②高知のヤマオジ的妖怪

          *続きものです。初めての方はぜひ①からお読みください★ 前回は、和歌山に伝わるヤマオジというマイナーな妖怪を取り上げ、その特徴を整理してみた。 特に注目したいのは、「大声で吠える」ことと「笑う」という点。和歌山の他の妖怪にはあまり見られない特徴だと思う。 では和歌山以外の地域ではどうなのか。 そう思って調べていくと、高知県にヤマオジ的な特徴を持つ妖怪がいることが分かった。 彼らのことを知ればヤマオジのことももっと分かるかもしれない。そんなわけで高知県の妖怪を調べることにした

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”②高知のヤマオジ的妖怪

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”①和歌山の山間部に伝わる怪異譚

          小さい頃から祖母と暮らしていたためか、地元のお年寄り達に色々な昔話を聞かせてもらって育った。 そのせいかどうか、長じてから地元和歌山の民間伝承に興味を持つようになり、文献を調べたり古老に聞いたりして、色々な話を集めるのが趣味になっている。 民間伝承について調べていくと、妖怪話の豊富さに驚かされる。しかもそういった話は、一昔前の人々には身近なものであったようで、八十代くらいの人達に話を聞くと、狸が人を化かす話や山で不思議な生き物を見た話などを、ごく当たり前のように語ってくれる。

          紀ノ国妖怪考“ヤマオジ”①和歌山の山間部に伝わる怪異譚