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【読書メモ】D・カーネギー『人を動かす』

どんな人でも、あらゆる場面で、何かをお願いしたり、交渉したり、誰かに苦言を呈したりする機会があると思います。
うまく行くときは良いですが、お願いを断られたり、相手から怒られたり、気分を害させたりしてしまうことも、多いのではないでしょうか。
私も対人関係で失敗することが多く、相手から怒られて傷ついたり、反発したり、「もっとうまくできたよな」と後から悩み、
結局は「自分が悪いよな。なぜうまくできないんだろう」とモヤモヤしてしまうことがよくあります。

今回、この『人を動かす』を読んで、対人関係の基本のキを学べた気がします。さすが名著で、とても分かりやすく内容が腹にスッと落ちました。


対人関係の歴史的名著

この『人を動かす』は1936年に発行されてから現在まで世界中で読まれているベストセラーで、読んだことのある人はもとより、愛読している人もたくさんいると思います。

本書の内容はいたってシンプル。
4章構成で、「人を動かす3原則」、「人に好かれる6原則」のように、各章にタイトルが付けられています。
「人を動かす3原則」として、
 1 盗人にも五分の理を認める
 2 重要感を持たせる
 3 人の立場に身を置く
のように、原則の詳しい内容が説明されていきます。

本文には、各原則の具体的な内容が書かれています。
本書の良い点は、事例がとても豊富で、著者が実際に取材した、当時の各界の名士たちのエピソード、そして自身が主催する講演会などに参加した一般の人々の経験談などが載せられています。
1原則につき、最低3~4つのエピソードが出てくるので、具体的で説得力があります。
原則自体が分かりやすく、さらに具体的なエピソードで補強してくれるので、途中で詰まることなくスラスラ読めると思います。

対人関係をうまく運ぶ原則

この本には、「人を動かす」「人に好かれる」「人を説得する」「人を変える」原則が、合計33個あります。
しかし、それぞれの原則が、人を動かすことにも人を説得することにもなるし、そもそも似たような原則もあるので、あまり各章のタイトルにはこだわらず、「対人関係を上手く運ぶための原則」と一括りで理解した方が個人的には分かりやすいと思います。

紹介される原則には様々なものがあります。
例えば「人に好かれる6原則」として、
 1 誠実な関心を寄せる
 2 笑顔で接する
 3 名前を覚える
 4 聞き手にまわる
 5 関心のありかを見抜く
 6 心からほめる
という原則が紹介されています。

様々な原則がありますが、全体を読んでいくと、各原則の基本となる、コアの考え方があるように感じました。それを簡単に紹介したいと思います。それを踏まえて各原則を読んでいくと、一層理解が進むと思います。

コアとなる考え方

そもそも対人関係を上手く運ぶということは、こちらの要望を強制的に相手にやらせるのではなく、いかに相手から進んでやってもらうか
相手に進んで行動してもらうために、「心からほめる」や「誤りを指摘しない」、「命令をしない」等の原則があるわけですが、それらのコアとなる考え方が、一番最初の「人を動かす3原則」の中にある、
 ①重要感を持たせる
 ②相手の立場に身を置く
の2点です。この2つを応用したものが、他の各原則だと私は思います。

重要感を持たせる

「重要感」とは、意外と分かりにくい概念かもしれませんが、
つまりは「他人に認められたい」「人に興味を持たれたい」という欲求のこと
人にほめられたり、賛成されたり、自分の話を聞いてもらうことで、この重要感が満たされ、自己評価が高まる。人間は誰しもこの欲求を持っていると著者は言います。
相手の重要感を満たすことで、相手はこちらに対して好意を抱き、こちらの要望などを受け入れやすくなる、という考え方です。
本著の原則の多くは、相手に重要感を持たせるための具体的な働きかけだと思います。

重要感を持たせるには、相手をほめたり、関心を寄せたりすることが大切なのですが、それらが心から出たものでなければ、ただのお世辞やおべっかになってしまいます
人は、相手の態度や発言が、心からのものか上辺だけなのかを、見抜けるからです。
著者も、心のこもらない上辺だけの言葉ではかえって反発を受ける、と言っています。
それではどうすれば良いのでしょうか。それが次のポイントの、
相手の立場に身を置くこと、です。


相手の立場に身を置く

相手に対して心から関心を寄せるには、相手の立場に立ち、相手を理解しようと努めることが大切です。
相手に態度を改めて欲しい場合でも、悪い部分を頭ごなしに叱り、改善を求めるのではなく、
「ここについては、十分できている」
「相手の状況も理解する。相手の立場だったら自分も同じことをするだろう」
など、相手の立場や心情を斟酌することです。


例えば、「人を説得する原則」の一つに、「誤りを指摘しない」というものがあります。
相手に確実に非がある場合でも、それを指摘することは正しくないと著者は言います。

そもそも、相手の間違いを、何のために指摘するのだ——相手の同意を得るために? とんでもない! 相手は自分の知能、判断、誇り、自尊心に平手打ちを食らわされているのだ。当然、打ち返してくる。考えを変えようなどと思うわけがない。
(『人を動かす』P.161~162)

ではどうすれば良いのか?
著者は、「相手の意見に敬意を払い、誤りを指摘しない」こと。誤りを指摘しなくても、物事は上手く行くと言っています。

我々は、自分の非を自分で認めることはよくある。また、それを他人から指摘された場合、相手の出方が優しくて巧妙だと、あっさりと非を認め、むしろ自分の率直さや腹の太さに誇りを感じることさえある。
(同 P.168)

相手の意見を尊重し、相手に対して協調的な態度で接することで、相手の考えや気持ちが変わって来て、かえって自分の非を認めるものだと言っています。

この心から相手の立場をくみ取るというのが、私には結構難しく感じました。
理想的には「自分の要求を聞いて欲しいから、相手の立場に立って考えよう」ではなく、そんなことを意識せず、相手に対して心から歩み寄っていくという心境が必要なのだと思います。
その境地に達するのは私のような人間では正直ハードルが高い。
しかし、意識して一日一日やってみることが大切だと思います。

行動することが大切

以上、本書の内容を簡単に見てきました。
仕事でも家庭でも、嫌なお願いをしたり、意見が対立したりする場面があると思います。
こちらの要望を頭ごなしに押し付けるのは簡単です。
でも、どうして相手がそんな発言をするのか、相手はどのように思っているのか等、少しでも相手に歩み寄れる心のゆとりがあると良いかなと思います。
本書の中身はとても基本的で、ある意味「当たり前じゃん」と思うことばかりかもしれません。だから、その基本を踏まえて行動してみることだと思います。
大事な場面でも良いですが、まずは日常生活のちょっとした場面で、練習がてらやってみるのも良いかもしれませんね。

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