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#文学

風流は陰の中に

風流は陰の中に

私は以前、noteでこんなことを書いていた。

大学の教授にいつの間にか変態扱いをされていて、ショックだった故に、長らく谷崎潤一郎を読めなかった、というくだらない話である。

この記事を書いたのは、もう1年以上前だ。その間、私は谷崎潤一郎の作品に一度も手を出していなかったが、自らの「呪い」を解き、ついに読んでみた。

新潮文庫の美しい装丁、魅惑的な漢字の連なり。

ずっと前から気になっていた。陰翳

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谷崎潤一郎を読まないのは

谷崎潤一郎を読まないのは

言葉は時々、人を縛る呪いになる。

大学生の頃、フランス文化論ゼミに所属していた。
それまでフランスの文化について、さほど深く学んでいたわけではないけれど、研究でフランス語が必要になったことと、担当の先生が指導熱心だったために選んだゼミだった。

いわゆる「キツい」ゼミとして学内で有名だっただけあって、こなす課題も多く、ハイレベルな要求に耐えられずに離脱した人もいた。

私はそんな中でも、先生の個

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生きる意味と無意味をめぐって◆三島由紀夫『命売ります』

生きる意味と無意味をめぐって◆三島由紀夫『命売ります』

三島由紀夫『命売ります』(1968年)

いくつも読んできた三島由紀夫の作品の中でも、圧倒的な読みやすさとユーモアがつまったこの小説は、私の大好きな作品の一つ。

なぜか暑くなると読みたくなり、毎夏のように再読しています。

今回はこちらの作品のご紹介と、すこしばかり考察をしてみます。

※ネタバレありますのでご注意ください。

あらすじ広告会社でコピーライターとして働く27歳の山田羽仁男。

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