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子育ては「今しかない一瞬」の連続である

母になったのは5年前。もうすぐ息子は5歳、娘は2歳になる。結婚しても生活にまるで変化がなかったが、出産後はそれまでと別人のような生活を送ることになった。結婚前の私が何を大切にし、どんな時間の使い方をしていたか、もう思い出せない。あの頃の自分は、もうこの世に存在していない幻だ。

幻と決別したかわりに「私たちがいないと生きていけない人間たち」を、夫と手探りで育ててきた。予想していたより育児はずっと複雑で難しくて、取り返しがつかないことも多い。

そして、子どもたちの「今」は、本当に「今」しかないと日々気づかされる。

2人とも1年以上母乳で育てた。単純計算でも1人につき10,000分(16時間強!)を授乳に費やしたことになる。でも、娘が卒乳して半年以上経つ今、どんな感覚だったのかもう思い出せない。

息子も娘も1歳を過ぎても歩かなかった。初めの1歩が出てからが長く、ずっとはいはいで床を這いずり回っていた。娘がトトト…と数歩歩いたのは、自粛生活を送っていた4月。それから3カ月、もうはいはいはしなくなってしまった。歩き始める子特有のふわふわした足の裏、今は触り心地が違う。

息子2歳の誕生日にストライダーを贈った。最初はうまくまたがることもできなくて、1年以上まっすぐ走ることしかできなかった。けれど4歳をすぎた頃に急激に上達し、どんな狭い道でも上手にカーブやUターンをできるようになった。

もう授乳することはない、もうはいはいする姿は見られない、もう下手くそなストライダー乗りはいない―子どもたちは「できなかった頃」に戻ることは絶対にない。今、目の前で起きていること、見せてくれる姿は「今しかない」のだ。

1人目のときはそれになかなか気づけなかった。他の子より遅い成長が気になって、早く「できる」ように祈っていた。2人目のときはそれに気づいていたから、早くできなくてもいい、1日でも長く「できない」今の姿を見せてと祈っていた。それでも容赦なく子どもは育ち、できることを増やしていく。頭身が伸び、体幹が少しずつしっかりして、服がどんどん小さくなる。

息子と娘のオモチャの取り合いを仲裁する、疲れてごろんと横になると、2人がニコニコ笑いながらどすんと乗ってきて息が止まる、1日に何十回と繰り返される息子の「マーマー見ーて!」攻撃にうんざりする…そんなやかましい日々も、きっと今しかないのだ。10年後、子どもたちが思春期を迎えはじめる頃、「あの頃に戻りたい」と涙するのかもしれない。
そして子どもたちだけでなく、「子どもがいなかった頃」の私はどこにもいない。仕事と余暇のことだけを考えて暮らしていた私は、もはや幻なのだ。

明日も子どもたちは、私を手こずらせ、悩ませ、イライラさせ、そして笑わせるだろう。それは、未来の私が切望してやまない愛しい1日なのかもしれない。

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