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短編小説

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記事一覧

【140字小説】腐っても人

 念願のフォロワー10万人を達成。
 しかし、インプレ稼ぎでコメントをするやつらが増えた。
 煩わしいことこの上ないので、試しに反応しなさそうな迷子犬に関しての呟きを投稿。
 すると普段はコピペばかりのインプレゾンビどもがひたすら拡散。
 結果として迷子犬は飼い主と再会。
 どうやら腐っても人らしい。

140字小説【俺の嫁】

「最近冷たくない?」
「べつに」
「もしかして浮気?」
「そんなわけないだろ!」
「スマホいじってばっかじゃん」
「実はな……これを見てくれ」

 彼が見せてきたスマホには、可愛い女性キャラが。

「何この子」
「最近ハマってるゲームの育成アイドル。めっちゃ可愛いだろ?」
「浮気じゃねーか!」

【いちばんかっこいい必殺技】

「いちばんかっこいい必殺技考えようぜ!」
「最強パンチ」
「クレイジーキック」
「う~ん、メガちんはどう?」

 突然話をふられ、戸惑いつつもメガネの少年が言う。

「……エ、エンシェントヘルブレイズ」

「「「うおー、かっけえ!!!」」」

 彼らの友情が、エターナルに続くことを祈ってやまない。

【短編小説】美少女ゲームの案内役に一目ぼれしてしまった。

 俺……朝浦太陽(あさうら・たいよう)は、恋愛シミュレーションゲーム『AIのカタチ』ベータ版にテストプレイヤーとして参加していた。

「以上でチュートリアルは終了となります。お疲れさまでした♪」

 そんな俺をねぎらうのは、ここまで案内してくれたいわゆるガイド役のキャラクター、早乙女瑠奈(さおとめ・るな)。
 一応彼女は同じクラスの学級委員という設定ではあるのだが……

 俺にはどうも、腑に落ちな

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【短編小説】告白は救世のあとで

 周囲には邪悪な気配が満ちている。

「見えてきたぞ。もうすぐ魔王城だ!」

「……」

 そして、この場所を歩く俺たち二人の間にも険悪な空気が流れていた。

「おい、なに黙ってんだよ?」

「……別に」

 となりを歩く彼女を見れば、『あんたなんか視界に入れたくもない』とでも言いたげにそっぽを向かれた。

(ほんと、なんでこんなに機嫌悪いんだ……?)

 不機嫌丸出し中の魔法使いのユリカと勇者の

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【短編小説】ウィンナーコーヒー

 行きつけのカフェ、『黒猫』は本日も盛況。

「今日もやってんなー」

 歩道から眺める店内では、見慣れた女性店員がはつらつと動き回っている。

(新人だったころが懐かしいくらいだ)

 彼女……結城(ゆうき)さんは数か月前『黒猫』にアルバイトとして入った大学生。
 最初は表情も硬く接客もままならなかったが、今ではお客さんから大人気の看板娘である。

(いい笑顔だ)

 すっかり板についた彼女のス

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【短編小説】屋上の彼女、飛び降りる理由。

「こっちに来ないで!」

 柵の向こうから大声を出すのは、一人の少女。
 彼女の名は河野亜衣奈(かわの・あいな)。
 僕、二ノ宮夢(にのみや・ゆめ)のクラスメイトである。

 HR後、彼女の様子に違和感を覚えて後をつけたところ……
 屋上から飛び降りようとしている彼女を見つけてしまった。

「待ってくれ。話だけでも聞かせてくれないか?」

 無理な説得は選択肢から除外。
 まずは彼女の話を聞いてみ

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【短編小説】解雇通達

「エリナ。悪いが君にはこの屋敷のメイドをやめてもらう」

 我が主——アダム・マイヤーズ様の部屋にて。
 私が告げられたのは解雇通達でした。

「解雇……ですか?」

「そうだ」

 信じられません。

 私は孤児だった幼少のころ、アダム様のお父上に拾われ、同年代のアダム様をお世話するように命を与えられました。

 以来、愛情をもってお世話させて頂いていたというのに。

「私のご奉仕になにかご不満

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【短編小説】「もう、お兄ちゃんって呼ばないから」

「航くんのこと、もう、お兄ちゃんって呼ばないから」
「……は?」

 俺、西野航(にしの・わたる)は最愛の義妹——西野凪(にしの・なぎ)から突きつけられた言葉に困惑した。

 凪は10年前、父の再婚によって家族になった二つ年下の女の子。
 血のつながりは無いが幼少から生活を共にしており、目の中に入れても痛くないほどの……俺にとって大切な義妹。

 そんな彼女の様子がここ最近おかしかったため、「ケー

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【短編小説】幼馴染は世界で一番

「あーもう。なんで幼馴染ばっかり負けちゃうのよ!!」

 俺の部屋でマンガを読んでいた幼馴染——秋元凜々花(あきもと・りりか)は突然叫んだ。

「どうしたいきなり。負けない作品もあるだろ」

 部屋の主である俺、城野春太(しろの・はるた)は眉をひそめつつ彼女をなだめようとする。
 しかし凜々花の怒りはおさまらない。

「はるくんの紹介するラブコメ、全部幼馴染がフラれるじゃん!!」
「いや、それは紹

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【短編小説】となりの猫の猫目さん

 僕、好野陽太(よしの・ようた)には気になる人がいる。
 同じクラスの女子生徒、猫目ゆる(ねこめ・ゆる)さんだ。
 ホームルームでの席替えで、なんと……
 猫目さんと隣同士になってしまった!

「にゃむにゃむ……」

 窓際の席の彼女は、授業中だというのにスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。

「……」

 耳だけは先生にかたむけつつ、視線は寝ている彼女に向ける。
 綺麗なショートボブの黒髪に、

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【短編小説】クラスの彼女はツンデレラ

 ぱちぱちぱち、という打鍵音が放課後の部室に響く。

「彼女は氷のように冷たい視線で……いや、違うな」

 僕——山江和喜(やまえ・かずき)はノートPCのキーボードから指先を離した。

「突き刺すような視線で……いや、ジト目で……うーん、そもそも……」

 更には腕を組み、ひとりごとをブツブツと漏らしている。

「は~、どう書けば伝わるのか全然わからん」

 最後にはそう言って頭を抱えた。
 そん

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【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(4/4)

 オレンジ色の景色の中、僕と愛奈美さんは並んで歩いている。

「……」

 僕はやたらと緊張してしまい、愛奈美さんに話しかけられずにいる。

「あ、あのさ」

 沈黙を破ったのは愛奈美さんだった。

「さっきは助けてくれて、ありがとう」

 彼女はぽつり、ぽつりと語り出した。

「私ね、あんなふうに言ってたけど、本当はすっごく怖かったんだ。でも、博士くんの姿が見えた時、すっごく安心した……」

 

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【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(3/4)

 愛奈美さんとお昼を共にしてから数週間。
 僕は夢のような日々を送っていた。

「はー、今日も愛奈美さん、可愛かったなあ……」

 あれから毎日のように、僕は愛奈美さんとお昼ご飯を食べた。
 休み時間や登下校の際に話すことも増え、以前からすると明らかに距離が縮まっている。

「っていうか今度の日曜日、何着ていこう?」

 それというのも愛奈美さんとの約束で、週末に植物園に行くことになったのだ。

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