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  • 砂のお城が壊れても

    4話完結の短編小説です。

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【短編小説】「おおきくなったらケッコンしよう」と約束してきた幼馴染が一生可愛い。~好きと言えない僕は、あらゆる言葉で想いを伝え続ける~

第1話「おおきくなったらケッコンしよう」  幼い頃の僕――新田優樹(あらた・ゆうき)は心が不自由だった。  自分がどうしたいのか分からない。今どんな気持ちなのか分からない。それ故に「どうしたの?」と聞かれても、「〇〇した」と答えられない。  母が聞いてくる。 「寂しいの? 痛いの? 悲しいの?」  そのどれにも当てはまらない気がして、首を横に振る。 「寂しい? 痛い? 悲しい?」  母の顔が徐々に焦りの色を帯びてくる。根気強く僕の気持ちを知ろうとしてくれているが

    • 【超掌編小説】あの頃の、君はもういない。

       どこか寂しそうに笑う君が好きだった。だから、何かと理由をつけて、近づいた。  徐々に寂しそうな君を見れる機会は減り、ついにこの日を迎えてしまった。 「それでは、誓いのキスを」  神父の声でヴェールを上げる。  ひとっつも寂しくなさそうな、その顔を見つめる。  あの頃よりも、もっと素敵な君の笑顔を。

      • 【超掌編小説】まちがいさがし

         友人に二つの画像を見せる。 「どこが間違ってると思う?」 「うう~ん」 「くっくっく。難しいだろ?」 「……これのどこが間違いなんだよ」 「……ん?」 「みんなちがってみんないい。それでいいじゃないか!」 「いや、確かにそれは一理あるけど……」  これ、まちがいさがしって遊びなんだよなあ。

        • 【超掌編小説】返りうち

           我は妖狐。幼女に化け、人をからかうのが趣味じゃ。 「うえーん」 「大丈夫?」 「ママぁ……」 「迷子か。よし、お兄ちゃんに任せろ」 「ありがと、お兄ちゃん……とでも言うと思ったか小童が!」  くくっ、上手くいった…… 「おっほ、これがのじゃロリか。たまんねえ!」  しまった、こやつ変態じゃ!

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        記事

          【超掌編小説】最強の能力

          「チートスキル、授かるならどんなのがいい?」 「そりゃやっぱ無尽蔵の魔力だろ」 「ちっちっちっ。これだからミーハーは」 「はぁ?」 「そういうありきたりなのじゃダメなの」 「じゃあどういうのならいいんだ?」 「尿意を催させる能力」 「なにその最低で最強なチートスキル」

          【超掌編小説】最強の能力

          【140字小説】予期せぬ邂逅

           自称絵描きの友人が言う。 「最近、『#AI学習禁止』ってハッシュタグ、よく見るだろ?」 「確かに見るなあ」 「俺もつけたんだよ、それ。そしたら、『下手な絵なんてわざわざ学習させねえよw』ってコメントされちまった」  友人の発言に衝撃を受けた。  まさかこいつが、あのドヘタクソの正体だったとは。

          【140字小説】予期せぬ邂逅

          【短編】クラスメイトの女子に〇〇〇〇のサイズがコンプレックスだと打ち明けられた。よし、何とかしてやろう!

          「ねえ、井波くん。昨日のバレーボール見た?」  昼休みの屋上。  唐突にクラスメイト――結城初乃(ゆうき・はつの)が話しかけてくる。 「ああ、見たよ。すごかったな」  俺、井波傑(いなみ・すぐる)の脳内に、昨夜テレビで見たオリンピックの女子バレー選手たちの姿が浮かぶ。  その中でも特に強く思い浮かべるのは一人。 「特に冴島選手。マジすごかった」  女子バレー日本代表の冴島(さえじま)選手。  彼女はスポーツマンながら、抜群のスタイルを武器にモデル業でも活躍する二刀流

          【短編】クラスメイトの女子に〇〇〇〇のサイズがコンプレックスだと打ち明けられた。よし、何とかしてやろう!

          【掌編小説】君が聞くとき、だいたいは。

          「この服、どうかな?」  隣の席の女子生徒、鈴木成美(すずき・なるみ)から見せつけられたスマホ。  画面にはガーリーなファッションに身を包む彼女の姿が。 「鈴木さんはどう思うの?」 「もう、工藤くんいつもそれ」  僕、工藤新太郎(くどう・しんたろう)がそっけなく返すと、彼女は頬を膨らませてみせた。  でも仕方がない。これしか言いようがないのだから。 「君自身がどう思うか、大事なのはそれだろ?」  というか、まあ、彼女がこうやって何かしらを「どうかしら?」と聞いてくる

          【掌編小説】君が聞くとき、だいたいは。

          【140字小説】腐っても人

           念願のフォロワー10万人を達成。  しかし、インプレ稼ぎでコメントをするやつらが増えた。  煩わしいことこの上ないので、試しに反応しなさそうな迷子犬に関しての呟きを投稿。  すると普段はコピペばかりのインプレゾンビどもがひたすら拡散。  結果として迷子犬は飼い主と再会。  どうやら腐っても人らしい。

          【140字小説】腐っても人

          【エッセイ】勝手に名付けられてばかりの僕ら

           〇〇世代ってよく言われる。  ゆとりだとか、「Z」だとか。  その呼び方に良いとか悪いとかの捉え方をくっつける人もいれば、善し悪し関係なく「特徴」としてそういう呼び方をする人もいる。  いずれにせよ、名付けられる側としては不自由に感じてしまう。  そもそも「呼び名」って、誰が考えるんだろうね。  僕らは大抵、自分から名乗れる自由とは縁遠い気がする。  名前は親に付けてもらうし、〇〇世代は大抵上の世代の人たちが付けるし、あだ名や蔑称、愛称に関しても他人が付ける場合

          【エッセイ】勝手に名付けられてばかりの僕ら

          140字小説【俺の嫁】

          「最近冷たくない?」 「べつに」 「もしかして浮気?」 「そんなわけないだろ!」 「スマホいじってばっかじゃん」 「実はな……これを見てくれ」  彼が見せてきたスマホには、可愛い女性キャラが。 「何この子」 「最近ハマってるゲームの育成アイドル。めっちゃ可愛いだろ?」 「浮気じゃねーか!」

          140字小説【俺の嫁】

          【エッセイ】コンビニに救われる

           寄ろうだなんて、正常な頭では考えるはずもないのに。  帰り道、道路わきのコンビニに、惹かれる。  陽の落ちたうす暗闇にたたずむ光る箱。  飛んで陽にいる虫みたいにして、車たちが駐車場に吸い込まれていく。  仕事中、必死で浮かべていたうすっぺらな笑顔が、自動ドアに迎え入れられると同時に剥がれかける。  買うものは決まっている。  それなのに他にも買いたいものを探してしまっている。  ここには選ぶ自由がある。  必要なものだけしか買わないなんて、つまらないでしょう。  もう「そ

          【エッセイ】コンビニに救われる

          【いちばんかっこいい必殺技】

          「いちばんかっこいい必殺技考えようぜ!」 「最強パンチ」 「クレイジーキック」 「う~ん、メガちんはどう?」  突然話をふられ、戸惑いつつもメガネの少年が言う。 「……エ、エンシェントヘルブレイズ」 「「「うおー、かっけえ!!!」」」  彼らの友情が、エターナルに続くことを祈ってやまない。

          【いちばんかっこいい必殺技】

          【エッセイ】僕らはいえない傷を抱えて生きる。

          「あんたに何が分かるんだよッ!!!」  ……って、叫びたくなる時がある。  誰にも理解してもらえそうになく、誰かに伝えることもできないような心の傷を負った時だ。  いつまで経っても苦しい気がして、治る気配もみじんもない。  胸の中が痛くて痛くて仕方がない。  だけど「こういう感じで痛いです」って、言葉にすることも難しい。  誰かに話したら話したで、傷口を広げてしまいそうで怖い。 「大丈夫、そんなの誰だって経験してるよ」  ……なんて分かったようなことを言われた

          【エッセイ】僕らはいえない傷を抱えて生きる。

          【短編小説】美少女ゲームの案内役に一目ぼれしてしまった。

           俺……朝浦太陽(あさうら・たいよう)は、恋愛シミュレーションゲーム『AIのカタチ』ベータ版にテストプレイヤーとして参加していた。 「以上でチュートリアルは終了となります。お疲れさまでした♪」  そんな俺をねぎらうのは、ここまで案内してくれたいわゆるガイド役のキャラクター、早乙女瑠奈(さおとめ・るな)。  一応彼女は同じクラスの学級委員という設定ではあるのだが……  俺にはどうも、腑に落ちないことがある。 「うーん……」 「太陽さん、お気に入りの女の子は見つかりまし

          【短編小説】美少女ゲームの案内役に一目ぼれしてしまった。

          【短編小説】告白は救世のあとで

           周囲には邪悪な気配が満ちている。 「見えてきたぞ。もうすぐ魔王城だ!」 「……」  そして、この場所を歩く俺たち二人の間にも険悪な空気が流れていた。 「おい、なに黙ってんだよ?」 「……別に」  となりを歩く彼女を見れば、『あんたなんか視界に入れたくもない』とでも言いたげにそっぽを向かれた。 (ほんと、なんでこんなに機嫌悪いんだ……?)  不機嫌丸出し中の魔法使いのユリカと勇者の俺アレクスは、魔王討伐のために冒険に挑んだ。  数々の危機をくぐり抜けてやっとこ

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