こばなし

詩/エッセイ/短編小説/その他

こばなし

詩/エッセイ/短編小説/その他

マガジン

  • 短編小説

    これまでの作品。

  • エッセイ

    たまに書くエッセイ。自分の考えたことや、体験談がメイン。

  • しばらくは玉石混合。

  • 砂のお城が壊れても

    4話完結の短編小説です。

最近の記事

  • 固定された記事

【短編小説】「おおきくなったらケッコンしよう」と約束してきた幼馴染が一生可愛い。~好きと言えない僕は、あらゆる言葉で想いを伝え続ける~

第1話「おおきくなったらケッコンしよう」  幼い頃の僕――新田優樹(あらた・ゆうき)は心が不自由だった。  自分がどうしたいのか分からない。今どんな気持ちなのか分からない。それ故に「どうしたの?」と聞かれても、「〇〇した」と答えられない。  母が聞いてくる。 「寂しいの? 痛いの? 悲しいの?」  そのどれにも当てはまらない気がして、首を横に振る。 「寂しい? 痛い? 悲しい?」  母の顔が徐々に焦りの色を帯びてくる。根気強く僕の気持ちを知ろうとしてくれているが

    • 【短編小説】解雇通達

      「エリナ。悪いが君にはこの屋敷のメイドをやめてもらう」  我が主——アダム・マイヤーズ様の部屋にて。  私が告げられたのは解雇通達でした。 「解雇……ですか?」 「そうだ」  信じられません。  私は孤児だった幼少のころ、アダム様のお父上に拾われ、同年代のアダム様をお世話するように命を与えられました。  以来、愛情をもってお世話させて頂いていたというのに。 「私のご奉仕になにかご不満が?」 「いいや、僕からするとまったく問題ない」 「では、どうして――」

      • 今日の更新はお休みいたします。明日こそ短編投稿します!

        • 【短編小説】「もう、お兄ちゃんって呼ばないから」

          「航くんのこと、もう、お兄ちゃんって呼ばないから」 「……は?」  俺、西野航(にしの・わたる)は最愛の義妹——西野凪(にしの・なぎ)から突きつけられた言葉に困惑した。  凪は10年前、父の再婚によって家族になった二つ年下の女の子。  血のつながりは無いが幼少から生活を共にしており、目の中に入れても痛くないほどの……俺にとって大切な義妹。  そんな彼女の様子がここ最近おかしかったため、「ケーキでも食べないか?」とリビングに誘い込んだところ――  告げられたのは「もうお兄

        • 固定された記事

        【短編小説】「おおきくなったらケッコンしよう」と約束してきた幼馴染が一生可愛い。~好きと言えない僕は、あらゆる言葉で想いを伝え続ける~

        マガジン

        • 短編小説
          474本
        • エッセイ
          29本
        • 19本
        • 砂のお城が壊れても
          4本

        記事

          【短編小説】幼馴染は世界で一番

          「あーもう。なんで幼馴染ばっかり負けちゃうのよ!!」  俺の部屋でマンガを読んでいた幼馴染——秋元凜々花(あきもと・りりか)は突然叫んだ。 「どうしたいきなり。負けない作品もあるだろ」  部屋の主である俺、城野春太(しろの・はるた)は眉をひそめつつ彼女をなだめようとする。  しかし凜々花の怒りはおさまらない。 「はるくんの紹介するラブコメ、全部幼馴染がフラれるじゃん!!」 「いや、それは紹介した中から君が選んだ作品が、たまたまそうなだけで――」 「もういい」 「いや、

          【短編小説】幼馴染は世界で一番

          【短編小説】となりの猫の猫目さん

           僕、好野陽太(よしの・ようた)には気になる人がいる。  同じクラスの女子生徒、猫目ゆる(ねこめ・ゆる)さんだ。  ホームルームでの席替えで、なんと……  猫目さんと隣同士になってしまった! 「にゃむにゃむ……」  窓際の席の彼女は、授業中だというのにスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。 「……」  耳だけは先生にかたむけつつ、視線は寝ている彼女に向ける。  綺麗なショートボブの黒髪に、尻尾みたいな長めの襟足。  机に突っ伏してはいるが、腕で隠しきれていない幼げな横

          【短編小説】となりの猫の猫目さん

          【短編小説】クラスの彼女はツンデレラ

           ぱちぱちぱち、という打鍵音が放課後の部室に響く。 「彼女は氷のように冷たい視線で……いや、違うな」  僕——山江和喜(やまえ・かずき)はノートPCのキーボードから指先を離した。 「突き刺すような視線で……いや、ジト目で……うーん、そもそも……」  更には腕を組み、ひとりごとをブツブツと漏らしている。 「は~、どう書けば伝わるのか全然わからん」  最後にはそう言って頭を抱えた。  そんな僕を見かねたのか、なぜかこの部屋にいる部外者があきれた様子で口を開く。 「だ

          【短編小説】クラスの彼女はツンデレラ

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(4/4)

           オレンジ色の景色の中、僕と愛奈美さんは並んで歩いている。 「……」  僕はやたらと緊張してしまい、愛奈美さんに話しかけられずにいる。 「あ、あのさ」  沈黙を破ったのは愛奈美さんだった。 「さっきは助けてくれて、ありがとう」  彼女はぽつり、ぽつりと語り出した。 「私ね、あんなふうに言ってたけど、本当はすっごく怖かったんだ。でも、博士くんの姿が見えた時、すっごく安心した……」  愛奈美さんはそう言うと、肩を寄せてきた。 「それから、キレイな花壇だって言って

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(4/4)

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(3/4)

           愛奈美さんとお昼を共にしてから数週間。  僕は夢のような日々を送っていた。 「はー、今日も愛奈美さん、可愛かったなあ……」  あれから毎日のように、僕は愛奈美さんとお昼ご飯を食べた。  休み時間や登下校の際に話すことも増え、以前からすると明らかに距離が縮まっている。 「っていうか今度の日曜日、何着ていこう?」  それというのも愛奈美さんとの約束で、週末に植物園に行くことになったのだ。 「前日までに準備しておくとしよう」  思わず口に出しながら、僕はるんるん気分で

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(3/4)

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(2/4)

           翌日の昼休み。  僕は八坂さんに声をかけられ、昼食の総菜パンを片手に中庭へと同行した。  僕らが向かったのは花壇を見渡せるベンチ。  そこへ、八坂さんは腰かける。 「……森野くん、何してるの?」 「え? あ、えっと、」  僕はどうしていいか分からずに、直立していた。 「もー。遠慮しないで」  八坂さんはそんな僕を見かねて、ベンチの空いたスペースをぽんぽん叩き、着席をうながした。 「じゃあ……お言葉に甘えて」  ベンチに座ると、当然ではあるが八坂さんの肩と僕の肩

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(2/4)

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(1/4)

           僕は森野博士(もりの・はかせ)。  虫が大好きな僕は、騒がしい休み時間の教室で、今日も今日とて昆虫に関しての参考書を読んでいる。 「おいハカセ。今日も虫みたいな顔してんなー」  ニタニタとした笑い声に顔を上げると、クラスメイトの日野猛(ひの・たける)と、その取り巻きが絡んできた。 「そんなに虫の本ばっか読んでると、虫になっちまうぞ?」 「たまには俺らの遊び相手になってよ~」 「そうだ、虫ごっことかどう? 俺たちが害虫駆除業者で、ハカセが害虫役」  彼らはひと通りしゃ

          【短編小説】学年一の美少女クラスメイトが、カースト底辺の虫オタクな僕のことを好きって嘘ですよね?(1/4)

          【掌編小説】約束

          「進捗どうですか、先生」 「おかげさまで良い調子だよ。それはさておき、先生はできればやめて欲しいな」  ほぼ無遠慮に部屋へ上がり込んできた女性編集者に、僕は苦笑いを浮かべる。 「将来有望な作家さんなんだから、今のうちから先生って呼んでもよくありませんか?」 「まあ、そこまで言うなら勝手にしてくれ」  彼女の言動から圧力を感じた僕は、早々に抵抗を諦めた。  とある出版社の編集者である彼女との出会いは、一通のメールがきっかけだった。  彼女は僕がネット上に投稿している

          【掌編小説】約束

          【掌編小説】マグカップ

           Netflixで映画を見終わった後、無性にむなしくなる。  感想を語り合う相手がいないだけで、こんなにも寂しくなるものだとは、思ってもみなかった。  ——久々にハニーラテでも飲むか  自嘲気味に笑いつつ、孤独感を紛らわせようとキッチンへ向かう。  食器棚には、かつて二つあったマグカップの、そのうちのひとつが寂しげにたたずんでいた。 「……」  虚無感に襲われる前に、それを食器棚から取り出す。  あとはコーヒー豆に、はちみつと豆乳を用意し、目の前にはひととおりの材料が

          【掌編小説】マグカップ

          【掌編小説】炭酸水

           ——黄昏時には、まだ早いか  沈む夕日が見たくなり、ひとり、海辺へとやってきた。  のどに渇きを覚え、携帯した炭酸水を飲む。  しゅわり、しゅわりという泡の音が、喉の奥ではじけては消えていった。  それは波の音とリンクして、心地良く僕の鼓膜をゆらしてくれた。  ——波の音って、お母さんのおなかの中の音と一緒なんだって  あの日そう語った君は、今、どこにいるのだろうか。  君との出会いは、ちょうど、今日みたいに心地良い波の音が聞こえる日だった。  不意に、地平線に沈む

          【掌編小説】炭酸水

          【掌編小説】姿見

           リビングにて。緊張の面持ちで、姿見の前に立つ。  ——うーん、こう、いや、こうか……?  こうでもない、ああでもないと、髪型や服装をあれこれと試している。  今日は会社でのプレゼンが控えている。  好印象を与えるためにも、身だしなみには気をつかわなければならない。  ——分からんなぁ  迷ったあげく、客観的な評価が欲しくなった。 「あのさ――」  と、声をあげたが、返ってくる声はない。  当然だ。この部屋にはもう、僕しかいないのだから。  物寂しくなった自分に

          【掌編小説】姿見

          【掌編小説】にんにく

           久々に食うか、と足を運んだラーメン屋。  いらっしゃーせー、という元気のいい店員さんの声と、食欲を刺激するスープの香りが出迎えてくれた。  カウンターテーブルに通された僕は、さっそくオーダーを済ませる。  漬け物を食べながら待っていると、数分後には注文したラーメンが目の前に置かれた。 「いただきます」  箸をとる前に手を合わせ、一緒に頼んでいたおろしにんにくをラーメンに投入していく。  ——?  そこでふと、脳裏に疑問が浮かんだ。  僕はいつから、にんにくをラーメ

          【掌編小説】にんにく