マガジンのカバー画像

RENAの軌跡

59
シンガーソングライター 鳥居れなさんの連載エッセイを、まとめました✨ 幼少期や10代の頃を、感じたままに綴られています⏳ 語り口がユニークで、一篇の物語としても楽しめます📖
運営しているクリエイター

#思い出

26.あの世に持っていけるもの

26.あの世に持っていけるもの

私たちは 裸の体ひとつで この世に生まれ
そして この身ひとつで あの世へといく

〝あの世にたったひとつだけ持っていけるものがある。
 それは思い出〟

あるドラマを観てこの言葉が強く印象に残った。

裸で生まれ裸で死ぬけれども、
ただひとつ思い出だけは
この魂に刻まれてあの世へ持っていける

人は皆、命をもらって
死ぬその日までを歩いていく。
ゴールには死がある。

どうやって生きたって、ゴー

もっとみる
25.ボートとしゃぼん玉

25.ボートとしゃぼん玉

穏やかに晴れた5月6日
私たちは真っ白のシャツに袖を通して
しっとりと黒い
スリーホールのドクターマーチンを履いて
お揃いの腕時計をして家を出た。
のんびりとあったかい太陽の下で
手をつないで歩いた。

ひばりヶ丘の小さなアトリエで、
シルバーのアクセサリーを、
お互いのことを思いながら
トンテンカンテンと作って

それを大切に身につけながら
ピカピカの心でまた電車に乗った。

お互いの心をお互い

もっとみる
18.兄妹と襖

18.兄妹と襖

子供には開けるのも閉めるのも、
少し力のいる襖だった。

子供部屋の6畳和室と、
テレビの置かれた居間とを仕切る襖

大人のお話と、子供の眠りとを仕切る襖

クリーム色の戸襖で横に一本くすみ緑の帯が入っていた
23歳の今、子供時代を過ごしたあの平家を思い出すと
「あの家好きだったなぁ」としみじみ感じる。

果たして何歳頃の記憶だか、思い出されるものは
バラバラに散らばっているので、それぞれ時期が

もっとみる