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ぼくの兄貴はスフィンクス

ぼくが中学生のころ、お風呂からうめき声が聞こえてきたことがあった。 そのとき兄貴が風呂に入っていたのだが、「うっううっ……うっうっ…」という非常に不気味な声だったから、ぼくも母も兄貴が心臓発作か何かになったと思って心配し急いで風呂場に駆け込んだ。 「たーかー?!大丈夫ねー?!」 母が勢いよくドアを開けて風呂場を見ると、兄貴がスフィンクスの体勢で糞を漏らしていた。 (イメージ画) 正確にはこんな神秘的な顔じゃなくて、もっと神父に懺悔する死刑囚みたいな顔で泣いていたのだ

    • 大人を構成するものについて

      悩み事を相談したところで、大人は非共感的である。 私はそれを心の経年摩耗のせいだと考えていた。つるつるになった、とっかかりの無い心が、人を「大人」たらしめているのだ、と思っていた。 実際それは部分的に正しかった。 働いていると思索する心の余地がまるでない。 仕事は常にやるべきことがあり、時間制限があり、素早く、かつ丁寧に扱わなければならないので、「私」に耽る時間はない。 家や移動時間に「私」に耽るなんてそんな辛いことをわざわざやるのも、なんだか億劫に感じる。 休めるときには

      • 神様ァ〜ッッッッッ!!!!!

        助けてください!! 本当に!!!!!! 私は何も悪いことはしていませんッ! 本当です!本当です! いえッ、別に善いことも! でもソレってあれですよね? 私が苦しいのとは関係ないですよね? え? ……あ、……っす。 ……っす。……うっす。……はい。 あ~。わっ、かりました〜……。 はい。 すんませんっした……。

        • 文章のリハビリ

          最近noteを更新しようと思ってもなかなか出来ない。 書いてる最中に文の乱れが気になってくるからだ。 ここが違う、ここが変、とやっていくうちにめちゃくちゃになって、面倒くさくなってやめてしまう。 文章がちゃんとした論理になっているかを気にするのは特に最悪だ。 吸って吐いてを無意識に出来ているのは何故か想像するのと同じことで、一度考え出すと文の呼吸が乱れる。 手癖で書いた方がいいこともある。 今や巷に溢れかえっている文体を真似するのも手ではあるけど、かなり抵抗を感じる。 例

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          はりぼての達観

          私が近年感じている創作物への腹立たしさを、芥見下々は他人の著作の帯で完結させてしまった。 あるいは下記のポストもまた私の気持ちを言い尽くしている。 要は、はりぼての達観がはりぼてのまま通用する世界と、それを無邪気に楽しんでいる「冷笑家」が、私はこの上なく憎いのである。 その意味で「推しの子」や「薬屋のひとりごと」といった、主人公が大変なことを経験してきたとはいえ、そこで考えるのをやめてしまって傍若無人な振る舞いをしてしまう作品は本当に腹立たしい。 うっかりすると読者を軽

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          犬人間

          久々に会った同窓は全く好ましい人間になってしまっていた。もとより好ましい人間ではあったが、今ではもう犬のような、居るだけで場が和むような存在感を放っていたのである。記念に撮った彼の写真なんて、柴犬が顎を愛撫されているときのそれであった。 その写真を見るたびに、私は、この人間を信じきった顔は如何にして出来るのか、と思案せずにはいられなくなる。私の濁り切った、小悪党のみみっちいほくそ笑みとは根本から訳が違う。積み上げてきた実績からくる自信によるものか、はたまた単に彼の顔の造形の

          葬送のフリーレン 英語字幕の気付き

          YouTubeの動画やネトフリで観る作品などは基本的に英語字幕をつけるようにしています。勉強しようという殊勝な心がけではなく単なる趣味です。 さてフリーレンに出てくる七崩賢の大魔族には「〜の」という渾名が付いています。アニメで登場したキャラだと断頭台のアウラがそうですね。 断頭台のアウラは英語表記だと”Aura the guillotine”──アウラ・ザ・ギロチン──という名前になります。カタカナにするとダサい。 フリーレンにも渾名があります。 葬送のフリーレン。英語だ

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          電子書籍で三島由紀夫を読みたい

          どうやら電子書籍の対義語はないらしい。 僕はなんとなく「物理本」だと、口にも思考にもしたことはないが、そういう感覚はあった。 しかし「物理本」と調べても物理についての本が出てくるばかりで、紙の印刷された本はひとつも影がない。 こんな馬鹿な調べ方をした以外に色々工夫してみたが、電子書籍の対義語はなかなか定まっていないようである。 まだ電子書籍はニッチな需要なんだと思い知らされる。 本といえば特別に指定しなくても当たり前に紙の印刷された本なのだ。 そんな調子なので、読みたいのに

          電子書籍で三島由紀夫を読みたい

          詮索と興味の違い あるいは純愛について

          YouTubeのおもしろ動画はあらかた見尽くしたので、もう女性のための恋愛指南なんて全く自分に関係ない動画を見たりする。 「こういう男はクソ」とか「あなたは悪くない」的なリップサービスが大半ながら、稀に興味深いことを言ってくる人もいる。 先日見つけたのは「私のことどう思ってるかな?みたいなのは他人に対する興味ではなくただの詮索です」という主張。 私はそこまで見てゲッ、と思った。なんだか自分にも当てはまる気がする。 詮索と他人に対する興味はかなり近いので、私がそこを混同してない

          詮索と興味の違い あるいは純愛について

          名前について

          もし子供が出来たら、どのような名前をつけようか。 個人的にはあまり漢字の意味にとらわれたくない。 みんなそんなこと気にしてないし、意味なんてつけたら子供にとって最初の呪いになってしまいそうだ。 実のところみんなが気にしているのは、漢字の雰囲気と音の響きなんじゃないか。 だって名前の意味を考えることよりも、自分の名前を書いたり、呼ばれたりすることの方が多い。 私には「柊」と書いて「シュウ」と呼ぶ名前の友人がいる。正確には「◯柊」なのだがネットに他人の本名を開陳するのは憚られ

          名前について

          いいいいーいいいーいいいーいい

          冷蔵庫へ向かう途中、2つおかしなことに気づいた。1つは、ご飯を食べたばっかりなのにお腹がペコペコだということ。1つは、キッチンでお母さんが死んでいるということ。といっても正確にはまだ死んでいないかもしれかった。いまだに血溜まりが広がっているということは、心臓が動いていて、破けた血管からせっせと出血しているからかもしれない。救急車とか心臓マッサージもまだ間に合うかもしれない。今やるべきこともなんとなく分かったけど、ご飯を食べてから考えようと思った。お腹が空きすぎてそれどころじゃ

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          コートとダンス

          お父さんのコートにはお目目がついています。 わたしが一人でお留守番をしていると、ボタンのお目目でこっちをじっと見てきたり、ときおり肩を痒そうにすくめたり、腕をぶらぶらさせて踊ったりしています。 でもわたしが話しかけたって全然お話ししてくれません。 そのことを木に話してみたら、 「あのコートはガンコモノだからね」と言っていました。 「ガンコモノってなに」 「わかんないよ。お父さんに聞いてみたら」 そういうと木はそっぽを向いて風と一緒にお話しをし始めました。 きっと木も

          コートとダンス

          【感想】君たちはどう生きるか

          初日に観てきました。 感想を率直に言うと「そういえば宮崎駿作品ってこんなんだったなぁ」という感じでした。 もっと具体的にいうと、夢みたいでした。 良い夢見たあとって「良い夢見たなぁ」と思うけど別にその夢って起承転結が綺麗に出来てる訳じゃないじゃないですか。 会話が噛み合っているんだかいないんだか分からないし、夢の場面と場面が首の皮一枚で繋がっていたりいなかったり……そんな感じなんですよね。 だから面白かったかって言われるとハッキリとは言えません。 ただすごい良い夢見れたって思

          【感想】君たちはどう生きるか

          創作と少女

          最近のモットーはあらゆるものにフッ軽でいることだ。 ある程度の金と時間は惜しまず、人から誘われたらとりあえず行くし、勧められた作品はとりあえず観る。 というわけで後輩から勧められた2作品を観た。 「眩」と「玉城ティナは夢想する」である。 感想を正直に言えば、よく分からなかった。 少なくとも私のための作品ではないな、という感じだった。 とはいえ「合わなかったわ」では合わせる顔がないので、両作品とも2回観て、何が彼女の心を震わせたのだろうという視点から作品の良さを探ることにした

          創作と少女

          日記

          死にたいと言ったあの子の、腹立たしいほど生気に満ちた唇を覚えている。 それは空間に空いた穴の輪郭ではなく、間違いなく動物の唇だった。 彼女は結局死ななかった。 でも死んだほうが良かったんじゃないかと思う。 SNSに詩の体裁をした駄文をぽつぽつと垂れ流すぐらいだったら、死んだほうが良かったんじゃないか。 よく友人は「何歳までに死にたい?」なんて話をする。 どうせ30までに死にたいとか言うのが定石だ。 死にもしないのに。 この手の人間は死に関する細々とした知識はあるのに、自殺

          無神経(覚え書き)

          すぐ不機嫌になったり、気を遣えない男ほど彼女が出来ている。 優しい男が良いという口で、愚痴を漏らしながらイライラさせる男と付き合っている。 すぐ不機嫌になったり、ヒステリックな女ほど彼氏が出来ている。 理性的な女が良いという口で、愚痴を漏らしながらイライラさせる女と付き合っている。 私は、自分の感情を自分で処理出来る人間のほうが偉いしカッコいいと思っていたけれど、まったく考えを改めてしまった。 選ばれるには、そこそこの無神経さが必要なんだ。 周りの人間たちが元・現恋人の悪

          無神経(覚え書き)