失敗作
私はロボットだ。
私を作った博士は先日死んでしまった。
博士は優秀で、ロボットの私にもとても優しく接してくれた。
私は博士をとても尊敬し、感謝している。
ある日、博士の部屋で私宛ての遺書を見つけた。
『私は君に謝らなければならない。
友人のいない私は、寂しさのあまりに、
ロボットの君に「感情」を作ってしまった。
おかげでとても楽しい最期を過ごせたよ。
ありがとう。だが、どうか許してほしい。
私が死んでしまった後、君が悲しむであろうことはわかっていたんだ。』
博士、残念だが、あなたの作ったロボットは失敗作だ。
私はあなたを失った悲しみを感じられなかった。
だが、今はそれがとてもありがたい。
博士は私にすべてを与えてくれた。
夜空に瞬く星空の美しさを
永遠を感じさせる雄大な海の波の音を
甘く心を掻き立てるバラの香りを
あのピザのチーズのとろけるようなおいしさを
すべてをゆだねても良いと思える毛布の柔らかさを
ともに語り合い、笑い合える安らぎの時間を
そして、私を大切にしてくれるあなたからの大きな愛を
ただ、あなたから学んだことの中に悲しみはなかった。
今日も空は晴れ、庭には花が咲く。
窓から見える海岸線は穏やかだ。
キッチンにはたくさんの食べ物が並び、
暖炉のある部屋で快適に過ごせるだろう。
けど、あなたがいないこの世界で悲しむことさえできないなら
きっと私は失敗作だ。
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