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イタリアン11その8 ナポリとの衝撃の出会い

旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪

ユーロスターで、フィレンツェからナポリへ

女性的で優美な建物が多いフィレンツェ、対照的なほど堂々として男性的な建物が多いピサを楽しんだ後、私達はイタリア版新幹線「ユーロスター」に乗り、一気にナポリまで南下した。
トスカーナ地方の景気は絵画の中の世界のように美しく、私達は車窓ナレーターになり切って楽しんでいた。

「こちら、皆様が憧れます、ヨーロッパ列車の車窓からの景色でございます」
「高速道路の景色とは、やはりだいぶ違います」
「見て下さい!トスカーナの景色はブドウ畑や曲がりくねった道がたくさんあり、本当にのどかでございます」
「空気もきれいでしょうね〜」
「はっはははっ!君ら解説も最高っ」
近くの新郎さん達から笑われつつ拍手を送られたので、私達は恥ずかしくなって解説をやめ、そこからはひたすら景色にまどろんだ。

「アズーリブルー」の、地中海

ローマ駅に着くと、方向を変えてナポリへ。
途中で見た地中海は、澄んだコバルトブルーで光にキラキラと反射している。
まるで、イタリアサッカー代表の真っ青なユニフォームを表現しているかのようだ。
アドリア海よりもより男性的なイメージを持ち、イタリアの表情は海までも無限大なのだと感じた。

車内のバール(カフェやバーの意味)車両へ行き、バーカウンターでウェイトレス体験などもさせてもらい、大いに楽しませてもらっていると、あっという間にナポリ駅に到着し、私達は大急ぎでツアーに戻った。

到着地を間違った?!

「え……ここ、イタリア?」
「フィレンツェより、だいぶゴチャゴチャしてない?」
「今までのイタリアと、全っ然雰囲気違うけど?」
「違う国に来ちゃったとか?!」
「心配しないで、あなた達。ほら、あそこの駅名、ちゃんとナポリって書いてるわよ!」
確かにツアーの方がおっしゃる通り、到着地は間違っていなかったようだ。

添乗員さんも、だいぶ緊張した表情だ。
「皆さん、離れないように気をつけて下さい。この辺りは、治安がとても悪いので。それでは、このバスに乗って下さい」
「はーい、君達!バスに乗って下さいね〜!」
「君、キレイだね。名前は?」
「なんて可愛いんだ!名前は?」

衝撃的な、ガイドとドライバー

バスドライバーに加え、車内から色々な建物を案内してくれるというガイドさんも一緒だったが、この御二方、フォーマルなドライバーとガイドとは全くかけ離れている。
とはいえ、映画から出て来たような、鮮やかな色のポロシャツにハーフパンツ、もう1人もパーティーに今すぐ行けそうなシャツにハーフパンツと、ファッショナブルではある。

バスに乗る時からいきなり声をかけられ、みゆと私は席についた途端思わず笑ってしまった。
「ナポリの人は、今まで行った所みたいにウインクとかじゃないんだ」
「ウインクどこか、いきなりハグされかけたよね……かなり、手が早そう」
「ちゃんと運転やガイド、できるのかな」

ナポリ風?!ドライブ

私達の不安は、見事(?!)的中した。
これまで生きて来た中で、一番荒い運転だ。
日本のスピード狂の車でも十分ハラハラしたが、彼らの危険なドライブなど可愛らしいものに思えてしまいそうな程、急発進急停止の連続で、車線変更の頻度も異常に多い。

それも、急に変更するのだ。
「また〜?!」
「てか、ちゃんと車線引いてなくない、ナポリ?!」
「本当に、今までのイタリアと同じ国なの?」

「彼の運転、気に入ってくれたかな?ここからは、僕の出番だよ」
ガイドさんは右側の一番前の席に乗った私達に、異常に抑揚のあるイタリア訛りの英語でそう言って来た。

堂々とした建物に魅了されて

左側の一番前の席におられる添乗員さんが、険しい表情でガイドにイタリア語で何か話すと、ガイドは厳粛な顔つきになり、イタリア語で説明を始めた。
添乗員さんの通訳に寄ると、右側に見えているのが、ナポリを代表する卵城だそうだ。
建築物も、オレンジを基調にした屋根のフィレンツェや、少しアラブ要素も見られたピサとも違い、独自の雰囲気がある。

「イタリアって元々国も違ったから、場所が変わったら建物の雰囲気もガラッと変わるね」
「一色でまとめてるね、ここの建物は。堂々とした感じは、今までの中でも群を抜いてるかも」
「せっかくこんな偉大な建物があるから、ゴミを拾ったらもっと輝きそう」
「みゆ、道路までちゃんと見てたんだ!よく見たら……ゴミ落ちすぎだね」
思わず笑っていると、またすごい急カーブが来た。

「ちょっと!」
と前を見ると、ガイドが振り返り、ウインクしてくる。
「あのままじゃ、ガイドもドライバーも首になりそう…」
私達は心配になり、ダメだよ、という印のジェスチャーをしてやったが、そのジェスチャーの意味は全く理解されなかったようだ。
赤信号の時にはドライバーまで振り返って、イタリア訛りの英語で何やらこちらに話しかけて来た。

いきなりの、ホテル到着の合図

ギギギ〜〜〜ッッ!!!!

今までの中でも特にひどい急停車があり、どうもホテルのすぐ近くに到着したようだった。
私達はそんなワイルドな運転に、もはや吹き出してしまった。
「なんていう運転なのっ?もう!」
しかし、マダム達や高齢者の方々は特に気分を害していたようだ。
添乗員さんは彼らの対応に四苦八苦しながらも、私達をホテルに導いて下さった。

「待って待って」
「一緒に写真撮ろうよ!」
「今夜は空いてない?近くのクラブで一大イベントがあるんだ」
「君達、踊り方もクールに違いないよ!」
「私達、トランスは嫌いだよ?」
「音楽は、ハウスとかだよ!もう僕、君に夢中だよ!」
「僕は君に夢中さ!」
「はい?!あのね、今からホテルに行くの、私達は!」

私達はホテルに足を向かわせながら、日本語で議論した。

「“夢中“なんて言葉を、初対面で使うなんて!」
「日本で言ったらヤンキー混じりなホストかな。彼ら」
困ったことに、健康的な小麦肌を持ち、スタイルもよく、ワイルドなサッカー選手のように表情豊かで、髪型やファッションもお洒落だから、たくさんの女性達が引っかかりそうである。
その間にも彼らはポケットから何かを出し始め、書き始めていた。
そうしながらも、私達の後をつけて来る。

「君達、何言ってるか分からないよ」
「観光があるから、踊れないって言ってたの!」
「そ・ん・な!ねえ、これ、今日のパーティーのある場所のカードだよ」
「ここに僕と彼の番号を書いたから、少しでも時間があったら来て!」
彼らは私達を、ぎゅっとハグして来た。
「愛してるよ!」
最後のその言葉は歌と化し、私達は彼らのカンツォーネに見送られながら、逃げるようにホテルへと駆けた。

イタリアは、想像以上に表情豊か

アドリア海が地中海に、フィレンツェがナポリになると、安全運転はワイルド運転に。
挨拶のウインクはハグとカンツォーネに。
イタリアという国は、場所が変われば、運転の仕方や人もおおいに変わる表情豊な国なんだと、私達は身をもって知った。

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