hua

芥場。

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最近の記事

「中途半端に寄り添う」 2024/02/13

この世界のどのくらいの割合の人が自己を表現する言葉に違和感を覚えることなど全くなく過ごしているのだろう。英語圏ではSNSに自分のPronounsを書くこともある。私も実際、Instagramには自分のPronounsを書いているけれど、日本語で暮らしているとそういった表明をすることはほとんどなく、日々の中でちょっとしたズレを感じながら過ごすことになる。名詞も形容詞も自己の、または他者のアイデンティティを表現する際に使われる言葉たちだ。「〇〇な女」「〇〇な人」そういった言葉たち

    • 日記『終劇を可視化する』

      30歳の誕生日の日に死のう。 この考えを始めたのがいつからだったかもう覚えていないが、随分と昔から漠然とそう考えながら過ごしている。カウントダウンのアプリが、その日が訪れるのが後どのくらいなのか毎日教えてくれる。 大体残りは2000日くらい。あと2000日で何ができるのだろう。 映画、美術館、漫画、小説、食べ物、景色、友人…素敵だと思うものに触れる。感性を磨くなんて言うと高尚なものに聞こえるかもしれないが、つまり自分の「好き」を体験してそれの言語化を繰り返すこと、それが私の

      • 備忘録『Immersive Museum』

        大阪、堂島リバーフォーラムで開催中の『Immersive Museum OSAKA』へ行ってきた。堂島川の向かいには大阪中之島美術館があって、一時期大学の研究の関連でよく中之島に行っていたから懐かしい思いを胸に、会場へ足を進めた。 とあり、プロジェクションマッピングを駆使した絵画の没入体験ということで非常に楽しみにしていた展覧会だった。私の個人的な感想は「試みは面白いけれど、まだ発展途上感が否めない」というものだった。 まず、今回の展覧会に印象派絵画たちを登場させるという

        • 日記『茫々』

          中学校、高校時代で結構仲良くしていた人と久しぶりに会う機会が続いた。昔話に花を咲かせつつ、近況の話になった。その同級生は浪人をしていて今年ある大学に合格していて、私は今春から大学院に進学している。 「学歴で〇〇に負けた」「最終学歴〇〇になるの良いね」「大学院で〇〇に行くのは凄いね」大学院に進学してから、幾度も浴びた言葉たち。その全てを彼からも貰い、釈然としないまま、でも自分の中で完全な言語化を探せないまま、彼と会うことは無くなった。正直これらの言葉には辟易している。 きっ

        「中途半端に寄り添う」 2024/02/13

          村上春樹『女のいない男たち』雑感

          2022年下半期は村上作品を読む機会が多かったように思う。 特に何度も読み返したのが「女のいない男たち」という短編集だ。6つの短編は文字通り「女のいない男たち」を描いている。妻に浮気をされたもの、死別したもの…様々な男たちが作品に登場する。英語版ではそれに『恋するザムザ』という作品が加えられて7つの短編として出版されている。個人的に好きだと感じた作品は『シェエラザード』『木野』そして英語版にある『恋するザムザ』である。全ての感想を書いておこうかとも思ったけれど、この3作品だ

          村上春樹『女のいない男たち』雑感

          村上春樹『猫を棄てる』雑感

          村上作品において「猫」は印象的なモチーフの一つだ。 『木野』では、主人公の経営する喫茶店にある野良猫がやって来るようになるのをきっかけに、喫茶店には客が入るようになる。『木野』だけに限らず、村上作品の中で「猫」は頻繁に登場し、彼らは幸福を運び、かつ幸福そのもののメタファーとして存在する。 作家村上春樹としてのルーツを初めて綴ったエッセイ『猫を棄てる 父親について語るとき』は、海辺へ猫を棄てに行ったという父親との思い出から始まる。 父・村上千秋は京都の寺の次男として生まれ

          村上春樹『猫を棄てる』雑感

          日記『友人からの手紙』

          中学校時代からの友人の話をする。 中学校では部活動が同じで、高校では2年間クラスが同じだったけれど、二人で遊びに行ったり、悩みの相談をしたり、そういった付き合いをするようになったのは大学に進学してからだった。そんな友人と久しぶりに会った。教育実習、就職活動、院試、そういったことが重なって、直接会うのは数ヶ月ぶりになっていたようだ。友人とは、集合場所と時間だけ決めて、それ以外は何も計画を立てずに会うことが多い。二人でどんなことがあっただとか、推しの話だとか、将来の話だとか、そん

          日記『友人からの手紙』

          備忘録『超コレクション展 99のものがたり』

          ■大阪中之島美術館2月2日に開館されたばかりの大阪中之島美術館の開館記念となる展覧会「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」へ行ってきました。寒空の中、駅から凍えながら堂島川を渡り、黒いキューブ状の美術館に入ると、4階建てという美術館しては珍しい高さのある建築と吹き抜け、それを貫くように設置してあるエスカレーターが印象的でした。館内には芝生の広場もあるせいか家族連れも多い印象で、老若男女様々な人達で賑わっていました。 ■超コ

          備忘録『超コレクション展 99のものがたり』

          大学受験失敗から大学院進学までの私の話。

          お久しぶりです。2月も中旬になりました。受験生はそろそろ二次試験が始まる季節、ということで私の大学と大学院の受験の話を少ししようと思います。これから試験を控えている受験生や、就活について悩んでいる大学生の支えに少しでもなれたら嬉しいです。 私は現在大学4年生で、主に英語教育や英語学の研究を4年間してきました。研究内容からもわかる通り、文系大学生です。大学3年生くらいに大学院へ進学しようと思い、国公立大学3校に合格しました。自分の大学ならまだしも、他大の大学院、しかも文系とな

          大学受験失敗から大学院進学までの私の話。

          日記『不一致、もしくは』

          高校時代、仲の良かった後輩が恋人と別れた時に何が原因だったのか聞いてみると「性格の不一致」だと答えたのがいまだになんとなく印象に残っている。当時は特に何も考えずに笑っていたが、最近この「不一致」についてよく考える。 進学と共に都会に出て、一人暮らしをはじめてもうすぐ5年目になる。学生時代はそんなに深刻に捉えていなかったが、今思い返すと学生時代過ごした田舎町はとても小さな世界だったと感じざるを得ない。田舎に長い間住んだことのある人間にしかわからない、独特な閉塞感。どこへ出かけ

          日記『不一致、もしくは』

          日記『夜深人静』

          中秋の名月、8年ぶりに名月が満月となるらしい。 9月後半、少しずつ夜が肌寒くなっていき、夜出かけるのにノースリーブだと外出にタイムリミットが生じてしまうような季節に、私は毎年あえてノースリーブのワンピースを着て、鍵とスマホ、イヤホンだけ持って深夜を徘徊する。タイムリミット付きの、秋を最大限楽しむための装備である。とある音声を聴きながら、暖かい飲み物を飲み、当てもなく歩いて、適当なベンチに腰掛けて月を楽しむ。いろいろなことを考えながら、時に頭を空っぽにしてただ月を眺める、秋の

          日記『夜深人静』

          備忘録『ハリーポッターと魔法の歴史展』

          先日、「ハリーポッターと魔法の歴史」という展覧会に足を運んだ。文字通り、ハリーポッターという世界観を支えるアイディアの源や歴史について、ハリーたちが通うホグワーツ魔法魔術学校の授業科目に沿って10章の展示がされている。 展覧会全体の感想を一言で言うと、現実とハリーポッターの世界の境界線が今までより薄く感じさせるような展覧会だった。例えば第1作のタイトルでもある「賢者の石」は、かつては「命の水」という永遠の命を手に入れることができる水を生成すると考えられ、中世ではその獲得に躍

          備忘録『ハリーポッターと魔法の歴史展』

          日記『変身』

          思えば、自分以外の何者かになりたいと思い続ける人生だった。幼少期はファンタジーの世界に陶酔し、青春はボーカロイドとハリウッドの世界に捧げ、現在はその他にもアニメやVtuber、KPOPなどに心酔している。自分の世界からは離れた世界を好きになる理由は「羨望」以外の何者でもない。自分という存在をありのままで愛せるかと尋ねられるとそれに肯定することのできない自分がいる一方で、自分という存在が嫌であるかと言われれば、即答で嫌だと答えるほど自分の存在に対して価値を見出せない訳ではない。

          日記『変身』

          日記『文字と私』

          自分は元来「文字」というものが好きな人間なのだと思う。小さい頃、あまり読書が好きではなくどちらかというと外で遊ぶことの多かった兄と比べ、よく一人で読書をしていた私に周りの大人たちが「たくさん本を読んで偉いね」と言ってくれたのが原因なのかもしれないし、ただ本を手に取る機会が多い環境を与えられたせいかもしれない。小学校の時には様々なファンタジー作品やホラー作品を図書館で大量に借りては読んでを繰り返していた。今となってはあまりに稚拙で目も当てられないが、10歳前後にして創作を書いて

          日記『文字と私』

          和気香風

          【和気香風】のどかな陽気になると、どこからともなくよい香りが漂ってくること。暖かな小春日和についていう場合が多い。 和気香風だなんて言うには少し時期がずれてしまったような気がしますが、過ごしやすい日々が続いていますね。もう少しすれば苦手な蒸し蒸しとした季節がやってくるのだと思うと少し憂鬱になってきます。…なんて前置きは置いておいて、先日新たな香水を発掘しようと百貨店へ赴いて、PENHALIGON'Sの香水を体験しに行きました。PENHALIGON'Sの香水は、香水オタクとし

          和気香風

          作品と作家の乖離性についての独り言

          ここ数年で私にとって衝撃的で受け入れがたいことがいくつも起きました。と言ってもその問題は最近浮上したものではなく、私がただ無知だっただけのものもありますが…。作品として素晴らしいものではあるものの、差別的な思想や犯罪を犯した、またはそのような疑惑のある人物が作り上げた作品に対して、私たち観客・読者はどのように向き合っていくべきなのでしょうか。きっとこの問題に絶対的な答えはないのかもしれないけれど、一読者として考え続けなければならないと私は思っています。大好きな作家・映画監督は

          作品と作家の乖離性についての独り言