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日記『友人からの手紙』

中学校時代からの友人の話をする。
中学校では部活動が同じで、高校では2年間クラスが同じだったけれど、二人で遊びに行ったり、悩みの相談をしたり、そういった付き合いをするようになったのは大学に進学してからだった。そんな友人と久しぶりに会った。教育実習、就職活動、院試、そういったことが重なって、直接会うのは数ヶ月ぶりになっていたようだ。友人とは、集合場所と時間だけ決めて、それ以外は何も計画を立てずに会うことが多い。二人でどんなことがあっただとか、推しの話だとか、将来の話だとか、そんなことをつらつらと話しながら気になるお店に入る。そんな無計画な小さな旅の時間が好きだった。

いつもと違っていたのは、帰りに友人が小さな袋をよこしてきたことだった。
「いつもありがとうってことで何か贈りたかった。私の自己満足だから貰ってくれると嬉しい。」友人はそう言って私に紙袋を渡した。
私は大学院進学、友人は地元での就職のために中々会うことが難しくなってしまう。友人の中で何か思うことがあったのだろう、私はそう思いながら受け取った。

帰宅。貰った紙袋には3つの小さなインクが入っていた。文章を書くのが好きな私へ贈りたいものだったらしい。誕生日だったり記念日でもない日に貰うプレゼントとはこんなにも嬉しいものなのだということを考えた。

プレゼントには一通の手紙が添えられていた。
「これからも〇〇が、何にも傷つけられず、何にも妨げられず、考えたり、学んだりできるよう願ってます。」
何よりも嬉しい、素敵な言葉だと思った。友人の言葉選びが好きだなと改めて気づかされた。友人のありのままの言葉が、飾られることなく、純粋に伝わってくる。
私はどちらかというと文章をこねくり回して、ああでもないこうでもないといじるタイプだと思う。友人の書く文章の純朴さが少し眩しく感じた。

友人へはお返しに便箋のセットを用意した。彼女の書く文章と同じ、素朴でいて鮮やかな便箋。どのような返事が返ってくるのか楽しみに贈ろうと思う。