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備忘録『ハリーポッターと魔法の歴史展』

先日、「ハリーポッターと魔法の歴史」という展覧会に足を運んだ。文字通り、ハリーポッターという世界観を支えるアイディアの源や歴史について、ハリーたちが通うホグワーツ魔法魔術学校の授業科目に沿って10章の展示がされている。

展覧会全体の感想を一言で言うと、現実とハリーポッターの世界の境界線が今までより薄く感じさせるような展覧会だった。例えば第1作のタイトルでもある「賢者の石」は、かつては「命の水」という永遠の命を手に入れることができる水を生成すると考えられ、中世ではその獲得に躍起になっている人々もいた。いわゆる錬金術の一つである。展覧会では16世紀に作成された賢者の石の作成方法を描いた絵図が展示されていて、かつては本当に賢者の石という存在が信じられていたのだということを思い知らされた。私たちが知らないだけで、もしかしたら「彼ら」の世界では賢者の石が存在していて、私たちマグルに知られないようにしているのかもしれないなんていう考えがよぎっていく。ロマンのある話である。

特に面白いなと思ったのは、作品でも登場する「透明マント」の展示だ。これは知ってしまうと会場での驚きとうきうき感が薄れてしまうので、会場に行った者のみの秘密にしておこう。

他にも魔女がかつて使用していた「漏れ鍋」だったり、レオナルド・ダ・ヴィンチの天体に関するスケッチだったり、大英博物館に所蔵されている様々な魔法界に関係するかもしれない資料が展示されているだけではなく、ハリーポッターの作者J・K・ローリングの草稿やメモ、イラスト版を描いたジム・ケイの原画、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」で使用された衣装など様々なものを見ることができた。

これまでハリーポッターの世界は自分の世界とは異次元のものであるというようにも思えていたが、この展覧会を通して自分の世界との境界線はグラデーションのようになっており、何かのトリガーであちらの世界に行けてしまうのではないかという思いが強まった。夢のある、美しい世界だと改めて思わせる展覧会だった。シリーズの読者は是非行って、感じたものを共有してほしいと思う。