見出し画像

備忘録『Immersive Museum』

大阪、堂島リバーフォーラムで開催中の『Immersive Museum OSAKA』へ行ってきた。堂島川の向かいには大阪中之島美術館があって、一時期大学の研究の関連でよく中之島に行っていたから懐かしい思いを胸に、会場へ足を進めた。

Dive in Art
鑑賞する絵画から、体感する絵画へ。
ここはあなたとアートの関係を変える場所。

Immersive Museum OSAKA

とあり、プロジェクションマッピングを駆使した絵画の没入体験ということで非常に楽しみにしていた展覧会だった。私の個人的な感想は「試みは面白いけれど、まだ発展途上感が否めない」というものだった。

まず、今回の展覧会に印象派絵画たちを登場させるという試みは本当に面白い。
その場面の「瞬間的な光」を絵画に落とし込むという当時としては革新的な試みに、新たに映像という視点を加えることによって「時間」や「空間」という概念を創出する。まさに「印象派の解体と再構築」であると感じる。

一方で、絵画作品の映像化に伴う「解体と再構築」の過程で失われたものがあるのも事実だと思う。印象派絵画だけの話ではないが、特に印象派絵画の中で注目すべき点はその画材にある。チューブ絵の具の登場により「印象派」の画家たちが戸外での制作へ駆り出すこととなったのは言うまでもなく、筆触分割と呼ばれる筆のタッチがそのまま残った絵の具の厚みを感じさせる作品づくりが印象派の大きな魅力であると思う。
映像化が作品と観客との間の「空間」を生み出し、作品が一種の「箱」となったと同時に、作品それ自体における厚みという「空間」を喪失してしまっている。作品の筆づかい、作者の息づかいが薄れてしまっているように感じた。

例えば「もし映像技術がより発展し、プロジェクター越しでも細やかな筆づかいや作品の厚みさえ表現できるようになったら」「もし作品が生まれる過程まで映像化することができ、作品の誕生を追体験できるようになったら」という未来を感じさせられた。芸術学という学問分野において、テクノロジーとの融合はどんどん面白くなっていっている分野だからこそ、これからの発展を見ていきたいと思わされる展覧会だった。

2023/07/23