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和気香風

【和気香風】のどかな陽気になると、どこからともなくよい香りが漂ってくること。暖かな小春日和についていう場合が多い。

和気香風だなんて言うには少し時期がずれてしまったような気がしますが、過ごしやすい日々が続いていますね。もう少しすれば苦手な蒸し蒸しとした季節がやってくるのだと思うと少し憂鬱になってきます。…なんて前置きは置いておいて、先日新たな香水を発掘しようと百貨店へ赴いて、PENHALIGON'Sの香水を体験しに行きました。PENHALIGON'Sの香水は、香水オタクとしては最高…!と言わざるを得ないものでしたので、備忘録がわりにここに書いておきます。香りやそのイメージに関しては私個人の感想も含まれますので悪しからず…!!

PENHALIGON'Sの"PORTRAITS"というシリーズに関して。このシリーズは香水一つひとつにその香水をイメージしたキャラクターが付与されていて、それぞれのキャラクター同士に人間関係が構築されているという面白い作品でした。この香水たちの舞台はとある時代の英国の上流社会。ペンハリガンの創業者である有名調香師ウィリアム・ペンハリガンとその周りの人々の物語が香水として表現されている、というものです。それぞれのキャラクターが表側の印象と裏の印象が違っていて、それもまた香りとして表現されています。さらに香水の瓶にはそれぞれキャラクターの印象を反映させた動物が彫刻のようについていて、そこからもキャラクターの性格を想像することができます。調香師さんの想像力と性格を香りに変換する能力が純粋にすごいと感じました。中でも私が気に入った作品をいくつか。

THE COVETED DUCHESS ROSE 誰からも愛されるローズ公爵夫人
「無垢で可愛らしい娘。しかし、コルセットのような退屈な日々からの解放願望を抱える」という香水の説明通り、あまり癖のない爽やかで甘い薔薇の香りがはじめはするのですが、その香りに隠れてウッディの香りが漂ってくる作品です。香水のキャラクターは「狐」で、若い美しさとずる賢さを表現しているそうです。最初に嗅いだときの朝露のような爽やかな印象と、夜の雰囲気を感じさせるウッディ系の香りの対比が、解放願望を持つ娘の姿をまさに表しているようでした。全体的に甘い香りが目立つので、可愛らしく少し控えめな方がつけていたらその方のイメージ通りの香りとそのイメージを裏切る大人っぽいウッディ系の香りでギャップがあって良さそうだなあと思いました。

CHANGING CONSTANCE 先進的な女性、コンスタンス
「自分の意志を持ち慣習にとらわれない自立した女性」であるコンスタンスを表現した香水は、爽やかなカルダモンの香りをメインに、塩バターキャラメルやタバコ、バニラなど意外性のある香りでした。淑やかさが女性らしさの象徴とされる時代で、ズボンを履き、活発に活動をしているコンスタンスらしい、香水における伝統的な「女性らしさ」という型を破っていて、それでも彼女の女性というアイデンティティは残っているという面白い作品でした。キャラクターはシャモアで、独立心と女性らしさを表現しているそう。純粋にこの香りが似合うような女性になりたいなと思わせる香水です。

HEARTLESS HELEN 残酷なヘレン
「自己愛が激しく、愛を含め、欲しいものは戦って勝ち取る魅惑的な女性。自信に満ちて、どこか謎めいたヘレンは、男性を夢中にさせる人物で、彼女自身もそれをよく知っている。」チュベローズの華やかな香りを主に、マンダリンやクリーミーウッドの香りが追いかけてくるまさに「魔性」の香り。華やかだけれど甘すぎず、ウッディノートで締まりのある香水で、個人的には一番好みの作品でした。「官能的でありながら純真無垢な少女のような一面を垣間見せ、優雅なラストノートに包まれる頃には恍惚として、彼女の虜になっていることでしょう。でも、気を許してはいけません。あなたを虜にする香り。それはまさに彼女がかけた恐ろしい魔法なのです。」という香水の説明文が、この香水を表現するにふさわしいというか、これ以外のことばが浮かばないほどこの香水を表しているな〜と思いました。本当のヘレンはどのような人物なのか、くるくると印象を変える楽しい作品です。

たくさん香水のムエットをいただいて説明を受けた中で、私が素敵だなあと思ったのが以上の作品です。男性向け、女性向けどちらもたくさんのキャラクターが存在して、それぞれに複雑な人間関係と物語が存在する複雑でいて面白いシリーズでした。それぞれの香水が、メインとなる香りとそれに対して意外性のある香りが調香されていて重厚な香りがする素敵な作品でしたので、皆様も是非体験してみてください…!