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解説 祈りを献げ慈善の業を為せ(第二説教集4章2部) #107

原題:An Homily of Good Works.  And first, of Fasting. (善き行い、特に断食についての説教)

第二説教集第4章第2部の解説をします。聖句でいうテーマとポイントは次のとおりとなるでしょう。

真実をもって祈りを献げ、正義をもって慈善の業をすることは、不正を行って金持ちになるよりも、よいことです。慈善の業をすることは、金を蓄えるよりもよいことです。(トビト書 第12章8節)

第2部のポイントは次の5点です。
①第1部の振り返りと第2部の目的
②人の世の法と神の法~良心のため
③沿岸地域の人々に目を向けること
④断食の時~花婿との結婚
⑤まとめと結びの祈り

第1部の内容について簡単に振り返られたあと、第2部の目的が述べられます。

この説教でこれからお話したいのは、人間によって作られたどの法令や法律も、本質的なものでないならば、キリスト教徒の良心をしてそれに倣わせるようにはできないということです。

人の世の法と一口にいってもいろいろあります。そのなかで、神が定めた王の法と神の法との関係についてはこう述べられます。

君主が定める現世の法律はその治世を保つためにあるもので、神の律法と矛盾するものではありません。キリスト教徒の臣民すべてがそれを恭しく守っているのは、刑罰への恐れのためだけではなく、かの使徒が言うところの「良心のため(ロマ13・5)」でもあります。

ここでいう良心については、このように述べられています。

すべての臣民がそういった法律を守っているのは、かの使徒が言うように、良心でつながれ、例外なく人々をこの世の高い権力に従わせようとする神による戒めがあるためです。

神が定めた王による法は神の法と矛盾しない。そして人々がその法を守るのは、刑罰を恐れるからではなく、良心のゆえである。この上に立ち、内陸部に住む多くの人々は沿岸部に住む人々に目を向けるべきであるということが説かれます。刑罰を恐れてではなく良心をもってそうするべきであるとされます。

海の近くにあって、そこで敵を撃退するべくよく整えられるはずの多くの町の荒廃ぶりを考えてみてください。(略)彼らも隣人であるというなら、なぜわたしたちは彼らの生活がよくなるようにと願わないのでしょうか。彼らは、ともすればわたしたちの美しい牧草地に攻め入ってくる外敵に対して最も近いところにあって、その脅威を海の向こうに押しとどめる盾になっています。なぜわたしたちは彼らを大切にしようとしないのでしょうか。

当時の人々はこれを聞いて、スペインの無敵艦隊との一戦を思ったことでしょう。沿岸部に住む人々を思うことは王が定めた法によるのではなく良心によるものです。

次に断食の時についての話になります。

断食にはどの時が相応しいのかについて簡潔にお話しましょう。どんな事をどんな時にしてもよいというわけではありません。(略)外面的な肉体での断食など、神の御前では断食とは言わないものではあるものの、それが心の悲しみや嘆きといった内面での断食を伴っていればその限りではないということです。

肉に関わるのみの外面的な断食に意味はなく、内面的な心の断食こそが大切である。では断食の時は具体的にいつかとなればそれは、イエス・キリストを花婿としての結婚生活とのかかわりから述べられます。

結婚生活が続いていて花婿がそこにいる間は断食の時ではないということです。結婚生活が終わって花婿が去ったのちこそが断食を行うべき時です。

神がその御慈悲をわたしたちに向け、御恵みをわたしたちの魂と肉体に与えてくださっている限り、わたしたちは結婚していて花婿と一緒にいると言えます。

そしてこのことの多くの例が旧約聖書から引用されます。ダビデやユディトなどさまざまな人物の例が挙げられ、彼らが「結婚」していたからこそ、御心に適った行いをすることができたのだと説かれます。また、心と肉の断食をすることによって神の御手から得るものがあった例として、アハブやニネベの人々が挙げられます。

まとめのところで、断食と良心のかかわりが説かれます。沿岸地域に住む人々を思うこともここに繋がります。

親愛なる者たちよ、わたしたちのこの時代にはかつてのあらゆる時代よりも断食をしてでも嘆き悲しむべき多くの事柄があります。内なる心においても外なる身体においても、聖なる預言者や使徒たちなどあまたの敬虔な人々がそれぞれに生きた時代で行ったと同じように、神の御心に適った断食を勤勉に行っていきましょう。(略)わたしたちは神の御前にあって邪悪な行いを遠ざけ、善き行いをして正義を行うことを求めるべきです。虐げられた人々を救い、父親のいない子どもたちに対して正しいことを行い、夫を亡くした女性たちを守り、飢えた人にはパンを分け与え、貧しい人や彷徨える人には住み処を与え、裸の人には服を着せるべきです。

このあとで結びの祈りが唱えられ、第2部は、つまり第4章は終わります。


今回は第二説教集第4章「善き行い、特に断食についての説教」の第2部「祈りを献げ慈善の業を為せ」の解説でした。次はこの試訳となりますが、一度でお届けするには長いので、次回と次々回にわけて投稿します。


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