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異世界ファンタジー作品:
<ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜>
連載中(約10万字(文庫本一冊相当)で完結予…
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2023年7月の記事一覧
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十六話
◆◆◆
――マイゼル様は、最近特に機嫌が悪い。
使用人から影でそう言われている事は、俺自身よく知っている。
が、仕方がないではないか。
最近俺の周りでは、腹立たしい使用人の不手際が頻発に頻発を重ねているのだ。
「おいメイド! どうしてインク壺にちゃんとインクが入っていない!」
「し、しかしインクはちゃんと――」
「俺はインクが半分以下に減っているのは嫌なんだ! 貴様は一体何年俺に仕え
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十三話
陽光が差し込む布屋『ネィライ』の店内で、店内の美化活動に勤しんでいた。
壁一面に並ぶこげ茶色の棚から一段分、商品を傷めないように注意しながら布束を引き抜く。空いた棚には雑巾を掛け、うっすらと積もっていた埃を拭きとって、布束の方にははたきを掛けて、再び棚へと戻す。その作業の繰り返しだ。
しかしそれが意外と大変。一束の布は意外と重く、出し入れするだけで重労働だ。
が、だからこそやりがいもある
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十四話
布屋『ネィライ』は、こういうのも何だけれども、それ程お客様が多いお店ではなかった。しかしここ数日は客足が多い。
「ありがとうございました」
笑顔でお客様を、また一人送り出す。
カランカランとドアベルがお客様の退出を知らせ、パタンとゆっくり扉が閉まった。音が消えて数秒後、誰も居なくなった室内でやっと私は「ふぅ」と息を吐く。
会計カウンターには、記入済みの財布カバーの注文票と幾らかのお金