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ロシア・アヴァンギャルドについて
ロシア革命というと、何となく血なまぐさいイメージが強い。新しい秩序を建設したという意味では大掛かりな意義ある革命であるのだろうが、この秩序下において権力を握った人々による国家管理の手法は、今日の我々からすると暴力的で陰惨な結果をもたらすもののように感じられる。少なくとも彼らには「敵」の存在がはっきりしているらしいのだが、こちらからすると向こうの一方的な被害者意識にしか見えない。自分の殻に閉じこも
もっとみる【エッセイ】失恋について
「国破れて山河在り」という春望の一節を、未だに失恋の比喩としてのみ受け取っているのが私という人間である。母国を失う悲しみを知らないということは有難いことであるのに間違いはないが、かといって勝手な比喩解釈をしたり顔で弁ずるというのもなかなか恥ずかしいことだ。振り返ってみると、私はとても恥ずかしい気持ちになる。いままでに足を運んだ喫茶店、バーを洗いざらい掃き清めない限り、私のけしからん声音がどこかに
もっとみるかっぷ・おぶ・こーひー
嫌な気分をどんな風に言い表せるかなんて、ペン回しが出来るか出来ないかくらいに、どうでも良いことらしい。それってイマイチ信じらんないな。なんて考えながらあたしは座ってたけど、それは不成がダメな将棋で成駒するような確実さであたしに迫って来つつある「事実」だった。
踏切近くの喫茶店。一番入り口寄りの席は外側に張り出している。来客を出迎えるライト
はロンドンの町中にある街頭のようななりをして、雪景色に
【散文詩】吾輩の腹の内
腹の中に一匹の鳥を飼っているというのが吾輩の自慢である。その鳥の名前を「鵬」と名付ける。「ネティ!ネティ!」と鳴く吾輩のこの鳥は、さながらソクラテスにとってのダイモーンだ。とにかく何らかの仕方で私をいたたまれなくして、合図を送る。この鳥が鳴き始めた最初の頃、この内なる声は吾輩によって発せられるものとばかり思っていたのだが、その声と私の認識との間に時間の差が有るということに気が付いた。つまり、鵬は
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