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【創作童話】ストライプの雨#2

【第2章】ブラック・スワン

気がつくと
そこは真っ黒に灯りが色々の
宇宙でした。

僕はせっかく色を得たのに
宇宙と同じ色だったのです。

また僕は
色を失くしてしまったような気分でした。
それでも何故か悲しくないのです。

どこまでも飛んだからでしょう。
もう地上には戻れないのでした。

星座たちは
灯りで自分を着飾って、
くらくらしています。

「ストライプの雨みたいだ。
線を描いて、模様になってる。」

僕が独り言を言っていると
僕みたいな色の星が、
近寄って来たのです。

「お前は何座なんだい?
あたしは魔法使い座さ。」

僕は鳥ですから、否定をしたのです。

「星座じゃありません。
僕、レトワール・フィラントウです。」

すると、老婆のような魔法使い座は、

「なんだ、それじゃあ
記憶があるんだね。可哀想に。」

「記憶?」

星座になると、
記憶が無くなると言うのです。
哀しみも喜びも
忘れてしまうと言うのです。

魔法使い座は、哀しそうに
ロザリオの玉をひとつ
数えました。

「何をしているの?」

「哀しいことを、数えたのさ。」

「哀しいこと?」

「もうずっと、数えてるのさ。
桁は天文学でも
もう数えられないくらいにね。」

「どうして?」
「あたしは、哀しいことしか
数えられないのさ。」

僕は思い出しました。
僕の哀しいこと。

お嬢さんを見失ってしまったこと!

「どんな風貌なんだい?
青くて美しい羽根?薔薇色の唇?」
「でもね、どこにいるか
分からないし、
地上を探すにはまだしも、
宇宙にはきっといないと思うんだ。」

「馬鹿な子だね!
あたしは魔法使い!
占いも出来るのさ!!」

そう言って、魔法使い座は
水晶を出すと
うーんうーんと唸り出すのです。

「出た!その子の名は
マリヴロン!!
ちょうど宇宙にいるようだ!」

僕は、この前よりももっと
胸がはかはかするのを感じました。

「場所は?」
「そこまで分かったら苦労はしないよ。
限界がある。」

僕らは、南十字星に行きました。
それは近かったのです。

ケンタウロス座は馬の脚で
乱暴に南十字星を
蹴り上げて走り去ります。

南十字星は嫌な顔をして
汚れた左頬を拭いました。

泥は、僕らにも掛かりました。
短気な魔法使い座は杖を振りました。
ケンタウロス座を動けなくしたのです。

「何をする!早く魔法を解かぬか!」
「その前に、何か言うことが
あるんじゃないのかい?」

「ふん、お前に言う事なんか
あるものか。」

「痛い目に遭いたいようだ。えい!」

「わあ!身体中が痺れる!
やめろ!やめてくれ!」

「嫌なら、謝りなさい。」
「ちくしょう、汚い手を使いやがって!
分かった、謝るから!」

ケンタウロス座は、泣き出しました。

「俺は、もうずっと一人ぼっちさ。
誰も相手にしない。
久しぶりなことだよ。」

ケンタウロス座は、
友人のヘラクレスに仲間を殺された後
仲間を埋葬している時
毒矢を落として死んでしまったのです。

ゼウスが哀れに思い、
星にして下すったのです。

「俺の悲しみは誰にも分からない。

彗星に祈ってこんなことを
思い出さなくても良かったのに、
あの時は思い出したくて
仕方なかったのさ。」

「星座は想い出を置いて星になる。

気になるのは当たり前さ。
あたしだって思い出したくて
仕方ないのだから。」

「ねえ、ちょっと聞いてもいい?
“彗星に祈って“
って今言ったけど、
彗星に祈ると願い事が叶うの?」

二人はクスッと笑って
「そんな事も知らないのかい。」

僕はちょっと不機嫌になりました。

「ははは。
むくれた坊やが一人。」
魔法使い座はロザリオの玉を
ひとつ数えました。

「やめてよ、すぐ数えたがる。
僕はもう行くよ。
良いことも聞いたし。」

僕は彗星の場所とやらに向かいました。

「ははは、また会えるといいね。」
後ろで二人の声が聞こえました。


【予告】
魔法使い座が死んでしまった⁈
一体魔法使い座に何が…
急展開の第3章!

次回【ストライプの雨#3】
〜哀しきロザリオ〜
お楽しみに!

来週水曜日をお楽しみに!
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六花💌

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