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【本の紹介】『日本近現代史講義』山内昌之/細谷雄一(編)

本の紹介第1弾。今回は山内昌之/細谷雄一(編)(2019)『日本近現代史講義:成功と失敗の歴史に学ぶ』中公新書を紹介したいと思います。本書はタイトルに『講義』と入っているように、入門書にあたります。これから日本近現代史に関する卒業論文を執筆する予定の学生、日本近現代史を本気で学びなおしたい人が最初に読む本として、比較的進めやすい本であるというのが私の率直な感想です。

本書の特徴①:各章のつながりを意識しないで読むことができる

 同書は序章を除いて全13章で構成されています。一見長いように見えますが、各章はある程度独立しているので、好きなところを読むだけでも十分です。時間がどうしても確保できない人は興味がある章とその前後1章を読むだけで十分学ぶことができると思います(注1)。

(注1)例えば、第5章に興味があったら、第4章と第6章にも目を通します。前後の連関を意識するだけでも、新たな学びがあると思います。

本書の特徴②:日本史の研究者以外が執筆している章が存在する

 今回紹介する書籍のタイトルは『日本近現代史講義』です。タイトルから考えると、日本史の研究者を中心に執筆していると考えるかもしれません。しかし、同書は違います。同書は日本史の先生だけではなく、岡本隆司先生や川島真先生のような中国近代史の先生や朝鮮半島の歴史を専門とする木村幹先生が執筆しています(注2)。このように、本書は日本近現代史を様々な立場から考察することを試みています。個人的には、中国近現代史や朝鮮半島の歴史に興味がある人にもオススメです。

(注2)上記の先生をどの研究領域に位置づけるのかは非常に難しいですが、以上のように位置づけることにします。幅広く言うならアジア史でしょうか。雑な分類はご容赦ください。

本書の特徴③:各章のおわりに「さらに詳しく知るために」という文献が紹介されている

 各章の終わりごとに、文献を3〜5冊程度紹介しています。本書の内容は日本近現代史研究の最前線を整理しているので、初学者からするとやや難しいです。私もすべてを理解しているとは言い切れません。しかし、紹介された文献を読み、改めて同書を読み直したとき、初めて日本近現代史の最前線、そして日本近現代史の面白さを体験することができると思います。

 ちなみに、ハードカバーの専門書も「さらに詳しく知るために」で紹介されています。時間がない人は、「さらに詳しく知るために」で紹介されている新書や選書、その人の著作を調べて、値段安いものから読むといいと思います。

おわりに

 今回紹介した本を一読して理解することは、容易ではありません。しかし、文献紹介の本を読み、再び『日本近現代史講義』を読みなおすことで、日本近現代史をこれまでとは違った視角から眺めることができると確信しています。

 2018年は明治維新から150年が経過した記念的な年でした。それを記念して、これまでの研究を整理する論考が数多く出版されました。私は日本近現代史を学びなおすなら今がチャンスじゃないかと思っています。興味がある人はぜひ。

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↓:本のホームページ

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