19. 「できる」に甘える。

なんとなくこなせる、ということはとても恐ろしい。
そこに向上心がなくとも時間は過ぎていき、所定の「仕事」は終わっていく。

指先をこぼれ落ちていく砂のように、日々が過ぎ去る。
こなせる上に周りが優しいと、それでもいいかなと思う瞬間が出てくる。
社会人になってから始めたバンドや、弾き語りの活動も隙間で行えていた。
給料も同じ業界のなかでは良い方だった。
こなせているので社内の評価は上がることもなければ落ちることもない。

それでまた甘える。

ふと立ち止まると、見過ごしてきたはずの不満が蓄積している。本当は納得なんてしていなくて、私はこれからどこにいくのか、どうしたいのか不安でたまらない。

それを繰り返したのが、異動になってから会社を辞めるまでの4年弱だったと思う。

イベント業界で仕事をする
が、本当に私の夢だったとしたら、ここも立派にイベント業界の一端を担っているはずだった。

だけどチケットの営業というのはどちらかというと流通としての側面が強い。チケットを売りたい人がいて、その方々からチケットを預かってシステムに乗せ、販売する。販促の相談に乗る。

夢のイベント業界にいるはずなのに、私はだんだん「ここにいる私は仮の姿」と思うようになっていた。本当は興味のないことに、親身になって答える。自分が起こしたわけではないシステム上のトラブルを謝る。「仕事なんだから当たり前だろ」と言われそうなことが、ひとつひとつ小さなストレスになって蓄積されていった。

バンドや弾き語りは、自分が主体になっているのだから楽しい。こっちが本当の私だ、と思いたかった。

正社員として仕事をしていることは、音楽関係の仲間には隠した。安定した生活のために日常の大半を仕事に捧げながら自分の音楽活動をしているのは、なんだか嘘をついているようで負い目があった。

気持ちの上での優先順位はいつも自分の音楽。だけど実際は会社で問題が起きれば自分のライブだって中止せざるを得ない。

自分で築き上げてきた壁はどんどん高くなっていった。

毎年年末になると、「このままじゃいけない。この会社をやめよう」と思う時がくる。だけど、結局実行に移せなかった。

日々の生活が回っていると、それを捨てるのはなかなか難しい。
やりたいことが見つかってからやめよう。
奨学金を返し終わってからやめよう。

やめたい気持ちと、やめられないいくつもの理由が常に頭の中に混在していた。そして今はそのときじゃないのだ、と結論付けた。

その結論が正しかったのかどうか、それは今も分からない。だが、このような甘えが、私の会社員生活を終わらせる決定的な事件を引き起こすことになる。

#日記 #生き方 #起業 #ライター #モデル #フリーランス #焼き菓子 #イベンター #退職まで #パティシエ #振り返り #フードライター #フードアナリスト #仕事観 #大学時代 #アルバイト #ライブハウス #音楽業界 #イベント業界 #就活 #秋採用 #音楽事務所 #イベンター #プロモーター

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?