16. 人生始まったな。

会社員としての日々は華々しく始まった。

私が就職したのは、チケット販売管理(プレイガイドといった方がわかりやすい?)が中心の会社だった。

大まかにいうと主催者から席を預かり、そのチケットを自社システムで販売する仕事。販売手数料を主催者からいただく手数料が売上の中心になる。

営業は主催者や事務所に「うちで売らせてください!」と提案し、販売スケジュールを作成して、無事チケットが売れるように管理する。
その営業アシスタント的な役割がデスクと呼ばれ、営業が作ったスケジュールや販売方法に基づいてシステムに入力していく仕事だった。

同期のほとんどは、この「デスク」に配属された。他はカスタマーセンターもあった。

そんな中で私が配属されたのは、新規事業開発だった。これが素晴らしくよかった。

チケットの販売管理とは真逆の、イベントを作る仕事が中心。まさに私が恋い焦がれ続けてきたイベンターの仕事であった。

以前書いたように、アルバイト経験から私ができる仕事の条件は下記である。

①制服がない
②きっちりしたマニュアルがない
③元気を要求されない
④音楽がある
⑤お酒がある(夜に人が集まるところ)
⑥自分が一番年下

①は、クラシックや演劇など公演によってはスーツを着用することもあったが、基本的には自由。フェスに真っ黒な服で行って社長に「お前は夏でも爽やかさがない!」と言われたことはあったが、それ以上強制されることはなかった。

②も、新規事業開発には何もなかった。公演が成功すれば万事問題なし。
デスクやカスタマーセンターではシステムのことや顧客対応できっちりしたマニュアルがあり、新人はひたすら研修を受けるが、私にはなかった。見かねたほかの部署の先輩が特別に社内の基本的なシステムを教えてくれる時間をとってくれた。

③はもちろん、新人としてそれなりに要求されるおとはあったが、社内の縦関係より社外との取引が多かったのであまり気にならなかった。
社外の人はイベントに共同出資をしている仲間という認識で付き合ってくれていたので、程よい距離感があり、若いからと言って何か言ってくる人もいなかった。
反対にデスクやカスタマーセンターは社内の人とのやりとりが多くなるので、先輩との人間関係に悩む子もいた。

④間違いなく、人生で一番エンターテイメントに触れていたのはこの頃だろうと思うくらい、毎日のようにライブ、芝居、コンサートの日々だった。自分の担当公演、先輩の担当公演、勉強のために観に行く公演。クラシック、ジャズ、演劇、サーカスなど、それまでに観たことのなかったジャンルの公演もたくさん観た。

⑤ 週5日なんらかのライブに行くなんてこともザラだったので、毎日が楽しかった。上司と飲んで、先輩と飲んで、取引先と飲んで。毎日新しい人に出会い、新しい話が聞けるので苦になることもなかった。

⑥新卒採用なので一番年下なのは当たり前。
新規事業開発は、引き抜かれてほかのイベンターや事務所からきた先輩ばかりで、また少数精鋭だったので後輩を育てるという雰囲気ではなかった。それぞれがそれぞれの仕事をやる、という感じ。
側から見れば新人に対する扱いとしては過酷に映ったかもしれないが、私はとても居心地が良かった。同じ時に同じ部署に中途入社してきた先輩がとても素敵な人だったことも大きい。

毎日が夢のような瞬間、緊張の連続で、これが仕事か!私はこれで生きてるのか!と思うとこんなに素晴らしいことはなかった。

初めて給料をもらった日、「人生始まったな」と思った。両親に博多でやっていた「ライオンキング」のチケットをプレゼントした。

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